古代書体論考
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8140-0049-4 C3081
奥付の初版発行年月:2016年11月 / 発売日:2016年11月中旬
漢字の書体名として「篆書」「隷書」という名称はあまねく知られているが,命名の由来は明らかでなかった.本書は,書体名称が前漢末期まで遡ることを指摘しながら,命名の背景に漢代の経学における今文・古文の学派対立が反映されているという新説を提示し,命名にこめられた企図を体系的に探ることによって,古代書体の全体像を明らかにすることを試みる.
山元 宣宏(ヤマモト ノブヒロ)
宮崎大学教育学部准教授
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(人間・環境学)
日本学術振興会特別研究員、京都大学、大阪教育大学の非常勤講師、宮崎大学教育文化学部専任講師を経て現在に至る。
世界漢字学会日本理事、全九州大学書写書道教育学会監事、東方学会会員、書学書道史学会会員。第6回立命館白川静記念東洋文字文化賞、平成24年度 漢検漢字文化研究奨励賞受賞。
主要著作
「秦書八体の成立時期再考――『張家山漢墓竹簡』二年律令「史律」475・476の解釈を中心に」(『第5回書法文化書法教育国際会議論文選』2007年)、「關於隸書之「隸」的一考察 」(『中國文字』新三十三期、中國文字編集委員會、臺灣、藝文印書館、2007年)、「試論「章草」的名與義」(『書法叢刊』北京、文物出版社、2009年)、「蘊含在書體命名中的意圖――關於其成立與背景」(『日本東方學』第二輯、北京、中華書局、2012年)、「关于〈说文解字〉叙和〈汉书·艺文志〉所记载的书体名称」(『中国文字研究』第十六輯、2012年)、「篆書名義考」(漢字研究、第7輯、慶星大學校韓國漢字研究所、2012年)、「書体の命名に込められた企図――その成立と背景について(『漢字文化研究』第3号、日本漢字能力検定協会、2013年)
目次
序章
第一章 秦書八体の成立時期再考
はじめに
一、『張家山漢墓竹簡』二年律令「史律」四七五・四七六について
二、漢人による認識
三、秦系文字資料よりみる「秦書八体」
四、文書行政との関わり
おわりに
第二章 書体の名称はいつ成立したのか
はじめに
一、漢初に書体の名称は存在したか
二、同一時期による書体の誕生
三、今文学派と古文学派との関係
四、魯国堯氏の班固説について
五、劉歆説
おわりに
第三章 隷書の“隷”について
はじめに
一、隷書の別名について
二、隷書の伝統的な解釈と先行研究
三、“隷”の解釈
四、隷臣妾の使用期間
おわりに
第四章 篆書の「篆」について
はじめに
一、文献史料による篆の解釈
二、考古出土物による篆の実体
三、古文学派との結びつき
おわりに
第五章 急就篇の文献的性格
はじめに
一、小学書について
二、『急就篇』の構成
三、『急就篇』の性質
四、『急就篇』の実用性・速効性
おわりに
第六章 章草の名義
はじめに
一、啓功説
二、『四庫提要』説
三、西川説の再検討
四、『急就章』用の草書体
五、史書の変化
六、『急就篇』のテキストと書体
おわりに
結章 書体の命名に込められた企図
附篇
一 曹望憘造像記考
二 大唐善業銘塼仏の書法
参考文献
あとがき
附録(中文)
隸書名義考
蘊含在書體命名中的意圖――關於其成立與背景――
索引(人名・研究組織名・事項)