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アメリカの戦略・東アジアの論理文化冷戦と知の展開

文化冷戦と知の展開 アメリカの戦略・東アジアの論理

A5判 466ページ
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-8140-0437-9 C3000
奥付の初版発行年月:2022年11月 / 発売日:2022年11月上旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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内容紹介

冷戦下、アメリカの文化外交戦略は、アカデミアで生産される純粋科学や工学などの体系的学知、そしてジャーナリズム専門職に必要な知に及んだ。その結果形成された「学知」「専門知」は冷戦後も長く東アジアで支配的位置を占め、今日に至る。知のヘゲモニーをめぐる現場は国際政治と無縁ではなく、特に「熱戦」下の分裂状態にある東アジアでは多様な主体が複雑な道を辿った。そこには知の供給者/受容者という二項の見立てや、ナショナルな枠組みでは捉えられない、ダイナミックな実態があった。日・米・中・韓・台湾の研究者があぶり出す新しい冷戦史。

著者プロフィール

森口(土屋) 由香(モリグチ ツチヤ ユカ)

京都大学大学院人間・環境学研究科教授
博士(アメリカ研究)。専門はアメリカ研究、冷戦史、日米関係史。主な著作に、『親米日本の構築—アメリカの対日呪情報・教育政策と日本占領』(明石書店、2009年)、『文化冷戦と科学技術—アメリカの対外情報プログラムとアジア』(京都大学学術出版会、2021年)などがある。

川島 真(カワシマ シン)

東京大学大学院総合文化研究科教授
博士(文学)。専門は東アジア政治外交史、中国近現代史、国際政治史。主な著作に、『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国のフロンティア—揺れ動く境界から考える』(岩波書店、2017年)、『サンフランシスコ講和と東アジア』(共編著、東京大学出版会、2022年)などがある。

小林 聡明(コバヤシ ソウメイ)

日本大学法学部准教授
博士(社会学)。専門は東アジア国際政治史・メディア史、朝鮮半島地域研究。主な著作に、『在日朝鮮人のメディア空間—GHQ占領期における新聞発行とそのダイナミズム』(風響社、2007年)、「サンフランシスコ講和条約と感情—米軍政期/一九五〇年代初頭の韓国社会」(川島真・細谷雄一編『サンフランシスコ講和と東アジア』東京大学出版会、2022年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章
[森口(土屋)由香・川島 真・小林 聡明]
1 文化冷戦と知の構築
2 東アジアの冷戦
3 東アジアにおけるアメリカの文化的ヘゲモニー
4 東アジアの「知の構築」をめぐる特殊要因と対米関係の複雑性
5 本書の構成と内容

第I部 地域研究

第1章 冷戦下台湾の中国研究とアメリカ —フォード財団による中央研究院近代史研究所支援
[川島 真]
1 フォード財団による中央研究院近代史研究所への支援
2 国民党内のフェアバンク批判とその影響
3 宣伝工作対象としてのアメリカ
4 冷戦下の「学知」と米華間の重層的相互関係

第2章 冷戦中の協働 —1945〜1960年のアメリカにおける日本学
[ミリアム・キングズバーグ・カディア]
1 アメリカ人日本学者の一団の創出
2 日本側の知識・情報の重要性
3 協働的フィールドワークの伝統の構築
4 現在から未来へ —「来たるべき日本学の死」?

第3章 1960年代の日米間における「近代化」論争 —箱根会議における価値体系と歴史認識をめぐる断層
[藤岡 真樹]
1 箱根会議での論争
2 箱根会議「以降」の誌上論争
3 アメリカの日本研究「第3世代」による批判
4 「民主主義」認識と歴史認識の断層

第4章 朝鮮に関する知の形成とマッキューン夫妻 —太平洋戦争前後アメリカの学術界と政策立案集団との関係を中心に
[小林 聡明]
1 ジョージ・M・マッキューンと米政府機関
2 エヴェリン・B・マッキューンと文通プログラム
3 学知と政策知の二重性を帯びた韓国研究の形成

Key Note 1 オーラル・ヒストリーとアーカイブによる学知の戦後史
[中生 勝美]

第II部 科学技術

第5章 中国の原子力研究の萌芽 —内戦と冷戦の間で
[佐藤 悠子]
1 国民党政権下での原子力人材
2 中華人民共和国初期の薄い人材層
3 共産党下での科学者たち
4 国家への献身と科学者の知のネットワーク

第6章 ミシガン記念フェニックス・プロジェクトと台湾—アメリカの公立大学による対外原子力技術援助
[森口(土屋)由香]
 1 ミシガン記念フェニックス計画とアメリカ国債協力局(ICA)の提携
 2 新たな学問分野としての「原子工学」の登場
 3 国立精華大学の事例
 4 アメリカ政府による科学知の動員とその限界

第7章 黄昏の帝国の科学知 —脱植民地化時代の英国の原子力外交
[友次 晋介]
1 旧勢力圏の紐帯維持と原子力市場を求めた英国
2 「独自」の原子力開発を必要とした英国
3 英国の原子力パブリック・ディプロマシーの始動
4 スエズ危機と原子力パブリック・ディプロマシーの戦略的連関
5 バグダード条約原子力センター構想の誕生と原子炉提供問題
6 米国の関与拡大と研究所の精算
7 脱植民地化時代の英国の原子力外交の遺産

第8章 冷戦空間の再発見 —非武装地帯(DMZ)における生態系調査の科学政治
[文 晩龍]
1 韓国の科学技術者の脱植民地主義への渇望
2 DMZの再発見、生態系調査
3 DMZを見るもうひとつの視線
4 読み替えられてきたDMZ生態系調査とそれがまいた種

第9章 開発の殉教者 —台湾の農業開発とベトナム共和国、1959〜1975年
[ジェイムズ・リン]
1 なぜ台湾なのか? —ベトナムと農村問題
2 種籾 —台湾の科学をベトナムへ移植する
3 「幅広い社会階層」 —農村組織、ジェンダー、農業改良普及
4 殉教とアイデンティティ —海外開発の国内的表現
5 華僑・国際反共主義・国家建設のイデオロギー —台湾による「開発」のグローバルな表現
6 「発展途上国の中の先駆者」としての自画像の形成

Key Note 2 視点としての技術協力 —帝国アジアと冷戦アジア
[ヒロミ・ミズノ]

第III部 ジャーナリズム

第10章 米援、台湾のジャーナリズム教育、そして中国系ジャーナリストのトランスナショナル・ネットワーク
[藍 適齊]
1 台湾のジャーナリズム教育に対するアメリカの支援
2 台湾における「海外華僑学生(僑生)」の教育に対するアメリカの支援 
3 国立政治大学ジャーナリズム学科を専攻した海外華僑学生(僑生)
4 ジャーナリズムを実践した僑生の卒業生
5 教育者たち —シンガポールと香港におけるジャーナリズム教育
6 文化冷戦の中での主体性(エージェンシー)

第11章 冷戦期香港のジャーナリズム・コミュニケーション教育の形成とアメリカ
[張 楊]
1 冷戦下の「心と精神をめぐる競争」と香港の教育近代化に対するアメリカの関心
2 近代化あるいはアメリカ化? —アメリカと中文大学ジャーナリズム学科の創設
3 香港におけるジャーナリズム・コミュニケーション教育の発展に影響を与えたローカル要因

第12章 冷戦期米国の教育交流プログラムと韓国ジャーナリズムのアメリカ化
[車 載永]
1 米国務省のジャーナリスト教育交流事業
2 韓国のジャーナリストの米国招請研修事業
3 米国ジャーナリズム専門家の韓国派遣事業
4 米国務省の韓国ジャーナリズム部門教育交流事業の成果と影響
5 東アジア諸国との比較と本研究の意義

第13章 GHQ占領期日本人ジャーナリストのアメリカ招聘プログラム —ロックフェラー財団・コロンビア大学・民間情報教育局
[小林 聡明]
1 GHQ占領期日本におけるジャーナリズム教育/ジャーナリスト養成
2 招聘プログラムの実施に向けた準備
3 招聘プログラムの実施
4 アメリカ招聘プログラムの意味と限界

Key Note 3 専門知としての対民活動(Civic Action) —米軍から韓国軍への連鎖
[許 殷]

おわりに
索  引
編者・執筆者紹介


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