赦すことと罰すること 恩赦のフランス法制史
価格:7,040円 (消費税:640円)
ISBN978-4-8158-0790-0 C3032
奥付の初版発行年月:2014年12月
権力は恩赦に宿る ——。古代・中世から絶対王政・フランス革命を経て共和制期にいたるまで、政体の如何を問わず実質的に存続した恩赦。「主権の証」 とも見なされるその権利は、各時代の諸勢力とどのような関係を結んでいたのか。法制・思想・実態の三つの視点から恩赦の歴史をトータルに跡づけ、刑罰中心の権力観を刷新する意欲作。
目次
序 章 なぜ恩赦のフランス法制史か
(1) 恩赦は前近代的で君主制的なものか
(2) 恩赦と大赦
(3) 恩赦の研究史
(4) 本書の課題と構成
第1章 権力の形成と恩赦 —— 古代ローマから中世へ
(1) ローマ帝権の確立と 「恩赦権」 の誕生
(2) 中世における権力の競合と恩赦
(3) 正義と慈悲
第2章 すべての慈悲は王より来る
1 後期中世から近世にかけての王権の伸長と恩赦
(1) 王令による恩赦権の独占
(2) 恩赦権を与える国王
(3) 恩赦による民衆の 「臣民化」
(4) 条件付きの赦し
(5) 国王によらない恩赦
2 「神の赦し」 から 「王の恩赦」 へ
(1) 赦しの華々しさ
(2) 国王即位時の監獄開放
(3) 絶対王政の理論と恩赦 —— ボダン、ル・ブレ、ホッブズ
3 立法化された恩赦
(1) 1670年刑事王令における恩赦制度
(2) 恩赦獲得までの手続き
第3章 衰退する王権とゆさぶられる恩赦
1 社会の変化と恩赦
(1) 嘆願の傾向の変化
(2) 民衆による恩赦権の簒奪
(3) 国王への 「悪しき言説」 と恩赦
2 王権に抵抗するパルルマン法院
(1) 裁判権と恩赦権
(2) ラモワニョンの改革における恩赦
3 恩赦不要・廃止論とイデオロギー
(1) 恩赦不要・廃止論の登場
(2) 諸言説の交錯
第4章 共和制の成立と恩赦
1 恩赦の廃止
(1) 1789年の三部会における恩赦
(2) 1791年刑法典による恩赦の廃止
(3) 恩赦の廃止と王権の停止
(4) 「国王への恩赦」
(5) 「人民の恩赦」 から 「議会の恩赦」 へ
(6) フランス革命期の恩赦状
2 新たな秩序の誕生と大赦
(1) 革命議会による大赦
(2) 革命を終わらせるための大赦とその失敗
(3) 立法府の大赦権
(4) ボナパルト体制の成立と赦し
3 恩赦の復活
(1) 恩赦復活の企て
(2) 恩赦の復活
(3) ナポレオンによる恩赦と恩赦状
(4) 恩赦と君主制 —— コンスタンとメーストル
第5章 政体の変遷と恩赦
1 近代法における恩赦
(1) 憲法に規定される恩赦権
(2) 19世紀後半の恩赦制度
2 恩赦を取り巻く思想の変遷
(1) 19世紀における恩赦と大赦
(2) 刑事政策としての恩赦
(3) 恩赦不要・廃止論の再登場
3 近代における赦し
(1) 恩赦の統計化
(2) 刑法改革と恩赦
(3) 共和制と赦し
終 章