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半世紀の歴史から未来へアフリカ文化探検

アフリカ文化探検 半世紀の歴史から未来へ

A5判 774ページ 並製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8140-0112-5 C1039
奥付の初版発行年月:2017年07月 / 発売日:2017年07月中旬

内容紹介

 1960年代以降,日本は,アフリカを舞台にした霊長類学と生態人類学において特異な業績を挙げ注目された。その最初期,未だ戦後復興期の日本から,アフリカの最も奥地カラハリ砂漠の真ん中に赴いたのが,田中二郎である。太古以来の狩猟採集生活を送るブッシュマンに密着し,実は植物に強く依存するその生活の実態を明らかにし,子育てや労働と遊びなど,新しい狩猟採集像を示し世界を驚かせた。一方で,遊牧民,農耕民,霊長類研究へと,アフリカ研究の拡大を組織し,国家による近代化政策の中で急速に変貌する伝統社会の問題を鋭くレポートしてきた。
 その半世紀におよぶ成果を,400枚以上のカラー写真とユーモア溢れる文章で纏め上げたのが本書である。社会変貌の中で,今は全く見られなくなった狩りや物質文化,伝統社会と近代のせめぎ合い,道も無いブッシュでのサバイバル・ドライブの技術等々,多くのコラムも配置し貴重なデータを提供する。

◉山極壽一氏(京都大学総長)推薦
 日本のフィールド科学が世界に評価されるようになったのは,半世紀におよぶアフリカ研究があったからに他なりません。そして,その研究をリードしてきたのが,霊長類学と文化人類学を修め,生態人類学という学問を切り拓いた田中二郎さんです。国際学会の生涯功労賞に輝きながら誰もが「先生」とは呼ばない,二郎さんの人柄と活力が,ブッシュマン調査から始まったアフリカ研究をどう広げていったのか。本書では,ユーモアに溢れしかも学術性に富んだ文章と多くのカラー写真で,その経緯がつぶさに語られます。
 この間,アフリカは,いわゆるグローバル化の波をいち早く受け大きく変容もしました。だからこそ,今日世界に広がった混迷を解決する道も,アフリカから学べるのではないか,といま私は考えています。本書が,専門分野や職業の違いを超えて,未来を真剣に考える多くの人々の指針になると信じています。

著者プロフィール

田中 二郎(タナカ ジロウ)

1941年生まれ。戦後日本の学術探検をリードした京大学士山岳会メンバーとして,1962年ヒマラヤ・デオチバに登頂,インドラサン南西壁初登頂に参加。1967年,日本人として初めてカラハリ狩猟採集民(ブッシュマン)の調査を開始し,以後,京都大学アフリカ地域研究センター(現・アジアアフリカ地域研究研究科)センター長として,日本のアフリカ研究をリード。
また,世界的には人類学における国際論争(「カラハリ論争」)の一方の旗頭として著名であり,2015年には,国際狩猟採集民学会の第1回生涯業績賞を受賞。今日に至るまで国内外の研究者を育成している。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次



第1部 未知の民のもとへ  ――初期アフリカ研究の記録
第1章 念願のアフリカ  ――北大探検隊の一員として
1 船出
2 アフリカの大地を踏む
3 盗難事故
4 カラハリ砂漠へ
5 ハンシーと中央カラハリ動物保護区
6 国境の村
7 カラハリ北部への旅
8 カラハリ南部へ
9 ツワナ人の町々

■アフリカ人類学百科 1 ブッシュマン、ホッテントットの名称について
■アフリカ人類学百科 2 ブッシュマンとコイコイ

第2章 ついに未知の民と遭う  ――単独行のカラハリ探検
1 一人でカラハリへ戻る
2 セントラル・カラハリ・ゲーム・リザーブ(CKGR)へ
3 メノアーツェの人びと
4 狩猟と採集の生活に触れる
5 カデ地域への転進
6 ブッシュマン探索
7 ついに砂漠の狩人と出会う
8 一九六〇年代のブッシュマンたち

■アフリカ人類学百科 3 単独行の狩人  ――ブッシュマンの狩猟
■アフリカ人類学百科 4 ブッシュマンの動物観
■アフリカ人類学百科 5 狩猟採集生活における人間と植物
■アフリカ人類学百科 6 ブッシュマンの住居

第3章 ブッシュマンと暮らす
1 ドーベ地域訪問
2 ハーバード大学隊のカデ訪問
3 子連れのカラハリ生活
4 子連れの調査が拓いた世界
5 ブッシュマンの家族と人付き合い
6 岩壁画探訪の旅
7 テベチューの死
8 生きるとは何か
9 ブッシュマンの子ども・遊び・労働

■アフリカ人類学百科 7 ブッシュマンの文化を記録する
■アフリカ人類学百科 8 踊りの治療
■アフリカ人類学百科 9 定住化以前の環境・衛生・人口動態
■アフリカ人類学百科 10  狩猟採集民の物質文化と社会  ――ブッシュマンとピグミー

第2部 アフリカ研究の発展
第4章 三度目のアフリカ
1 東アフリカ、コンゴ森林の探訪
2 マハレのチンパンジーと人びと
3 「最小生計努力」  ――焼畑農耕民トングウェの生活構造と精神世界
4 未知の民の地、レンディーレ・ランドへ
5 三たびカラハリへ
6 ピグミーの森へ
7 遊牧の民を求めて
8 環境への適応と進化  ――チンパンジーとヒト

■アフリカ人類学百科 11  アフリカ狩猟採集民の比較生態学的研究

第5章 牧畜民から比較生態人類学へ  ――現地拠点の形成と研究の拡大
1 日本学術振興会アフリカ研究センター
2 レンディーレ・ランド再訪
3 タンザニアへのサファリ
4 ウガンダ周遊の旅
5 トゥルカナとポコットを調査対象にする
6 伊谷隊として六回目のアフリカ行
7 交通事故
8 遊牧ポコットの移動のパターンと家畜管理
9 家畜の放牧と管理
10  土地の利用について

■アフリカ人類学百科 12  フィールドのカーライフ

第6章 乾燥への適応のかたち  ――カラハリ狩猟採集民とケニアのラクダ遊牧民
1 狩猟採集民から遊牧民へ
2 ケニア北部の遊牧民
3 ラクダ遊牧民
4 乾燥への適応のかたちを比較する
5 狩猟採集、農耕、牧畜
6 移動と物質文化
7 狩猟採集および牧畜における乾燥適応
8 集団の構造と社会組織

第3部 変容する伝統社会に参与する
第7章 ブッシュマンの定住化と社会文化変容
1 四度目のカラハリ
2 調査隊を編成する
3 社会変容の歴史的概観
4 集住化・定住化の外部要因の時系列的把握
5 生活の変化
6 肉の獲得と消費
7 時間観念、価値観の相克
8 調和的な受容と再統合の必要
9 アフリカで酒を考える

■アフリカ人類学百科 13  カラハリ砂漠の果実酒

第8章 開発と近代化の中でのブッシュマン研究
1 二〇年を経たアフリカ調査
2 一七年ぶりのナミビア
3 カラハリにおける開発を考える
4 「生態農場」の可能性
5 ザンビアの焼畑を垣間見る
6 言語学、民族昆虫学の研究
7 食文化の原型  ――あらためて狩猟採集民の食を考える
8 三度目のナミビア訪問

■アフリカ人類学百科 14  “未開”を洗い流す近代化の波  ――南北問題と研究者の立ち位置

第9章 ナミビア東北端からヒンバの地、そして帝国の残影を見る
1 カオコランド
2 ジンバブウェを探訪する
3 ヒンバ調査、カデ、そして再びジンバブウェの旅
4 カラハリ、ナミーブからケープへ
5 もう一つのアフリカ  ――初めてエチオピアへ

第4部 アフリカよ永遠に
第10章 ブッシュマンの再移住と学際的地域研究
1 故郷を追われる人びと
2 ソッサスフレイの洪水
3 ノアアヤの死  ――定住化の犠牲となったか?
4 乳幼児の発達と育児の研究
5 都会化して物騒になったハボローネ
6 ブッシュ生活への回帰
7 生態人類学から地域研究への発展
8 ツォディロ・ヒル探訪
9 西アフリカを垣間見る
10 コート・ジボアールからマリへ
11 はじめての北アフリカ
12 エチオピア再び
13 久しぶりのケニアで豹に出会う
14 南ア、ボツワナ、ナミビアを歴訪

第11章 アフリカ縦断の旅
1 出発準備
2 ドラッケンスベルグ山塊
3 アフリカ最南端を目指して
4 ケープからお花畑へ
5 フィッシュリバー・キャニオンからナミーブ砂漠へ
6 スケルトン・コースト
7 珪化木の森とトゥイフェルフォンテインの岸壁画
8 ヒンバ・ランドからオヴァンボ・ランドへ
9 エトーシャ国立公園
10 カラハリ砂漠へ
11 ビクトリア・フォールへの道
12 悪路のはじまり
13 ガソリン危機
14 マラウイ湖畔
15 タンザニアへの旅
16 チンパンジーの森、マハレ国立公園
17 ンゴロンゴロからセレンゲッティへ
18 ケニア北部への旅
19 車のトラブルで旅程の変更
20 アバデレ国立公園からマララルへ
21 ナクル湖のサイとフラミンゴ、そして旅の終わりに
22 最後のブッシュマン調査
23 定住化社会の将来
24 カラハリと私、その後

終 章 アフリカ人類学概観  ――生態人類学の誕生とその展開
1 山登り、探検からアフリカ研究へ
2 人類学調査の開始
3 狩猟採集民の研究
4 農耕民の研究
5 牧畜民の研究
6 近年の研究動向と二一世紀への課題

あとがき
参照文献
索  引


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