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環太平洋パラダイムの可能性秩序の砂塵化を超えて

環太平洋研究叢書
秩序の砂塵化を超えて 環太平洋パラダイムの可能性

A5判 286ページ 並製
価格:3,850円 (消費税:350円)
ISBN978-4-8140-0111-8 C3331
奥付の初版発行年月:2017年07月 / 発売日:2017年07月上旬

内容紹介

格差拡大を背景にした民主主義の動揺が世界的に広がる一方,クリミア併合や「イスラム国」,南シナ海問題など,第二次大戦以降世界が経験しなかった力による版図の変更さえもが進行している。平和と安定を再構築するための新しい途はどこにあるのか? 旧体制や「伝統」を乗り越えようと格闘する,非欧米地域の社会の中に可能性を見る。

著者プロフィール

村上 勇介(ムラカミ ユウスケ)

1964年生京都大学東南アジア地域研究研究所准教授 博士(政治学)
ラテンアメリカ地域研究、政治学専攻
最近の業績は『融解と再創造の世界秩序』(帯谷知可との共編)(青弓社、2016年)、『21世紀ラテンアメリカの挑戦 ── ネオリベラリズムによる亀裂を超えて』(編著)(京都大学学術出版会、2015年)他。

帯谷 知可(オビヤ チカ)

1963年生京都大学東南アジア地域研究研究所准教授
中央アジア近現代史、中央アジア地域研究専攻
最近の業績は『融解と再創造の世界秩序』(村上勇介との共編)(青弓社、2016年)、“Islam and Gender in Central Asia: Soviet Modernization and Today’s Society”(CIAS Discussion Paper No.63) (編著)(CIAS、2016年)、他 。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

環太平洋研究叢書シリーズの刊行にあたって [村上勇介・帯谷知可]

序 章 秩序形成に向けた動態的視座の構築をめざして
    ── 環太平洋地域を起点に [村上勇介・帯谷知可]
   世界秩序の変容を浮き彫りにした14年という画期
   制度の融解、秩序の砂塵化がもたらした世界の混沌
   市場経済による格差拡大と民主主義の動揺・後退
   「システム・体制」と「行為主体」からみる環太平洋地域 ── 本書の目的と構成

第I部 動揺する国家と社会の枠組みの現在

第1章 権威主義の進化、民主主義の危機
    ── 世界秩序を揺るがす政治的価値観の変容 [宇山 智彦]
   1 権威主義のアップグレードとポピュリスト権威主義
   2 権威主義の拡散?──諸国間のモデル学習と連携
   3 欧州への権威主義の拡散 ── プーチンと欧州右翼を結ぶ「伝統的価値」
   4 米国て?の権威主義の伸張とトランプ当選
   5 世界秩序と民主主義の危機の原因 ── グローバル化への不安、露中の「復讐」
   6 20世紀後半型国際秩序の終焉と政治学のパラダイム転換の必要性
第2章 民主主義の揺らぎとその含意
    ── 今世紀のラテンアメリカの状況から [村上 勇介]
   1 ラテンアメリカの民主化とその後
   2 近年の民主主義体制毀損の原因
   3 民主主義の意味内容
   4 中長期的な経済社会アジェンダを争点とする政党政治の重要性
第3章 中国の資本主義的発展をどうとらえるか
    ──歴史的「制度」の視点から [梶谷 懐]
   1 「制度」から考える中国の経済発展
   2 スミス的成長をめぐる日中の「小分岐」
   3 脆弱な財産権の下での「イノベーション」は可能か?
   4 「国家」と「民(間)」の関係性をめぐって
第4章 イスラーム観の違いを克服する
    ── ポスト社会主義、イスラーム復興、権威主義の交錯するウズベキスタンの課題
    [帯谷 知可]
   1 「伝統」をめぐるパラダイムの転換 ── ソ連時代と何が変わったのか
   2 よいイスラーム/悪いイスラームの二分法──「ナショナルなイスラーム」の模索
   3 二人のカリスマ
   4 ポスト・カリモフの時代のイスラームと政治の展望

第II部 アクターが作りだす位相

第5章 分極化するアメリカ── その背景と課題 [大津留(北川)智恵子]
   1 分極化の背景
   2 バッファー・ゾーンを失う民主党
   3 将来像を描ききれない共和党
   4 おわりに──アメリカ社会の課題
第6章 「現象」としての「イスラーム国(IS)」
    ── 反国家・脱国家・超国家 [末近 浩太]
   1「反国家」の「組織」としてのIS
   2「脱国家」の「国家」としてのIS
   3「超国家」の「思想」としてのIS
   4 おわりに──「組織」、「国家」、「思想」の連環
第7章 インドネシアにおける暴力をめぐる公私のポリティクス
    [岡本 正明]
   1 東南アジアにおける非国家的セキュリティ・プロバイダー
   2 インドネシアにおける暴力の公と私
   3 国家から見た私的暴力装置の合法性と許容性
第8章 現代イスラーム経済の挑戦
    ── ポスト資本主義時代の新たなパラダイムのために
    [長岡 慎介]
   1 飛躍する現代イスラーム経済
   2 イスラーム経済のアイデンティティ・クライシス
   3 現代に再興するイスラーム社会経済システム
   4 利己主義と利他精神が共存する新たなパラダイムの可能性
第9章 UAE のフィリピン人ムスリム女性家事労働者
    ── ムスリム・アイデンティティのゆらぎと複層化
    [石井 正子]
   1 フィリピン南部のムスリム社会 ── 海外労働者送り出しの背景
   2 湾岸アラブ諸国のフィリピン人家事労働者の実態 ── UAE の事例を中心に
   3 社会統合論理の不在とフィリピン人コミュニティ
   4 日本の家事労働者受け入れへの示唆

終 章 砂塵化を超克する試みの萌芽
    [村上勇介・帯谷知可]
   日常的営為の積み重ねから見出す可能性
   多元・多層の秩序世界か ? ── 複合的な共存空間

索引


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