現代イスラーム金融論
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-8158-0658-3 C3033
奥付の初版発行年月:2011年01月
グローバル化するイスラーム金融の、初の本格的研究 —— 。金融システムや金融手法の今日的展開をふまえ、イスラーム金融の実践を世界観ごと外部から理解可能なロジックで分析。利子と利得の基準、流動性問題への対応、不確実性の扱い方などを通して、根底にある志向を把握し、近代資本主義との関係でその現代性を明らかにするとともに、経済史的な普遍性をも指し示す。
目次
序 章 現代イスラーム金融論にむけて
1. 拡大するイスラーム金融
2. 現代イスラーム金融論とは何か
2-1. 近代イスラーム経済学を乗り越える
2-2. 現代イスラーム金融論の視座と方法
3. 本書について
3-1. 構 成
3-2. 利用資料
3-3. 用 語
第1章 イスラーム金融の展開と金融システム
1. イスラーム金融の展開
1-1. イスラーム金融の先駆け (1960年代)
1-2. 商業展開のはじまり (1970年代)
1-3. 国際展開と金融システムのイスラーム化 (1980年代前半)
1-4. 試練の時代 (1980年代後半~1990年代初め)
1-5. 飛躍に向けたインフラの整備 (1990年代)
1-6. グローバル化するイスラーム金融 (2000年代)
2. イスラーム金融システムと金融手法
2-1. ムダーラバ
2-2. ムシャーラカ
2-3. ムラーバハ
2-4. イジャーラ
2-5. サラムとイスティスナーウ
2-6. カルド・ハサン
2-7. ワディーア
第2章 リバー論の系譜
1. はじめに
2. 近代以前のリバー論
2-1. クルアーンにおけるリバー
2-2. スンナ派イスラーム法学におけるリバー概念の典拠
2-3. スンナ派イスラーム法学におけるリバー論
2-4. シーア派イスラーム法学におけるリバー論
3. リバー概念の経済学
3-1. リバー概念の体系化の目的
3-2. リバー概念のネガティヴ・インパクト
3-3. リバー概念のポジティヴ・インパクト
4. 近代におけるリバー論の展開
4-1. リバー概念と利子の邂逅
4-2. リバー限定論におけるリバー概念と利子
4-3. 利子=リバー論におけるリバー概念と利子
5. おわりに
第3章 近代イスラーム経済学の展開
1. はじめに
2. 近代イスラーム経済学とは何か
2-1. イスラームにおける「宗教」と「経済」
2-2. イスラーム経済学の方法論的特色
3. 近代イスラーム経済学のダイナミズム
3-1. 近代イスラーム経済学の形成
3-2. 近代イスラーム経済学の成立
3-3. イスラーム金融の理念と現実をめぐるダイナミズム
4. 近代イスラーム経済学の新展開
4-1. 高度化・複雑化するイスラーム金融
4-2. 「シャリーア・コンプライアンス」批判がひらく新地平
4-3. 近代イスラーム経済学のコペルニクス的転回?
5. おわりに
第4章 「認められる利得」と「禁じられる利子」のあいだ
1. はじめに
2. ムラーバハにおける利得と利子
2-1. イスラーム銀行と「ムラーバハ・シンドローム」
2-2. ムラーバハのイスラーム法学上の争点
2-3. ムラーバハにおけるマークアップとリバー
3. 初期スクークにおける利得と利子
3-1. 初期スクークと「バイウ・ダイン」の問題
3-2. 「バイウ・ダイン」とリバー
4. 「利得」と「利子」の分水嶺
5. おわりに
第5章 流動性問題はいかに解かれてきたか
1. はじめに
2. イスラーム金融に固有の流動性問題
3. 二極時代の流動性手法の地域的多様性 (1990年代まで)
3-1. マレーシアの取り組み : 金融機関の流動性管理手法の場合
3-2. マレーシアの取り組み : 顧客への流動性提供手法の場合
3-3. バイウ・イーナのレジティマシーをめぐる地域間論争
4. グローバル化時代の新展開 (2000年代)
4-1. コモディティ・ムラーバハとタワッルクの登場
4-2. マレーシアの世界戦略とコモディティ・ムラーバハとタワッルクの台頭
4-3. タワッルクのレジティマシーをめぐる超地域論争
5. おわりに
第6章 偶然を飼い馴らす : ガラル概念と不確実性
1. はじめに
2. ガラル論の系譜
2-1. 典拠とガラル概念
2-2. 近代以前のイスラーム法学におけるガラル概念
3. イスラーム金融とガラル概念
3-1. 保険商品をめぐる現代ガラル論の展開
3-2. 金融派生商品とガラル概念
4. 不確実性とガラル概念
4-1. ガラル概念の経済学
4-2. ムダーラバからみたガラル概念
5. おわりに
第7章 歴史のなかのイスラーム金融
1. はじめに
2. イスラームにおける独自の金融システム観
2-1. 金融手法の是非をめぐる議論の枠組み
2-2. 実物経済に埋め込まれた金融システム
3. イスラーム金融からの金融史再考
3-1. 近代以前のイスラーム世界の金融システム
3-2. 金融システムの「大いなる分岐」
4. イスラーム金融と現代
4-1. イスラーム金融システムの現在的意匠
4-2. 世界経済のなかのイスラーム金融
4-3. イスラーム金融の安定性再考
5. おわりに
略称・通称一覧
イスラーム金融で主に用いられるアラビア語用語一覧・表記対照表