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生の外側に触れるアフェクトゥス(情動)

アフェクトゥス(情動) 生の外側に触れる

A5判 460ページ
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-8140-0308-2 C3039
奥付の初版発行年月:2020年12月 / 発売日:2020年12月中旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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内容紹介

我々は「すでに在る」のではない。人も動植物もモノ……も,影響・作用(アフェクト)され,影響・作用(アフェクト)することの中で,存在し続けることが出来るのだ――。作家が創作のモチーフをつかむ瞬間,密林の中で突然「視界が開けた」サル学者の経験,スーダンの半農半牧民が感受する「闇の時空」,植物と人とが形成する複合体とも言うべきアマゾンの先住民の生活世界,あるいはAI棋士と生身の棋士とが「情動」において作用し合いながら拓く新しい将棋……。「客観的現実」には還元できない陰影のある現実は,アフェクトゥス(情動)の相から眺めることによって初めて垣間見えるのだ。世界の見方の根本的な転倒による,人類学,哲学,生命科学そしてアートの共振。

著者プロフィール

西井 凉子(ニシイ リョウコ)

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
1959年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程中途退学。博士(文学)。専門・関心は人類学的エスノグラフィ・死の人類学。
主な書著に、『死をめぐる実践宗教―南タイのムスリム・仏教徒関係へのパースペクティヴ』(世界思想社、2001年)、『情動のエスノグラフィ―南タイの村で感じる*つながる*生きる』(京都大学学術出版会、2013年)、『社会空間の人類学―マテリアリティ・主体・モダニティ』(田辺繁治と共編著、世界思想社、2006年)、『時間の人類学―情動・自然・社会空間』(編著、世界思想社、2011年)など。

箭内 匡(ヤナイ タダシ)

東京大学大学院総合文化研究科教授
1962年生まれ。1993年東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。バルセロナ大学客員教授、天理大学准教授、東京大学大学院准教授を経て、2013年より現職。博士(学術)。専門・関心はイメージと自然の人類学(および哲学)。
主な著書に、『イメージの人類学』(せりか書房、2018年)、『映像人類学 ―人類学の新しい実践へ』(共編著、せりか書房、2014年)、『映画的思考の冒険』(編著、世界思想社、2006年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに―アフェクトゥス(情動)的世界への招待 [西井凉子・箭内 匡]

序 章 書き割りの身をうぐいす、無限小の幸福 [中村恭子]
  1 アフェクトゥス、あるいは空虚を身体に刻む
  2 顕在する仮想と潜在する現実
  3 書き割りの向こう側
  4 書き割りの身、うぐひすは無限小の幸福
  5 外部に控えるものたち

第1部 アフェクトゥス論の射程

第1章 スピノザと「植物人類学」
    ―アフェクトゥス概念の人類学的一展開 [箭内 匡]
  1 スピノザにおける個体と撼動
  2 植物人類学の必要性
  3 植物的アニミズム
  4 植物の政治
  5 「植物になる」

第2章 熱帯雨林との感受―共振とうなり [黒田末寿]
  1 感受の様相
  2 森を感受する:共振とうなり

第3章 光 景―現実に陰影をつける
   [ヴィンセント・クラパンザーノ(池田昭光・小栗宏太・箭内 匡[訳])]

第2部 アフェクトゥスと潜在性―生・死・影

第4章 弔いとしての家―情動・モノ・死者 [西井凉子]
  1 「弔い」から生の潜在性へ
  2 ナーチュアと家
  3 ケアと看取り―死にむかう身体と家
  4 死によって開かれる家
  5 墓と親族のサーラー(sala あずま屋)
  6 「弔い」と情動

第5章 悪夢を感受し、「夢達」を甘受する
    ―スーダン東南部における影の共同体 [岡崎 彰]
  1 夢経験の受動性と事件性
  2 影の共同体
  3 魔物と誘惑
  4 陽気な夢達

第6章 生を産むアフェクトゥス
    ―ニジェール西部農村の命名式をめぐって [佐久間寛]
  1 背景
  2 命名式
  3 名付ける身体、名を受ける身体、名を記す身体

第3部 アフェクトゥスと社会性―表層・リズム・パターン

第7章 皮膚的建築
    ―情動の場としてのルーマニアのロマの家屋と音楽
    [岩谷彩子]
  1 情動の場における表面性
  2 ルーマニアのロマ―迫害の歴史と現在
  3 ヴァーチャルなものが現在化する建築―ロマ御殿の表面
  4 ロマ御殿に響くマネレ―顕在化するコミュニティ内の対立
  5 表面的でかつヴァーチャルな深層が表出する建築と音楽

第8章 境界、動作、リズム
    ―ビャンス及び周辺地域の「太鼓演奏」の諸相
     [名和克郎]
  1 太鼓演奏がもたらすもの
  2 民族誌的背景
  3 「太鼓演奏」に関する外形的記述
  4 代表性と周縁性―太鼓演奏を巡る二つの境界
  5 太鼓演奏と踊る身体
  6 演奏とリズム

第9章 「贈与」をあたらしく記述する [春日直樹]
  1 「アフェクト」とパターン
  2 妻方と夫方のあいだで
  3 対称性を記す
  4 やりとりする人と財、および双方の視点
  5 「贈与」の簡潔な定義Ⅰ
  6 友好と敵対のダイナミクスを含む定義Ⅱ
  7 「贈与」のパターンと「アフェクト」

第4部 アフェクトゥス論の発展

第10章 テクノロジーと情動―現代将棋における機械と人間
    [久保明教]
  1 技術と変様
  2 意識の専制を離れて
  3 これは世界の終わりではない
  4 バグとバグでないもの
  5 研究と勉強
  6 テクノロジーへの内在

第11章 回想の表情/姿勢とその揺らぎ
     ―供述聴取のテクノロジーをめぐって [高木光太郎]
  1 証言の表情
  2 想起者の表情/姿勢の曖昧さ
  3 証言の「採取」
  4 子どもからの供述聴取
  5 NICHDプロトコル
  6 「隙間のあるフレーミング」と外部

第12章 ドゥルーズとガタリの「政治哲学」という未解決問題
     ―『天然知能』と『イメージの人類学』の観点から
     [近藤和敬]
  1 本書全体のなかでの位置づけ―「アフェクト」という問題圏を遡る
  2 ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』における未解決問題
  3 哲学を「原生理論」として徹底すること―「自然権」概念を例に
  4 郡司ペギオ幸夫の「天然知能」とドゥルーズとガタリの「脳」
  5 「三つの意識タイプ」と『哲学とは何か』における哲学・芸術・科学
  6 「タイプⅢの意識」と哲学の「現在形式」
  7 現代人類学における「他なるもの」と「不可量部分」
  8 箭内匡の「イメージ」と「社会身体」
  9 「イメージ平面」、「イメージ=力」あるいは「感受」の解釈
  10 「総かり立て体制」と資本主義における「相対的脱領土化」、
     そして思考の「絶対的再領土化」の「現在形式」への批判
  11 結論

第13章 外部を召還する過程・装置としての情動、
    その形式的理解 [郡司ペギオ幸夫]
  1 形式を通した理解の意味:身体と対角線論法
  2 認知的非局所性を構想する:対角成分の向こう側
  3 反=反相対主義の情動的転回:まとめにかえて

終 章 アフェクトゥスとは何か? [箭内 匡・西井凉子]
  1 アフェクトゥスの問題性
  2 スピノザのシステム
  3 撼受と撼動の間で―「外部」と個体性
  4 結晶的描写
  5 アフェクトゥス的世界像

おわりに [西井凉子・箭内 匡]

索 引


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