文書行政の漢帝国 木簡・竹簡の時代
価格:9,240円 (消費税:840円)
ISBN978-4-8158-0634-7 C3022
奥付の初版発行年月:2010年03月
紙とは異なる簡牘(=木簡・竹簡のこと)という文書の特性から、書記官のあり方、書体・書法や書芸術の誕生、そして何よりも帝国を支える徹底した文書行政の実態を、文書の伝達・人の動き・物の管理にわたり、明晰な論理と緻密な考証によって蘇らせた労作。
まだ紙が用いられていなかった古代中国では、木に文字などを書きつけた「木簡」や「竹簡」が伝達手段として利用されていました。
漢帝国の行政は、文書により命令や報告がなされる「文書行政」でしたが、漢帝国を維持してきたのは、まさにこの「木簡」や「竹簡」というメディアを基礎にした緻密で効果的な行政システムだったのです。
土の中から発見された小さな木片から当時の巨大帝国のあり方を明らかにするとともに、書芸術の誕生や、メディアの変容による古代の終焉までを見通した、大変貴重でスリリングな研究です。
目次
緒 言
第Ⅰ編 簡牘の形態と機能——視覚簡牘への展望
第一章 簡牘の時代とその終焉
はじめに
一 論語の錯簡
錯簡はいつ生じたのか
二 韋編三絶
(1)韋編とはなめし革か?
(2)「韋編三絶」の意味の変遷
小 結——青絲・青嚢から青帙・青紙へ
第二章 視覚簡牘の誕生——簡の長さについての一考察
一 簡牘の長さの概観
二 尺一詔の始まり
三 三尺之律
四 経書の長さ
小 結
第三章 檄書攷——視覚簡牘の展開
はじめに
一 檄の考察——「卅井關守丞匡檄」
二 檄と検
三 檄とは何か——その機能と効果
(1)印について
(2)「日時在檢中」の意味
(3)露布の効果
四 もう一つの檄——掲示の檄
(1)候史廣德行罰檄
(2)玉門花海出土皇帝遺詔
(3)多面体急就篇
小 結
第Ⅱ編 書記とその周辺
第一章 書記官への道——漢代下級役人の文字習得
はじめに
一 江陵張家山二四七号墓出土漢律令の史律
二 「史」と「不史」、「能書會計」
三 文書の傳達
四 扁書と諷誦——文書行政と口頭傳達
(1)「扁書」とは
(2)行政文書の最終地点
五 『急就篇』と『千字文』
小 結
第二章 書体・書法・書芸術——行政文書が生み出した書芸術
はじめに——書芸術の成立条件
一 書体の名称——隷書・草書・楷書
二 木簡が語る書法と習書
(1)懸針と波磔
(2)習書簡
(3)木簡に見える草書
三 行政文書から書芸術へ
小 結
第三章 行政文書の書式・常套句
はじめに
一 書き止め文言
(1)「如律令」
(2)「毌以它爲解」「毌忽」「以急疾爲故」
(3)「有書」「有敎」
二 文書送達と慣用文言
(1)検面表記と逓傳
(2)行者走・吏馬馳行・馬馳行など
(3)「發」について
三 自筆署名と副本作成
小 結
第Ⅲ編 漢代行政制度考証
第一章 漢代の地方行政——-漢簡に見える亭の分析
はじめに
一 辺境出土簡に見える「亭」
(1)「亭」「亭燧」「郵亭」等の語義
(2)エチナ川流域の亭の実態と機能
(3)辺境の郵亭——以郵行・以亭行
二 地方行政制度における亭制
(1)尹湾出土簡および文献史料からの考察
(2)郷・亭・里制度再考——「十里一亭」をめぐって
小 結
第二章 通行行政——通行証と関所
はじめに
一 文献史料に見える「傳」とその注釈
二 簡牘資料に見える「傳」——辺境出土木簡を中心にして
(1)申請手続き
(2)「傳」の書式
(3)傳の送達
(4)傳と符・致
三 漢代の関所——とくに辺境を中心として
(1)肩水金関出土木簡の分析
(2)居延県索関
(3)玉門関の所在をめぐって
小 結
第三章 食糧支給とその管理——漢代穀倉制度考証
はじめに
一 居延地方の穀物倉
(1)倉の種類と配置
(2)倉官
(3)倉の管理
二 食糧支給の実態
(1)支給額
(2)大石と小石
(3)支給対象
(4)簿籍
三 睡虎地秦律の穀倉
(1)倉律・效律の二・三の条文
(2)倉律(88~94簡)の解釈
小 結
結 論