形と形が出合うとき 現代韓国語の形態音韻論的研究
価格:7,920円 (消費税:720円)
ISBN978-4-7985-0315-8 C3087
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月上旬
本書は、韓国語の形態音韻論的現象を研究の俎上に載せ、その態様を描出せんとするものである。音素、音節、形態素、単語――形と形――がおのおの接合すると、いかなる現象が生起し、その背後にはいかなる原理が伏流しているのか。これまで存在自体は知られていても、十分には考検されてこなかった現象群を具に剖析することによって、韓国語の興味深い様々な言語事実を精緻に焙り出すことが本書の目的である。
何故に形態音韻論を韓国語において問うのか――その解は分明である。日本列島周辺の言語を見渡してみても、現代韓国語は形態音韻論的な変容が相対的に極めて激しい言語だからである。韓国語の面白さの真髄は形態音韻論に在るとさえ言える。しかしながら、これまで日本語で読める韓国語形態音韻論の本格的研究書はなかった。新進気鋭の言語学者が、アクセント、〈n挿入〉、濃音化などといった現象を、豊富なデータを基に切開し、韓国語の妙味に鋭く迫る。
辻?野 裕紀(ツジノ ユウキ)
愛知県名古屋市生まれ。九州大学大学院言語文化研究院准教授。
専門は言語学、韓国語学。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
主要論文:
「韓国語大邱方言における名詞のアクセント体系」
「言語形式の自立性と音韻現象:現代朝鮮語の〈n 挿入〉を対象として」
「言語教育に伏流する原理論的問題:功利性を超えて」
「現代朝鮮語の形態音韻論的現象に見られる共時的変異について」
目次
はじめに
第Ⅰ部 アクセント論:大邱方言を対象に
第1章 大邱方言のアクセント体系
1.1 はじめに
1.2 先行研究の概観
1.3 先行研究の検討
1.4 単純名詞のアクセント
1.5 複合名詞のアクセント
1.6 まとめ
第2章 大邱方言のアクセント型の生起頻度
2.1 はじめに
2.2 単純名詞のアクセント型の生起頻度
2.3 複合名詞のアクセント型の生起頻度
2.4 まとめ
第3章 大邱方言のアクセントと分節音の相関関係
3.1 はじめに
3.2 先行研究
3.3 固有語名詞のアクセントと分節音の関係
3.4 漢字語名詞のアクセントと分節音の関係
3.5 外来語名詞のアクセントと分節音の関係
3.6 まとめ
第4章 世代差について
第5章 まとめ
第Ⅱ部 〈n 挿入〉攷
第1章 〈n 挿入〉とは何か
1.1 はじめに
1.2 〈n 挿入〉の表記法をめぐって
第2章 先行研究の概観と考察
2.1 〈n 挿入〉は本当に「挿入」か
2.2 〈n 挿入〉は共時的に生産的な現象か
2.3 〈n 挿入〉はいかなる条件で起きるか:形態論的条件と語種論的条件
2.4 〈n 挿入〉はなぜ起きるか:〈n 挿入〉の契機論
2.5 〈n 挿入〉はいかにして生じるようになったか:〈n 挿入〉の発生論
2.6 〈n 挿入〉の実現実態はどのようになっているか:実態調査と社会言語学的考察
2.7 〈n 挿入〉と사이시옷の関係
第3章 〈n 挿入〉が起きる形態論的条件
3.1 形態素の「自立性」とは何か:自立度の階層性
3.2 補助詞요の自立性をめぐって
3.3 漢字語接尾辞の自立性をめぐって
3.4 まとめ
第4章 〈n挿入〉はなぜ起きるか:発生論と機能論
4.1 〈n挿入〉の発生論
4.2 〈n挿入〉の機能論
4.3 まとめ
第5章 〈n挿入〉の実態調査:若年層ソウル方言話者を対象に
5.1 固有語
5.2 漢字語
5.3 外来語
5.4 混種語
5.5 いわゆる「語+レベルの複合語」
5.6 句
5.7 まとめ
第6章 まとめ
第Ⅲ部 〈流音後濃音化〉小論
第1章 〈流音後濃音化〉とは何か
1.1 はじめに
1.2 流音後濃音化とは
第2章 先行研究と研究方法
2.1 先行研究瞥見
2.2 研究方法
第3章 分析と考察
3.1 〈1音節+2音節以上〉の漢字語合成語
3.2 〈2音節以上+1音節〉の漢字語合成語
3.3 漢字語人名(姓+名)
3.4 人名+전【展】
3.5 人名+저【著】
第4章 まとめ
第Ⅳ部 混成語形成の形態論
第1章 〈混成語形成〉とは何か
1.1 はじめに
1.2 混成語形成とは
1.3 対象とする混成語
第2章 先行研究
第3章 分析と考察
3.1 言語資料
3.2 分析結果
3.3 日本語の混成語との対照
第4章 まとめ
おわりに
初出論文一覧
参考文献
索引