環境人間学と地域
人新世を問う 環境、人文、アジアの視点
価格:6,270円 (消費税:570円)
ISBN978-4-8140-0317-4 C3336
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年04月上旬
20世紀後半からの環境破壊・変動の大加速、そして露わになってきた「地球の限界」。人新世という新たなメタファーは、人類の優位だけでなく危機を示している。研究者たちは、破壊でも後退でもない新時代を乗り越える新たな道をアジアに探し求めた。西洋の刻印を相対化し、「人新世」を問い直す。
寺田 匡宏(テラダ マサヒロ)
総合地球環境学研究所客員准教授。人文地球環境学,歴史学。歴史という人間中心の概念が非-人間を扱う環境とどう関係するかを研究。メタヒストリーという記述の立場から,超長期の過去である人新世(アンソロポシーン)と未来史に関心を持つ。著書に,『人文地球環境学――「ひと,もの,いきもの」と世界出来』(あいり出版,2021年),『カタストロフと時間――記憶/語りと歴史の生成』(京都大学学術出版会,2018年),『人は火山に何を見るのか――環境と記憶/歴史』(昭和堂,2015年),『災厄からの立ち直り――高校生のための〈世界〉に耳を澄ませる方法』(編著,あいり出版,2016年)ほか。「叢書・地球のナラティブ」(あいり出版,2019年〜)のシリーズ・エディターもつとめる。国立歴史民俗博物館COE研究員,国立民族学博物館外来研究員,マックスプランク科学史研究所客員研究員を歴任。マックスプランク科学史研究所共同研究「人新世における/の知」メンバー。
ダニエル・ナイルズ(ナイルズ)
総合地球環境学研究所准教授。人間と環境に関する地理学を研究。異なった環境の知識が農業実践,物質文化,土地にどのように埋め込まれ,どのように転移するかを研究。とりわけ,農業遺産に着目し,長年の歴史的知識が人新世の現代的諸課題にどう適応しうるかに関心を持つ。マックスプランク科学史研究所客員研究員(2016,2017年),カリフォルニア大学バークレイ校客員研究員(2012,2018年),タイ農業省・国際連合食糧農業機関(FAO)世界農業遺産コンサルタント(2018年)を歴任。論文に「自然の経験と科学」(立本成文と共著,『ネイチャー・サステイナビリティ』2018年,英文),「人新世における農業遺産とその保存」(『オックスフォード・ハンドブック 遺産学』オックスフォード大学出版局,2018年,英文),「文化遺物ではなく生きた知識としての伝統農業の保存」(R・ロスとの共著,『資源と生態』2016年,英文)ほか。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
序章 人新世(アンソロポシーン)をどう考えるか
――環境をめぐる超長期的時間概念の出現とグローバルな地球システム科学ネットワークの展開
[寺田匡宏、ダニエル・ナイルズ]
コラム1[フォーカス]人新世をめぐる六つの問い
第一部 人新世(アンソロポシーン)による地球と地域の塑型――レジーム/ガバナンス
第1章 人新世における複数発展径路――モンスーン・アジアの資源と生存基盤をめぐって
[杉原薫]
第2章 デジタル・コントロールと地球のエコシステム――東アジア発・人新世的ガバナンスは可能か
[ステファン・グルンバッハ]
第3章 人新世と物質的解釈学――タイ大洪水に組み込まれた政治
[ソーラット・ホンラダロン]
第二部 人新世における感性/経験
第4章 炭焼きの森――エコロジー、美学、人新世
[ダニエル・ナイルズ]
第5章 まずは火山を愛すること――日本における地質学的親近感の形成
[エミリー・セキネ]
第6章 「地」性の復権――日本における自然農法の哲学と実践
[オギュスタン・ベルク]
コラム2[ダイアローグ]ものの秩序――テクノスフェアとアジアの感性
[ダニエル・ナイルズ/サンデル・ファン・デア・ルー]
第三部 歴史言説としての人新世
第7章 炭素の森と紛争の河――南アジアの歴史叙述から見た人新世
[ロハン・デスーザ]
第8章 人新世と「フォース(力)」――歴史における自然、人為、「なる」の原理とその相克
[寺田匡宏]
コラム3[ヴォイス]だれの?――アフリカからの問い/一つの詩
[クラパトン・チャカネツァ・マブフンガ]
第四部 知識システムへの問いとしての人新世
第9章 科学のグローバル・ヒストリーから見る人新世
[マティアス・シェメル]
第10章 知の共通基盤に向かって――「人新世カリキュラム」という実験
[クリストフ・ロゾル]
初出一覧
索引
英文要旨、英文著者紹介
著者紹介