プリミエ・コレクション72
祈雨・宝珠・龍 中世真言密教の深層
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-8140-0019-7 C3315
奥付の初版発行年月:2016年03月 / 発売日:2016年04月上旬
中世真言密教において重要な意味をもつ舎利・宝珠信仰の本質とは何か。祈雨法(雨乞いの修法)・請雨経法の歴史と信仰をひもとく中から浮かび上がる、龍神信仰との結びつきを詳らかにし、『御遺告』宝珠譚から不動・愛染・如意輪の三尊宝珠信仰にいたる、中世真言密教の展開過程にある最大の謎を理解する鍵を提供する。中世宗教史に新たな展望を拓く力作。
スティーブン・トレンソン(トレンソン,スティーブン)
広島大学大学院総合科学研究科准教授
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(人間・環境学)
主な著作
“A Study on the Combination of the Deities Fudō and Aizen in Medieval Shingon Esoteric Buddhism”, Dynamics in the History of Religions (Brill Series), Forthcoming 2016;“Cutting Serpents: Esoteric Buddhist Dimensions of the Classical Martial Art of Drawing the Sword", Analecta Nipponica, 4, 2014; "Shingon Divination Board Rituals and Rainmaking", Cahiers d'Extrême-Asie, 21, 2013; 『醍醐寺における祈雨の確立と清瀧神信仰』 (ルチアドルチェ、松本郁代編『儀礼の力——中世宗教の実践世界』2010年);「神泉苑における真言密教祈雨法の歴史と普如竜王の伝説」 (『アジア遊学』79, 2005年); 「論雨経法と孔雀経法の研究——神泉苑における孔雀経法実修説への疑問」『佛教史学研究』46, 2, 2003年)
目次
図版目次
凡 例
序 章
一 本書の課題と目的
二 本書の構成
第一部 請雨経法の歴史
第一章 インドと中国密教の祈雨法
一 インド密教の祈雨壇法
二 中国における密教祈雨法の展開
第二章 日本における請雨経法の確立
一 飛鳥・奈良時代の祈雨事例
二 神泉苑祈雨法の登場
(1) 空海の祈雨
(2) 神泉苑の祈雨霊場化
(3) 請雨経法の確立過程
第三章 十世紀における祈雨孔雀経法の実修例
はじめに
一 神泉苑における祈雨孔雀経法の事例
(l)仁安元年の例
(2)聖宝の祈雨
(3)観賢の祈雨
(4)観宿の祈雨
(5)義海の祈雨
(6)嘉承元年七月五日の事件
二 その他の祈雨孔雀経法の実修例
(1)延喜二十二年と天暦二年の事例
(2)寛空の祈雨無験伝承
(3)息災法の孔雀経法
おわりに
第四章 十世紀〜十一世紀における請雨経法の展開
一 天台宗の僧による祈雨法
二 救世と元杲の請雨経法
三 仁海の祈雨経歴
四 請雨経法と五龍祭
五 深覚の祈雨とその背景
六 深覚と仁海
七 『孔雀経』による祈雨の確立
八 請雨経法と小野流
第五章 請雨経法の途絶と醍醐寺における祈雨
はじめに
一 請雨経法衰退の要因
(1)請雨経法の準備
(2)請雨経法の実修期限
(3)白川院の対祈雨法態度
(4)範俊の祈雨無験
二 醍醐寺における祈雨
(1)醍醐寺における祈雨の登場
(2)醍醐寺における祈雨の定着
おわりに
第六章 鎌倉時代における請雨経法の復興と終焉
一 請雨経法の復興
二 請雨経法の展開と終幕
三 内裏における祈雨の如法愛染王法
四 水天供の確立と隆盛
結 論
付録 祈雨法実修例の一覧
第二部 請雨経法の実修と龍神信仰
第一章 中世日本における請雨経法の実修
一 請雨経法の基本的特徴
二 請雨経法の道場の荘厳
三 請雨経法の行法
四 請雨経法の舎利・宝珠・龍神信仰
第二章 『御遺告』の「如意宝珠権現」
一 『御遺告』の宝珠譚
二 如意宝珠の「権現」をめぐって
結 諭
第三部 中世真言密教龍神信仰の展開
第一章 醍醐寺の龍神信仰
はじめに
一 中世の清瀧神信仰
二 清瀧神信仰の歴史的展開
(1)龍神としての清瀧神
(2)清瀧神と龍女
(3)権現としての清瀧神
(4)清瀧権現と円光院
(5)清瀧権現のジェンダー
(6)清瀧神と伝法灌頂
おわりに
第二章 真言密教の龍神信仰と室生山
はじめに
一 室生山への真言密教の流入
二 室生山の二系譜の龍神信仰
三 鎌倉期室生山の真言宗小野流系の龍神信仰
(1)『宀一秘記甲』の所説
(2)『御遺告大事』の三尊信仰
おわりに
第三章 中世真言密教龍神信仰の変奏
はじめに
一 避蛇法
(1)即身成仏の実践法
(2)鎮護国家の至極
(3)蛇・龍・煩悩の信仰
二 調伏する宝珠
おわりに
終 章
あとがき
引用文献
索引(人名・書名・事項)
英文概要