大阪のエスニック・バイタリティ
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8140-0400-3 C3036
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年04月中旬
詩人・金時鐘が,「日本人だけのまちではない」と誇りをもって言いつつも「陰画」と表現した大阪の,在日朝鮮・韓国人集住地区。植民地主義とその崩壊の中で,公的な庇護無しに暮らしを営み,度重なる政治経済の変動の中でも,新しく外国人を流入させてきたその集住を【都市の活力】と捉え,土地取得・資本移動の緻密な分析から,地区形成の歴史メカニズムに迫る。日本の都市研究に新しい風を吹かす。
福本 拓(フクモト タク)
南山大学人文学部日本文化学科准教授
1978年生まれ.2007年,京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学.大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員,三重大学人文学部特別研究員,宮崎産業経営大学法学部講師,同准教授を経て,2019年より現職.博士(文学).専門・関心は,都市社会地理学,多文化共生論.
第7回地理空間学会奨励賞を受賞.
主要編著:『都市の包容カ―セーフティネットシティを構想する』(共編,法律文化社,2017年),Diversities of urban inclusivity: Perspectives beyond gentrification in developed city-regions (共編,Springer, 近刊).
目次
第I章 緒言:大阪に在日朝鮮人がいることにはどんな意味があるのか
1. 都市のバイタリティとエスニック集団
2. エスニック集住地区の空間的形態に着目する意義
―北米都市の事例から―
3. 在日朝鮮人をめぐる移動・在留の歴史的展開
4. 本書の意義
5. 本書の構成
第II章 日本のエスニック集住地区研究は何を見落としてきたか
1. 2つの「山」―日本におけるエスニック集団人口の推移―
2. 近代都市における社会ー空間的周縁化と集住地区
3. 戦後の都市政策の不在と集住地区
4. 多文化化・消費空間化する現代の集住地区
5. 2つの「山」の間にある「谷」への着目
第III章 現代日本の大都市におけるエスニック集団のセグリゲーション
1. 東京・大阪のオールドカマーとニューカマー
2. セグリゲーションの分析手法
3. 小地域統計からみた空間的セグリゲーション
a. 東京におけるセグリゲーションと集住地区分布
b. 大阪におけるセグリゲーションと集住地区分布
4. オールドカマー・ニューカマー別にみた集住地区の動向
a. 東京における渡来時期別の居住分布傾向
b. 大阪における渡来時期別の居住分布傾向
5. 東京と大阪における外国人居住分布の特質
第IV章 1920年代から1950年代初頭の在日朝鮮人居住分布の変遷
1. 在日朝鮮人の増加と急減
2. 集住地区の形成期―1920年代―
3. 集住地区における朝鮮人増加と社会階層の分化
―1930年代から終戦まで―
4. 終戦後の集住地区の残存―占領統治下―
5. 居住分布の変化をもたらした諸要因
第V章 1950年代から1980年代の在日朝鮮人の土地取得と集住地区の存続
1. エスニック集団にとっての持ち家取得の意味
2. 土地取得への着目と用いるデータ
3. 1950年代から1980年代における在日朝鮮人の居住分布形態と就業との関係
4. 在日朝鮮人による土地取得
a. 土地所有権の移転過程にみる特徴
b. 抵当権者および抵当の種類からみる特徴
5. 居住ー就業の空間的集中の固定化
6. 集住地区の維持に果たす土地取得の役割
第VI章 1980年代以降のセグリゲーションの弱化
—エスニック経済からの検討―
1. エスニック経済と集住地区
2. 用いる資料と分析の観点
3. 1980年の在日朝鮮人事業所の分布
4. 1997年の在日朝鮮人事業所の分布
5. エスニック経済の特性と集住地区との関係
6. 1980年代以降の集住地区における「原風景」の変容
第VII章 エスニック空間の形成と建造環境の特徴
—韓国クラブ街の形成を事例に—
1. エスニック空間の形成に果たすエスニック資本の役割
2. 研究対象地域と用いるデータ
a. 研究対象地域
b. 用いるデータについて
3. 今里新地における土地所有者の変遷と建造環境
a. 初期の今里新地の特徴
b. 1960年代から80年代の動向
c. 1980年代後半以降の韓国クラブ街への変化
4. エスニック空間への変容の背景
a. 在日朝鮮人による土地取得の経緯
b. エスニック空間への変容過程の考察
5. エスニック空間を生み出す資本の役割
第VIII章 韓流ブーム下でのエスニック空間の変容
1. エスニック空間の観光地化とグローバルな文化消費
2. 生野コリアタウンの来歴
3. 店舗の特徴からみた近年のコリアタウンの変容
4. 観光客の行動とコリアタウン・日韓関係への意識
5. 生野コリアタウンの経済的・社会的価値
6. エスニック・タウンの「進化」と開放性
第IX章 結語:大阪のエスニック・バイタリティの来歴と今後
1. 本書における議論の整理
2. 集住地区存続のメカニズム
3. 大阪のエスニック・バイタリティ
【あとがき】
[文献一覧】
【索 引】