水の環境学 人との関わりから考える
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-8158-0675-0 C3051
奥付の初版発行年月:2011年08月
人間にとって不可欠であるとともに、時にはその猛威に脅かされることもある水は、さまざまな形で新たな課題を生み出している。本書は、地球水循環などの自然科学的領域から、上下水道などの技術的領域、そして水利権運用などの社会的領域へと、三つの領域を貫く明確な視点より、水を体系的に把握する。
目次
第Ⅰ部 自然的観点から
第1章 地球表層の水循環
1.1 地球の水の起源
1.2 水の性質
1.3 地球上の水の量と循環
1.4 大気の温度構造と対流
1.5 降 水
第2章 水循環システムとしてのアジアモンスーンとその変動
2.1 はじめに
2.2 アジアモンスーンとは
2.3 アジアモンスーンの年々変動はどう決まっているか?
2.4 人間活動でアジアモンスーンはどう変化するか?
2.5 変わりつつあるアジアの雨の降り方
コラム : ヒマラヤの氷河湖
第3章 東アジアの降水活動と特徴
3.1 東アジアの降水活動を見る意義
3.2 雨のでき方
3.3 梅雨前線帯の降雨
3.4 梅雨前線周辺の降水システムの構成要素
3.5 豪 雨
3.6 豪雨の降水システムの観測例
3.7 マルチパラメーターレーダー
3.8 降雨の短時間予測
3.9 将来の降水の変動に備えて
第4章 沿岸域の水・物質循環
4.1 はじめに
4.2 沿岸域での物質輸送過程
4.3 沿岸域の流れ
4.4 沿岸域の環境問題
コラム : 伊勢湾の水の流れ
第5章 森林と水循環
5.1 はじめに
5.2 森林流域における水循環
5.3 森林管理・整備が水流出に及ぼす影響
5.4 森林流域の水貯留量
5.5 間伐が遮断蒸発量に及ぼす影響
5.6 樹冠構造の変化に伴う林床面蒸発の動態
第6章 地下水の脆弱性と持続可能性
6.1 地下水の形態と物理・化学
6.2 世界の帯水層と地下水
6.3 日本の帯水層と地下水
6.4 浅層地下水の水質の時空間変化と脆弱性の評価
コラム : タイガ-永久凍土の共生関係
第Ⅱ部 技術的観点から
第7章 治水・利水と河川生態系 —— 河川を軸とした流域管理 ——
7.1 水文循環と流域・流域圏
7.2 河川の整備と管理
7.3 安全な流域への水災対応
7.4 流域水循環と水資源利用
7.5 河川水系・流域の環境保全
コラム : 「多自然」 と 「近自然」 —— 河川の自然修復に関する取組み ——
第8章 水資源管理
8.1 水資源の量と質
8.2 水資源管理の理念と手法
8.3 黄河に見る水資源管理
8.4 水資源管理の将来
第9章 農業と水循環システム
9.1 農業生産と水利用
9.2 灌漑排水と地域の水循環
9.3 乾燥地の灌漑農業と水利用
9.4 水田農業と水利用
コラム : バーチャルウォーター
第10章 水循環を考慮した都市デザイン
10.1 雨水流出と土地利用
10.2 伊勢湾流域圏の土地利用と雨水流出
10.3 名古屋市東部丘陵と境川の土地利用と雨水流出
10.4 総合治水概念の都市計画、国土計画への反映
10.5 水循環を考慮したグリーンインフラストラクチャーの構築
10.6 水循環を基軸とするグリーンインフラストラクチャーの構築に向けて
第11章 水環境エコシステムの構築
11.1 上水道
11.2 下水道
11.3 汚泥処理
11.4 産業排水処理
コラム : 水質の指標
第Ⅲ部 社会的観点から
第12章 水利と水災害の歴史
12.1 はじめに
12.2 水利の歴史
12.3 洪水常襲地
12.4 歴史地理学を洪水対策に活かす
コラム : 都市における豪雨災害
コラム : 湧水について
第13章 水利権と河川の管理
13.1 水利用の歴史
13.2 水利権の内容
13.3 水利権の分類
13.4 水利使用の申請手続き
13.5 水利使用許可の判断基準
13.6 水利権の運用と新たな動き
第14章 河川の公共性 —— 水はだれのものか ——
14.1 社会学からの 「水の環境学」
14.2 自然の所有をめぐって
14.3 近代河川行政の成立
14.4 戦後の河川行政
14.5 河川行政の転換
14.6 新しい公共性の形成へ
コラム : ウォータービジネス
第15章 これからの水環境政策 —— 再生への取組み ——
15.1 水質から水環境へ
15.2 知多半島に見る水環境への 「圧力」 の変遷
15.3 水環境政策の発展段階
15.4 水環境の再生への道