老年と正義 西洋古代思想にみる老年の哲学
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-0676-7 C3010
奥付の初版発行年月:2011年10月
老年論の原点 —— 。老年とはたんに福祉の対象なのか。人生の最終章をむかえ、あらためてよく生きることを考え、実践すべき時ではないのか。老人は政治にも参与すべきか。西洋古代思想にさかのぼり、見失われた正義という観点から、老年を内面から支える精神的基盤を問い直す注目の書。
目次
序 章 「老いは険しい道か、楽しい道か」
プラトン 『国家』 の問い
プラトン、キケロ、プルタルコス
アリストテレスの老年観
第1章 西洋古代世界における老年像
1 西洋古代文学における多様な老年像
西洋古代世界では老年は何歳からはじまるのか
文学のなかの多様な老年像
2 ホメロス世界の老年像 —— 老賢者の理想とポスト英雄時代
老賢者の理想像 —— ネストル
ポスト英雄時代の老年像 —— オデュッセウスの帰還
ティトノスの物語 —— 永続する老年
3 ヘシオドス —— 人間の成熟と老後の世話
五時代説話のなかのヒュブリスと成熟
『仕事と日』 と 『国家』 の密接な関係
老いた両親を養う責務 (ゲーロトロポス)
ピエタースへ
4 悲劇における老年 —– 悲観的な老年像の支配とその超克
老いたオイディプスの最期
老年の嘆きと生への執着
5 喜劇のなかの老年 —— 世代間の争い
周縁化された老人たちの反逆
年長の女性の役割
伝統的価値の 「復権」 ?
古喜劇から新喜劇へ —— 政治性を失った老年像の拡大
第2章 文学から哲学へ —— プラトンとアリストテレスの老年観
1 プラトンの老年論と自然学的理論 —— 『ティマイオス』
プラトン 『ティマイオス』 のコスモロジーの骨格
幾何学的アトミズムの導入
生命活動の源としての髄の重要性と老化のプロセス
老年と病気の区別
身体と精神の運動と調和
2 アリストテレスの老年論と自然学的理論 —— 『自然学小論集』
「冷」 と 「乾燥」 —— 老化の二つの原理
生得的な生命熱とは
生命熱と知的能力
老年と病気
二つの自然学的理論から帰結すること
3 プラトンとアリストテレスの老年論の比較
ボーヴォワールへの批判
プラトンの 「老年」 の自然学的理論と心身の衰弱
晩学 (オプシマティアー) についてのプラトンの見解
アリストテレスの 「老年」 の自然学的理論と老年の心身の衰弱
老年を示す用語の異なる用法
アリストテレスの老年論のスコープ
アリストテレスの 『弁論術』 の老年像
老人の政治的・社会的位置づけは同じか
プラトン 『法律』 における国家の要職者の年齢規定
老人たちの歌舞団 (コロス)
老いた両親への態度
心身観の相違に根ざした差異
第3章 ヘレニズム・ローマ期の老年像の変遷 —— 晩年の理想と現実
1 プラトンの老年論の系譜 —— キケロの 「悦ばしい老年」
キケロの生涯
著作の意図と作品の設定
老年をめぐる四つの誤解とその反論
「元老院 (セナートゥス)」
「公の活動」 と 「世代間倫理」
肉体と肉体的快楽の衰え
死の近さと魂の不死の教説
老年と成熟
2 プルタルコスと老人の政治参加
中期プラトニスト
『老人は政治に参与するべきか』
老年を理由に公的生活から引退すべきでないこと
老年に適切な仕事と若者への教育的役割
日常のなかの政治と哲学
キケロとプルタルコスの老年論の比較
プルタルコスの老年論の意図
晩年の理想としての閑暇 —— スプリンナの一日
3 セネカ —— 閑暇の意義
『閑暇について』
『人生の短さについて』
オーティウムとスコレーと観想
老年と自殺
4 エピクロス派の老年論
古代原子論のなかの老年
ルクレティウス 『事物の本性について』 の老年論
魂の老化と死の恐れ
エピクロス派への批判
終 章 西洋古代思想における老年と正義
ガレノスの老年論
精神の競技の判定者としての老年