訴える人びと イタリア中世都市の司法と政治
価格:11,000円 (消費税:1,000円)
ISBN978-4-8158-0851-8 C3022
奥付の初版発行年月:2016年10月 / 発売日:2016年10月下旬
ネッロに地代の支払いを求めたチェッコーロ、重税の免除を願い出たヤコポ、ジョヴァンニ、トゥーリ……。私的な利害に突き動かされて法廷に立つ市井の人びとが、その訴えを通して秩序に息を吹き込み、正義と公共善の結びあいを絶えず更新していく動態を、未踏査の裁判記録から明らかにする。
目次
序 章
第Ⅰ部 イタリア都市の司法と政治
第1章 コムーネと司法 —— 12世紀~14世紀
1 コムーネ研究、司法研究の現在
2 コンスル期 —— 形成期の司法 (12世紀)
3 ポデスタ期 —— 公的司法の成立 (13世紀前半)
4 ポポロ期 —— 糾問主義裁判と政治 (13世紀後半)
5 寡頭的共和制期、シニョリーア制期 —— 自由裁量の 「正義」 (14世紀)
6 コムーネの動態像を捉えるために
第2章 ルッカを見る —— 政治、行政、司法、社会
1 ルッカ史概観
2 統治制度
3 司法制度
4 公証人と公証人契約
5 土地所有構造
6 共和制イタリア都市ルッカ
第3章 史料と史料論
1 史料論の視角
2 作成現場の諸相 —— 史料の形式と内容
3 保存への試み —— ルッカの文書庫
4 利用と機能
5 史料論から見るコムーネ
第Ⅱ部 住民がつくるコムーネと正義 —— 民事司法
第4章 人びとはなぜ法廷に向かったのか
1 法廷の利用規模
2 裁判の内容
3 仲裁と裁判外紛争解決
4 司法命令に見るコムーネ
5 社会のなかのコムーネ
第5章 訴えによるコムーネの実現
1 コムーネと住民の相互関係
2 法廷での 「異議」
3 執政府に声を上げる
4 訴えの創造力
第6章 司法原理の転換 —— 法形式の遵守から自由裁量へ
1 14世紀における民事裁判の変化
2 判定の主体と質の変化
3 中世ローマ法世界における司法原理の転換
4 地域の法学者の衰退
5 訴訟当事者の 「異議」 と裁判官の 「裁判進行上の自由裁量」
6 ドージェと 「略式裁判」
7 コムーネによる民事的法世界の専有
第Ⅲ部 政治のなかのコムーネと正義 ——刑事司法
第7章 刑事司法の実態
1 刑事司法の確立
2 法廷に持ち込まれる 「悪事」 の数
3 「悪事」 の内容
4 審理と証明
5 判 決
6 判決後の展開
7 刑事司法とコムーネ
第8章 恩赦に見るコムーネと正義
1 恩赦とコムーネ
2 外国人領主による大赦
3 ピサ支配下の個別恩赦
4 共和国時代の恩赦禁止令
5 共和制ルッカの恩赦
第9章 例外的司法に見るコムーネと正義
1 例外的司法とコムーネ
2 保護長スケラットの財産返還訴訟
3 バルジェッロによる領域の治安維持
4 共和国時代のポデスタとアンツィアーニ
5 1392年体制とカピターノ・デル・ポポロ
6 例外的司法と政治の拡大
終 章 訴える人びとがつくる世界