ハインリヒ・シェンカーの音楽思想 楽曲分析を超えて
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7985-0236-6 C3073
奥付の初版発行年月:2018年06月 / 発売日:2018年06月上旬
音楽作品の解釈とは何か? その名を冠してシェンカー分析とも呼ばれる楽曲分析法を生み出 した、ハインリヒ・シェンカー(1868-1935)。 彼が挑んだ難問に関する本邦 初の本格的な研究書。西洋の音楽理論や音楽美学、音楽史といった分野に とどまらず、解釈学や文学理論までをも参照し、21世紀の新たなシェンカー 像を浮き彫りにする。 音楽愛好家のみならず、演奏家、そして、分野を超えて 幅広い研究者層に読まれるべき必読書。
音楽作品の解釈とは何か?
フルトヴェングラーの師にして世界で高く評価される
楽曲分析法の創始者シェンカーが挑んだ難問。
西田 紘子(ニシダ ヒロコ)
九州大学大学院芸術工学研究院助教。ロータリー財団奨学金を得て2005年より2年間、ヴィーン音楽演劇大学博士課程で音楽理論・分析を学ぶ。2009年、東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程(音楽学専攻)修了。博士(音楽学、東京藝術大学)。欧米の音楽理論や音楽美学を専門領域としつつ、演奏現場の分析や日本のオーケストラ研究も進めている。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
凡 例
序 1920年代を中心とするシェンカーの作品解釈
第1節 導入 シェンカーとシェンカー理論・分析
第2節 本書の目的
第3節 『音の意志』『音楽における傑作』の構成と内容
第4節 シェンカー受容史・研究史における三つの潮流
第5節 本書の立場 分析から解釈へ
第6節 各章の概要
第1章 シェンカーの「音楽内的」解釈学
クレッチュマーとディルタイの解釈学との比較から
第1節 議論の射程
1.精神科学と自然科学/解釈学と実証主義/音楽解釈学と音楽分析
2.科学哲学における構造転換
3.音楽学の場合 分析から解釈、解釈学へ
4.シェンカーによるクレッチュマー批判の概観
第2節 シェンカーの「音楽内的」解釈学
1.「真の解釈学」 クレッチュマー批判
2.内容としての音の生
3.音と人間の並行性
第3節 クレッチュマーの「人間内的」解釈学
1.「音楽解釈学」と「アフェクト」
2.クレッチュマーによる他の解釈法の批判
3.批判史における対立構図の再考 「内的」「外的」の語の意味
4.内・外、精神的生
第4節 一般解釈学と音楽解釈学
1.クレッチュマー、ディルタイ、シェンカー
2.ディルタイの一般解釈学とクレッチュマー
3.ディルタイの音楽解釈学とシェンカー
4.二つの解釈学 内的・外的範疇の相違
第5節 後奏 残された論点
1.作曲家、作品、聴き手
2.演奏論へ
第2章 シェンカーの言語連想ナラティヴとウアリーニエ・ナラティヴ
第1節 物語り論とシェンカーの作品解釈
1.歴史の物語り論と文学作品の物語り論
2.音楽学分野における物語り理論
3.目的と方法 実践と理論
第2節 言語連想ナラティヴ
1.声楽曲とキャラクター・ピースの解釈
2.言語連想ナラティヴ シューベルトの《彼女の肖像》
第3節 二重のナラティヴ
1.新たな規定性 メンデルスゾーンのキャラクター・ピース
2.言語連想ナラティヴからウアリーニエ・ナラティヴへ
第4節 ウアリーニエ・ナラティヴ
1.ウアリーニエ・ナラティヴにおける空間性・時間性とその理論化
2.非言語的物語りにおける空間性・時間性 出来事の合理的視覚化
3.言語的物語りにおける空間性・時間性 作品の生成的物語り
4.ナラティヴにおける空間の理論化
5.ナラティヴにおける時間の理論化
第5節 後 奏
1.生の法則 物語りと法則
2.実践における解釈の幅
3.解釈の直接性
第3章 ハルムとシェンカーの旋律線概念とその分析実践 書簡をとおした比較考察
第1節 ハルムとシェンカー
1.目的と対象
2.先行研究と本章の立場
第2節 旋律線概念における還元的思考
1.旋律の根源的なものとしての音階
2.法則への還元
第3節 線的分析の目的
1.主題法としてのハルムの線的分析
2.シェンカーの線的分析 リーニエからウアリーニエへ
3.部分の変奏と全体の変奏
第4節 後奏 統一性の内容
結語 シェンカーをめぐる新たな関係図
参考文献
シェンカーの出版物
シェンカーの日記、書簡集、論文集
ハルムとシェンカーの書簡の所蔵・閲覧先
欧語文献
邦訳文献
邦語文献
あとがき
索 引