「在日企業」の産業経済史 その社会的基盤とダイナミズム
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-8158-0631-6 C3033
奥付の初版発行年月:2010年02月
エスニック・マイノリティの経済発展を可能にするものとは何か? 在日韓国・朝鮮人による製造業・土木業・パチンコ産業などへの集中と、迅速な産業転換によるダイナミックな発展過程を、差別など既存の説明を乗り越えて鮮やかに解明、世界的視野で移民の経済理論に新たな展望を拓く。
本書は、戦後の在日韓国・朝鮮人が、同胞の大量帰国による民族市場の縮小という試練を乗り越え、そのコミュニティ機能を再強化しながら新たな経済発展の動態を生み出した過程を、移民、エスニック・マイノリティの経済発展をめぐる世界的な研究動向も視野に、ダイナミックに描き出したものです。
従来通説的に言われてきた、パチンコ産業など一部産業に「在日企業」が集中した理由をはじめて実証的に捉えるとともに、「差別」による説明の限界をも示して、何が本当に在日経済の発展を可能にしたのかを、極めて精緻な経済分析によって浮彫りにしております。
気鋭の新世代の研究者による斬新な解釈は、在日韓国・朝鮮人社会をめぐるステレオタイプ化されたイメージを大きく覆すとともに、経済成長の源泉とはなにかを、あらためて考えさせる刺戟的な問題提起となっております。
目次
序 章 なぜ「在日企業」のダイナミズムを問題にするのか
——本書の課題と接近方法
第Ⅰ部 産業実態分析
第1章 戦後の在日韓国・朝鮮人経済の産業動態
1 産業構成と動態——企業データの分析
2 既存企業の転業・多角化と新規企業の設立
3 在日産業の分業構造の特性
第2章 京都繊維産業における在日企業のダイナミズム
1 歴史的前提——1930年代における在日の就労状況および階層分化
2 復興期における在日の起業ブーム
3 戦後の京都繊維産業における在日企業の成長——聞取り調査より
4 在日企業の事業転換と産業構造の動態
第3章 パチンコ産業と在日企業
1 パチンコ産業における在日企業
2 パチンコ産業の発展と在日の参入
3 在日企業の産業構造とパチンコホール事業
4 在日企業の成長とパチンコホール事業
5 特定民族集団に凝縮される事業情報
第Ⅱ部 金融機関分析
第4章 在日韓国人による民族系金融機関設立とその基盤
——1950~60年代の全国展開を中心に
1 民族系金融機関設立に対する日本政府の方針
2 二つ目の民族系金融機関の誕生と全国展開の基盤整備——1950年代
3 商銀の全国展開——1960年代
4 政治的背景の経済的帰結
第5章 民族系金融機関の資本基盤と経営
1 資金調達の特質
2 資産運用の特質
3 民金の成長の制約と克服
第6章 1970年代における民族系金融機関の金融サービス
——朝銀と商銀の競争的な展開から
1 1970年代における民族系金融機関
2 資金需要の動向
3 地域別の金利動向の特徴
4 地域内民族系金融機関間競争における政治性の制約
5 民族系金融機関の機能——民族系金融機関の成長と貸出金利
第7章 在日企業と取引金通機関
——民族系金融機関の役割と限界
1 在日企業の産業別取引金融機関
2 資金需要と民族系金融機関の対応
3 在日企業の規模別取引金融機関
4 大阪府における在日企業と取引金融機関
終 章 戦後における在日産業経済のダイナミズム
1 在日産業経済の歴史的考察
2 民族マイノリティ企業の成長にかかわる試論——分析結果の理論的含意