開発経済学と現代中国
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8158-0710-8 C3033
奥付の初版発行年月:2012年09月
中国は開発経済学で解けるのか —— 。未曾有の変貌をとげる現代中国を、社会科学の実験場とみなし、開発経済学のさまざまなモデルや仮説を準拠枠として、その 「発展」 の軌跡を検証する。はたして 「中国モデル」 は存在するのか。第一人者による透徹した中国経済論。
目次
序 章 中国経済の捉え方: 開発経済学的枠組みと視座
はじめに
1.経済発展または開発: 基本的概念と分析枠組み
2.時期区分: 改革開放以前と以後
3.実験場としての中国
4.本書における開発モデル
5.準拠枠としてのモデルと仮説
6.実証方法について
補論1 現代中国経済略史: 開発戦略の変遷過程
第1章 初期条件と歴史的文化的特性
はじめに
1.ガーシェンクロンの 「後進性の優位」 仮説
2.制度の形成と進化: ノースの 「経路依存性」 論と速水の 「誘発的制度革新」 論
3.2つの歴史的遺産: 1949年と1978年
4.歴史的視野から見た現代中国の経済発展: 市場経済の発展
5.文化論: ウェーバーの 「儒教論」 はなぜ間違っていたのか
第2章 成長モデルと構造変化
はじめに
1.ハロッド=ドーマー・モデル
2.貯蓄率と成長: ロストウの段階論、中国の高貯蓄
3.重工業化モデル: マハラノビス・モデルとフェリトマン=ドーマー・モデル
4.成長会計モデルとチェネリーの標準パターン論: 中国への適用
5.ペティ=クラークの法則、ホフマン法則と中国
6.不均整成長論、ビッグプッシュ・モデルと計画経済
7.内生的成長論と経済発展
補論2 グレンジャーの因果分析
補論3 重工業と軽工業
第3章 ルイス・モデルと中国の転換点
はじめに
1.転換点論争
2.ルイス・モデルとレニス=フェイ・モデル
3.過剰労働論再考: ヌルクセ型偽装失業とルイス型過剰労働
4.日本、台湾、韓国における経験と中国
5.都市農村分断と転換点
6.郷鎮企業モデル
7.ハリス=トダロ・モデルと中国における労働移動: 盲流から民工潮へ
8.開発と都市化
第4章 外向型発展モデルと中国
はじめに
1.2つの開発戦略: 輸入代替と輸出主導
2.貿易と交易条件: プレビッシュ=シンガー命題を中心に
3.中国の貿易政策: 貿易の自由化とWTO加盟
4.中国の新たな貿易レジーム: 特区と加工貿易
5.外国直接投資の役割と決定要因
6.成長、貿易、FDI のダイナミックス
7.外資に対する評価
第5章 雁行形態論・キャッチアップ型工業化論とその限界
はじめに
1.雁行形態の3類型
2.アジアの経験: 第1次輸入代替から第2次輸出代替へ
3.雁行形態論と産業・技術の国際的伝播
4.特化係数やRCA指数から見た雁行形態モデルと中国
5.輸出財の技術集約度
6.中国に 「雁行形態モデル」 は妥当するか
7.キャッチアップ型工業化論の限界
第6章 人口転換と人口ボーナス
はじめに
1.人口と経済発展: マルサスの罠と低水準均衡の罠
2.人口転換とは
3.中国の人口構造の推移と特色
4.人口ボーナスとは
5.中国における人口ボーナス論
6.高齢化が中国にもたらすもの
7.人口規模と経済発展: 中国の経験
第7章 分配と貧困
はじめに
1.クズネッツ仮説とその妥当性
2.中国における格差の構造と推移
3.格差の決定因
4.ウィリアムソン仮説と地域格差拡大・縮小のメカニズム
5.中国における貧困水準の動きと貧困の構造
6.格差と貧困をめぐるいくつかの問題
補論4 ワハカ=ブラインダー (OB) 分解
第8章 人的資本と教育
はじめに
1.シュルツとベッカーの人的資本論
2.教育のミンサー型収益率
3.中国における人的資本の蓄積
4.中国における教育の収益率とその効果
5.教育の収益率のダイナミックス
第9章 環境クズネッツ曲線と中国の環境問題
はじめに
1.環境と経済発展
2.環境クズネッツ曲線
3.中国の経済発展と環境クズネッツ曲線
4.中国における環境政策の変遷
5.国際環境問題と中国の主張
第10章 開発独裁モデル: 中国における政府と市場の関係
はじめに
1.開発独裁とは、開発主義とは
2.開発における国家・政府と市場
3.東アジアにおける経験: アムスデンと村上泰亮
4.中国の特殊性: 共産党と国民党の比較
5.政治体制と成長: 民主主義、独裁と成長
6.「開発」 の意味論: センの 「自由としての開発」 論と中国
終 章 中国の開発経験をどう見るか
はじめに
1.中国の開発経験: その開発経済学への貢献と示唆
2.市場創生のダイナミズムと技術吸収
3.「中国モデル」 再考
4.「調和の取れた社会」、「科学的発展観」 と開発論
5.「中所得 (国) の罠」 を超えて