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ソロー、ミューア、スナイダー野生の文法(グラマー)

野生の文法(グラマー) ソロー、ミューア、スナイダー

A5判 232ページ 上製
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-7985-0318-9 C3098
奥付の初版発行年月:2021年10月 / 発売日:2021年10月上旬

内容紹介

「野生のなかにこそ世界を保存する力がある」

ソローの野生論「ウォーキング」のもっとも知られた一節である。ソローの野生論は、野生という概念を中心として文化の活力と健全性、そして人間の全き成長について論じたものであった。従来、自然詩人、シンプルライフの実践家とみなされたソローを「野生」という鍵概念に注目して読み直し、さらに環境活動家ジョン・ミューア、現代詩人ゲーリー・スナイダーに与えた影響を考察する。

「わたくしが関心を抱くのは、思想(グラマー)としての「野生」の問題であり、その系譜学である。別の言い方をすれば、ソローは「野生」という概念のなかになにを見出し、どのような意味を読みこもうとしたのか。その思想の発端は何であったのか。またそれを生きた哲学としてどのように統合しようとしたのか。本書が追求するのは、そうした問いへの回答である」(本書「はしがき」より)

前書きなど

なぜ現代に野生が必要なのか
『森の生活』の隠遁者ヘンリー・ソローが追究した
「野生」の思想とは何か。アメリカ文学における野生の
想像力の水脈をたどり、環境活動家ジョン・ミューア、
現代詩人ゲーリー・スナイダーに与えた影響を考察する。

『森の生活』の隠遁者ソローが唱えた野生論とは何か。
アメリカ文学における野生の想像力の水脈をたどり、
活動家ミューア、詩人スナイダーへの影響を考察。

著者プロフィール

高橋 勤(タカハシ ツトム)

ペンシルヴァニア州立大学大学院博士課程修了(PhD)。
九州大学大学院言語文化研究院教授。
主要著書
『コンコード・エレミヤ ソローの時代のレトリック』(単著、金星堂、2012年)
『環大西洋の想像力』(共編著、彩流社、2013年)
『身体と情動 アフェクトで読むアメリカン・ルネサンス』(共編著、彩流社、2016年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はしがき
 凡例

第一章 野生の系譜学

 一 「ウォーキング」の成立過程
  言葉の再定義/思想の形成
 二 思想の水脈
  「プロト・ウォーキング」/ニューヨーク体験/ハーヴァード・エッセイ
 三 影響の不安
  エマソンの亜流/身体という「果実」
 四 野生論の意義
  病の思想/リメディアルな作用

第二章 野生児の帝国 ──「ウォーキング」再読

 一 オオカミ少年少女
  野生の寓話/文化のピラミッド/三つの側面
 二 アメリカ文化論
  詩人のペルソナ/「明白な天命」/ミシシッピのパノラマ
 三 黄褐色の文法
  反知性主義/実践思想
 四 文学における野生
  自然を表現する文学

第三章 背後の自然 ──『ウォールデン』

 一 ウォールデンの森に木はあるのか
  オルコットの絵/風景の記述
 二 <背後の自然>とはなにか
  野生論への傾斜/フロンティアの意味合い
 三 『ウォールデン』における野生願望
  野生化する家具
 四 セルフ・カルチャーの再定義
  根をもつということ/アンタイオスの寓話
 五 文化のプロセス
  文字から音へ/ふたつの方向性

第四章 詩人としての先住民 ──『コンコード川とメリマック川の一週間』

 一 野外の文学
  「青天井」的性質/庭のイメージ
 二 「野生」の同義語
  思想化のプロセス/ワイルドの同義語
 三 先住民をめぐる想像力
  ビラリカ幻想/「アメリカのマンチェスター」/インディアン捕囚記/頭皮狩りの詩学
 四 古典文学論
  文学における先住民性/「ホメロス、オシアン、チョーサー」

第五章 神話の森へ ──『メインの森』

 一 作品の亀裂
  野生のフィクション/「クタードン」の孤立性
 二 モック・ヒロイックな体験談
  失望と幻滅/叙事詩的想像力/ローウェルの検閲
 三 野生の言語
  ペノブスコットの語彙リスト/先住民のヴァナキュラー/詩人の言葉
 四 先住民の森へ
  はじめての燐光/神話的な心性

第六章 牧神の死

 一 森の神
  「ソローのフルート」/「森の住人」
 二 エマソンの弔辞
  「コケモモ摘みの隊長」/不仲説
 三 書き換えられた日記
  エマソンの編集癖/カエルと人間
 四 文化の「土臭さ」
  「目の独裁」/文体の特質

第七章 ウィルダネスという聖地──ジョン・ミューア

 一 カリフォルニアのエマソン
  出会いと別れ/エマソンの手紙
 二 ソローの影響
  コンコード詣/ふたりの女性/自伝の構成/自然観察
 三 自然保護という思想
  「野生の殉教者」/思想の接近/レクレーションの論理
 四 告発のレトリック
  レッドウッドの原生林/破壊の言説

第八章 熊と結婚した女──ゲーリー・スナイダー

 一 異種混交の寓話
  物語のあらすじ/神話の類似性
 二 スナイダーの解釈
  深層エコロジー/「思考の吝嗇」
 三 「ウォーキング」から『野生の実践』へ
  ソローの影響/異種なる母性/夢をさまようボブキャット
 四 自然と暮らしの文法
  イヌピアク復興運動/自然の本/「言語のエコロジー」

最終章 野生の文化論 ──「インディアン・ノートブックス」

 一 名前の由来
  「おきなぐさ」/「具体の科学」/神話の意味
 二 「インディアン・ノートブックス」
  フレックの編集/北米の神話/「人類学者ソロー」
 三 象徴としての言語
  自然を表現する文学
 四 栽培文化のリスク
  文化の多様性/トーテミズムの意味合い

 主要参考文献
 あとがき
 索引


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