オルフェウス変幻 ヨーロッパ文学にみる変容と変遷
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8140-0307-5 C1098
奥付の初版発行年月:2021年01月 / 発売日:2021年01月下旬
オルフェウスは絵画、オペラ、バレー、映画、さらには漫画にも登場する。亡き妻エウリュディケを求めて冥界に降りていった話は有名だが、その原話がどのように誕生し、伝承のなかで変容・変遷していったかは意外と知られていない。本書は、古代ギリシアから近代にいたる文学を渉猟しながら、伝説的な詩人の姿を跡づける。
沓掛 良彦(クツカケ ヨシヒコ)
1941年長野県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。東京外国語大学名誉教授。専門は西洋古典文学。
主な著訳書
『サッフォー—詩と生涯』(平凡社、後に水声社)、『讃酒詩話』、『和泉式部幻想』(以上、岩波書店)、『陶淵明私記—詩酒の世界逍遥』(大修館書店)、『西行弾奏』(中央公論新社)、『エラスムス—人文主義の王者』(岩波現代全書)、『式子内親王私抄—清冽・ほのかな美の歌』、『人間とは何ぞ—酔翁東西古典詩話』(以上、ミネルヴァ書房)、『古代西洋万華鏡—ギリシア・エピグラムにみる人々の生』(法政大学出版局)、『ギリシアの抒惰詩人たち』(京都大学学術出版会)、『ピエリアの薔薇—ギリシア詞華集選』(水声社、後に平凡社ライブラリー)、『ホメーロスの諸神讃歌』(ちくま学芸文庫)、エラスムス『痴愚神礼讃—ラテン語原典訳』 (中公文庫)、オウィデイウス『恋愛指南—アルス・アマトリア』(岩波文庫)、『黄金の竪琴—沓掛良彦訳詩選』 (思潮社、読売文学賞受賞)、『ギリシア詞華集』全4冊(西洋古典叢書、京都大学学術出版会)、など
目次
序論 オルフェウス像変遷の軌跡——古代から近代までの概観
はじめに
オルフェウス像の変遷概観——古代から近代まで
第一章 オルフェウスとは何者か、その正体をさぐる
——原初の詩人(Urdichter)としてのオルフェウス
一 実体・実像のとらえがたき存在
二 オルフェウスの「正体」は不明。その「原像」
三 オルフェウスとは何者だったのか
四 古典学者たちの提示するオルフェウス像
五 オルフェウスの「正体」ないしは「実像」
六 「冥府降り(katabasis)」について
七 「オルフェウス教」とオルフェウス
第二章 ギリシア文学に見るオルフェウス像
一 おぼろげな存在——アルカイック期・古典期
二 悲劇の中のオルフェウス
三 哲学者とオルフェウス——プラトン、散文作家たち
四 オルフェウス、文学の前面に登場す——ヘレニズム時代
第三章 ローマ文学におけるオルフェウス像
一 喪失者の悲劇——ウェルギリウスの描くオルフェウス
二 愛に生き愛に死んだ男の物語——オウィディウスの描くオルフェウス
三 ウェルギリウスの偽作「蚋」の詩と「冥府降り」
四 ホラティウスの歌ったオルフェウス
五 セネカの悲劇に見るオルフェウス
六 オルフェウスの教訓——ボエティウスと寓意的オルフェウス像の始まり
第四章 中世におけるオルフェウス
一 アポロギア——多様多彩なオルフェウス像
二 キリストとしてのオルフェウス
三 ラテン語詩に歌われたオルフェウス
四 ロマンスの中のオルフェウス
五 オルフェウス奇諏——ラウル・ルフェーヴルが物語る奇妙なオルフェウス
六 ギヨーム・ド・マショーの歌ったオルフェウス——『友のための慰め』に見るオルフェウス像
第五章 ルネッサンス詩文学におけるオルフェウス像
一 ダンテ、ペトラルカ、ボッカッチョとオルフェウス
二 ネオラテン詩人たちの歌うオルフェウス
三 ポリッィアーノ『オルフェオの物語』を覗く
四 ロンサールの詩に見るオルフェウス
五 スペンサーとミルトンにおけるオルフェウス
第六章 ヨーロッパ近代詩に見るオルフェウス像
一 近代的オルフェウス像の構築——リルケ『オルフォイスへのソネット』管見
二 「オルフェウス的詩人」ノヴァーリスについての寸言
三 バンヴィルとルコント・ド・リールの歌ったオルフェウス
四 ネルヴァルにおけるオルフェウスについて——『幻想詩篇』の詩二篇を一瞥する
五 ヴァレリーの詩「オルフェ」一瞥。付・マラルメについて一言
六 アポリネールとオルフェウス——『動物詩集』を垣間見る
七 北方のオルフェウス——プリューソフの詩に見るオルフェウス
最後に贅言
テクストおよび主要参考文献
あとがき
索引(人名/事項)