中央大学人文科学研究所研究叢書68
英国ミドルブラウ文化研究の挑戦
価格:5,610円 (消費税:510円)
ISBN978-4-8057-5352-1 C3398
奥付の初版発行年月:2018年03月 / 発売日:2018年03月下旬
大衆教養主義が投げかける、〈教養とは何か?〉〈イギリスらしさとは何か?〉との問いを、伝統的な正統文化の境界領域に位置づけられるミドルブラウの文学、建築、絵画、タブロイド紙、映画等の分析からあぶり出す。ジェイン・オースティンから、D. H. ロレンス、ジョージ・オーウェル、イアン・フレミング、『私の中のあなた』等まで、幅広い時代、階級、空間・地域を扱い、大衆的保守主義をクリティカルに再考する一冊。イギリスを専門とする歴史研究者と文学研究者の共同研究の成果。
目次
<主要目次>
第一部 階級横断性と居住空間
『息子と恋人』の中のミドルブラウ ―階級横断的大衆教養主義の構造─ 武藤 浩史
ミドルブラウ文化と郊外と植民地 ―ジョージ・オーウェルの初期小説─ 近藤 直樹
ポピュラー・アイコンか、偉大な芸術か ―L・S・ラウリーの工業風景画にみるミドルブラウ性─ 福西 由実子
第二部 歴史とイングリッシュネス
旅するミドルブラウ ―H・V・モートンとイングランドの再発見─ 見市 雅俊
ジェイン・オースティンのミドルブラウ性 ―へイヤーの『アラベラ』における保守とモダニティの間─ 小川 公代
エリザベス・ボウエンの『日ざかり』と〈中間〉の力学 長島 佐恵子
ピクチャレスクな都会のイングランド ―ニコラウス・ペヴスナーと第二次大戦後のミドルブラウ・タウンスケープ─ 木下 誠
第三部 女性作家とミドルブラウ
ジャズはミドルブラウ音楽か? ―『幕間』におけるアメリカ文化の受容とイングリッシュネス─ 加藤 めぐみ
「一つの世界の市民」としての映画観客 ―『クロースアップ』誌と映画『サウス・ライディング』にみられるブラウの戦い─ 松本 朗
あるミドルブラウ作家の挑戦 ―新たな秘密の花園を求めて─ 前 協子
第四部 読者と受容
戦間期における新たなミドルブラウ読者層の創成 ―ふたつの『デイリー・メイル』の連載小説を手掛かりに─ 渡辺 愛子
ジェイムズ・ボンドはミドルブラウ文化の夢を見るか? ―イアン・フレミング『カジノ・ロワイヤル』と批評の課題の棚卸し─ 秦 邦生
「ミドルブラウ」ではなく「リアル」 ―現代英国における文学生産と受容に関する一考察─ 井川 ちとせ