日本の産業教育 歴史からの展望
価格:6,050円 (消費税:550円)
ISBN978-4-8158-0840-2 C3037
奥付の初版発行年月:2016年06月 / 発売日:2016年07月上旬
「実践的で役に立つ」 教育を、歴史の中から問い直す ——。西洋に範を取ることから始まった近代産業教育の歩みを、女子教育や地方の観点も含め一望。とりわけ教育家の思想や実践に着目し、学校の果たしてきた役割に光を当てる。現代の産業社会が抱える教育課題の解決のために必読の書。
三好 信浩(ミヨシ ノブヒロ)
1932年生。広島大学教育学部教授などを経て、現在同大学名誉教授。著書に、『産業教育史学研究』(全13 冊、風間書房、1979-2012)、『明治のエンジニア教育』(中公新書)、『商売往来の世界』(NHK ブックス)など多数。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 産業教育学へのプレリュード
1 先行研究の到達点
2 歴史に潜む教育の論理
3 産業の領域
4 学校の対応
5 学校への期待 (その一) —— 学理と実地の結合
6 学校への期待 (その二) —— 産業と道徳の結合
第1章 伝統社会における人間と産業
1 恒産恒心の思想
2 一人前への願望
3 勤勉倹約のすすめ
4 家業出精のすすめ
5 自修自得のすすめ
6 開物成務の施策
第2章 近代産業教育の国際関係
1 産業教育成立の外交事情
2 イギリスモデルの受容
3 フランスモデルの受容
4 アメリカモデルの受容
5 ドイツモデルの受容
6 採長補短の国選び
7 東洋のイギリスから東洋のドイツへ
8 日本の自立化
第3章 産業国家の教育戦略
1 政治課題としての富国強兵
2 学校の創設と学政の一元化
3 民業育成策と商業界の呼応
4 第一次大戦後の対応策
5 アジア問題と産業教育施策
6 第二次大戦下の緊急施策
7 アメリカの占領教育政策
第4章 近代産業の啓蒙と教育
1 産業啓蒙の時代
2 産業啓蒙書の出版状況
3 工業分野の啓蒙
4 農業分野の啓蒙
5 商業分野の啓蒙
6 一般勧業分野の啓蒙
7 お雇い外国人による啓蒙
8 産業啓蒙と学校教育の相乗効果
第5章 戦前期工業教育の思想と実践
1 幕末期佐賀藩の先駆的企図
2 ダイアーのエンジニア教育論とその人脈
3 ワグネルの工芸教育論とその人脈
4 手島精一の工業教育論
5 蔵前系譜の工業教育家
6 工業教育機関の発達
7 特色ある学校事例
8 第二次大戦末期の大拡張
第6章 戦前期農業教育の思想と実践
1 大蔵永常の農書に見る江戸期農業の到達点
2 農業の人づくり政策
3 横井時敬の農業教育論
4 駒場系譜の農業教育家
5 札幌系譜の農業教育家
6 農業教育機関の発達
7 特色ある学校事例
8 第二次大戦末期の改編
第7章 戦前期商業教育の思想と実践
1 『商売往来』 に見る近世と近代
2 交易の振興と商権の回復
3 商法講習所の創立と商業学校への発展
4 東京高等商業学校と東京帝国大学の確執
5 一橋系譜の商業教育家
6 商業教育機関の発達
7 特色ある学校事例
8 第二次大戦末期の大縮小
第8章 戦前期産業社会の女性役割
1 日本歴史の中の働く女性
2 洋式蚕糸業の伝習と教育
3 良妻賢母論の諸相
4 女性の職業案内書と女子職業学校
5 女子の商業教育
6 女子の農業教育
7 両世界大戦の影響関係
8 隠れた女性役割
第9章 戦前期産業教育の地域実態
1 高等教育機関の地域配置
2 中等教育機関の地域特性
3 地域間格差の発生要因
4 総合的に見た産業教育の先進地愛知県
5 工業教育の先進地福岡県
6 農業教育の先進地長野県
7 商業教育の先進地兵庫県
第10章 現代産業社会の教育課題
1 戦後改革の推移
2 戦後の難題 (その一) —— 教養教育と専門教育の関係
3 戦後の難題 (その二) —— 学校教育と職業訓練の関係
4 解決の方策 (その一) —— 世界を見る
5 解決の方策 (その二) —— 現状を見る
6 提言 (その一) —— 日本教育の歴史を再検討する
7 提言 (その二) —— 学校の果たした役割を再評価する
8 提言 (その三) —— ダイアーの残した遺産を再考する