帝国日本と財閥商社 恐慌・戦争下の三井物産
価格:9,350円 (消費税:850円)
ISBN978-4-8158-0633-0 C3033
奥付の初版発行年月:2010年02月
広汎なネットワークと取引基盤をもとに、「大東亜共栄圏」の運営を実質的に支えた圧倒的な巨大企業、三井物産の戦時期の経営を初めて総合的に解明、その経済的役割と戦争との関係を正当に位置づけ直すとともに、恐慌からアジア太平洋戦争へといたる日本経済の動態をも浮彫りにした労作。
本書は、戦前期日本の最大企業であり、日本の国際貿易に圧倒的なシェアを占めて、他の産業にも大きな影響力をもった財閥商社・三井物産の戦時期の姿を、未公表の1次史料を全面的に活用して、徹底的に解明したものです。
対欧米取引をその最大の収益源としていた三井物産が、情勢が次第に対英米開戦へと傾斜していくなかで、どのような決断をしたのか、「大東亜共栄圏」の運営においてどのような役割を果たしたのか、アジアへの急激な事業シフトはいかなる帰結をもたらしたのか、単純な「侵略」のレッテルを貼ることなく、その実態を丹念に浮き彫りにしていきます。アジア太平洋戦争を引き起こした経済的要因を考える上でも、その議論の基礎として欠くことのできない貴重な歴史叙述になっています。
目次
序 章 恐慌・戦争と財閥商社——課題と視角
1 帝国日本における財閥商社の位置——研究の意義
2 財閥商社論の現在——研究史と本書の視角
3 課題と構成
第Ⅰ編 事業経営の歴史的変遷
——昭和恐慌からアジア太平洋戦争へ
第1章 昭和恐慌期・満州事変期の経営
はじめに
1 昭和恐慌への対応
2 商品取引の動向
3 関連事業投資の拡大
4 利益金の推移とその特徴
第2章 日中戦争期の経営——戦時経済統制下の変容
はじめに
1 戦時統制経済の進展とその対応
2 販売地域市場の変容
3 商品取引構造の変容
4 損益構成の推移
むすび
第3章 アジア太平洋戦争期の経営の転換——戦争と財閥商社
はじめに
1 対米開戦とその対応
2 商品取引の激変と実態
3 損益構成の推移と特徴
むすび
第Ⅱ編 主要商品の取引構造
——流通・市場支配の構造
第4章 鉱業・重工業部門商品取引
1 鉱業部門商品取引
2 重工業部門商品取引
第5章 軽工業・農産物部門商品取引
1 繊維部門商品取引
2 穀肥・食品部門商品取引
第6章 投資活動と金融
1 社外投資の展開
2 商社活動と金融
第Ⅲ編 「大東亜共栄圏」と三井物産
——植民地・占領地の事業
第7章 植民地における事業活動
1 朝 鮮
2 台 湾
第8章 満州における事業活動
1 戦争の拡大と商品取引
2 投資の拡大と生産事業経営への進出
補論 戦時下満州における三井物産の生産企業
第9章 中国関内における事業活動
1 戦時下における商品取引
2 投資活動の急増と生産事業経営への進出
補論 中国における三井物産の生産企業
第10章 南方諸地域における事業活動
1 軍受命流通事業の拡大
2 軍受命生産開発事業の急増
む す び