帝国陸海軍の戦後史 その解体・再編と旧軍エリート
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-7985-0292-2 C3021
奥付の初版発行年月:2020年09月 / 発売日:2020年09月上旬
近代日本のなかで主要な政治勢力の一翼を担った帝国陸海軍は、太平洋戦争の敗戦とともに「解体」を余儀なくされ、政治・社会の表舞台から姿を消した。しかし、このことは旧軍の政治的・社会的な一掃を意味せず、対日占領を挟む戦後史のなかで、一部の組織や制度は「再編」されて存続した。こうした過程を〈帝国陸海軍の戦後史〉としてとらえた場合、旧軍エリート(概ね終戦時に佐官級以上であった職業軍人)の政治的な言動は、どのように位置付けることができるのであろうか。
本書では、かかる問いに対して、三つの視点――①GHQの対日占領を下支えした復員組織職員の動向と役割の解明(第一章・第二章)、②「経済的非武装化」としての軍人恩給廃止の衝撃とその反動(第三章・第四章)、③対日再軍備過程における旧軍エリートの認識・活動とその影響(第五章)――から考察を進めていく。復員・恩給・再軍備をめぐる旧軍エリートの動向を通じて、アクターとしての特質や、彼らの行動を支えた構造的な背景や要因、さらには政策への影響等も含めて、その実態を広く解明する。こうした試みは、占領史・戦後史研究で等閑視されてきた、旧軍エリートの「政治性」を浮き彫りにする契機となろう。
旧軍エリート vs 日本政府・GHQの
復員、恩給そして再軍後を巡る闘争。
1945年8月15日の敗戦以後も、帝国陸海軍の
上層部はその勢力や影響力の維持を占領下の
政治情勢のなかで巧みに図っていく。
豊富な一次史料と最新の研究成果を用いて、
占領史・戦後史研究に新地平を拓く。
山縣 大樹(ヤマガタ タイジュ)
1988年、福岡市生まれ。2019年3月、九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程修了。福岡共同公文書館総務企画班相談員、九州大学大学院比較社会文化研究院特別研究者などを経て、現在、独立行政法人国立公文書館非常勤職員(統括公文書専門官付公文書専門員)。博士(比較社会文化、九州大学)。
専門分野:戦後日本政治史
主要業績
「所蔵資料のシリーズ化による公文書館利用業務の改善―福岡共同公文書館所蔵『援護関係資料』を事例として―」(独立行政法人国立公文書館編集・発行『令和元年度アーカイブズ研修Ⅲ修了研究論文集』2020年)
「戦後海上自衛力再建と旧日本海軍グループ―『空海軍』構想をめぐる政治的動向とその特質―」(『軍事史学』第54巻第2号、2018年9月)
目次
凡 例
序 章 課題と視角
一 問題の所在 5
二 占領史・戦後史研究のなかの帝国陸海軍
三 本書の課題と視角
(1) 再軍備 (2) 復員 (3) 恩給
四 本書の構成
第一章 敗戦と武装解除
はじめに
一 終戦と帝国陸海軍
二 旧陸軍と内地復員
三 旧海軍の艦艇処分
四 復員業務をめぐる復員組織職員の本分
おわりに
第二章 復員組織職員の職務と役割
――第二復員省における公職留任の実態――
はじめに
一 二復職員の基本的性格
二 二復職員の公職留任をめぐるGHQ等の認識
三 占領期における公職留任の深層
四 一九五〇年代以降における二復幹部の役割変化
おわりに
第三章 軍人恩給の復活過程
――「経済的非武装化」をめぐる衝撃と諸相――
はじめに
一 敗戦後の軍人恩給停止
二 対日占領下における軍事援護の周辺
三 「画期」としての軍人恩給復活
おわりに
第四章 「反動」と旧軍人特権回復
――軍人恩給在職年数加算制度復活を事例として――
はじめに
一 加算制の廃止と先送りの論理
二 軍恩全連の組織的性格と運動方法
三 加算制復活をめぐる軍恩全連の活動方針
四 自民党との連携と加算制の一部復活
おわりに
第五章 旧日本海軍グループの「空海軍」再建とその遺産
はじめに
一 旧日本海軍グループの活動前史
二 本格的再軍備計画の始動
三 二復案にみる海上自衛力組織の特徴
四 「空海軍」構想の激化とその帰結
おわりに
終 章 帝国陸海軍の解体・再編と旧軍エリート
一 アクターとしての特徴と役割
(1) 復員組織職員 (2) 軍恩全連 (3) 旧日本海軍グループ
二 動向分析にみる特質とその位置付け
(1) 復員業務 (2) 軍人恩給と在職年数加算制度の復活 (3) 海上自衛力の再建
あとがき
註
参考文献一覧
索引