農の科学史 イギリス「所領知」の革新と制度化
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-0853-2 C3061
奥付の初版発行年月:2016年11月 / 発売日:2016年11月下旬
ローカルな知は科学となるのか ——。農業は古来、多くの地域で主要産業であった。工業化が進む中、諸科学と葛藤しつつ 「農学」 を成立させていく多元的な知と制度の展開を、啓蒙時代から20世紀まで、イギリス社会の文脈で描く。科学史と農業史を架橋し、間文化的な示唆を与える労作。
並松 信久(ナミマツ ノブヒサ)
1952年生まれ
1981年 京都大学大学院農学研究科単位取得満期退学
京都産業大学国土利用開発研究所教授などを経て
現 在 京都産業大学経済学部教授
著 書 『現代に生きる日本の農業思想―安藤昌益から新渡戸稲造まで』
(王秀文・三浦忠司共著,ミネルヴァ書房,2016年)
『近代日本の農業政策論―地域の自立を唱えた先人たち』
(昭和堂,2012年)
『報徳思想と近代京都』(昭和堂,2010年)他
目次
序 章
1 問題の所在
2 目的と課題
第Ⅰ部 観察・啓蒙の時代 —— 18世紀末期
第1章 農業改良調査会の設立と展開
1 農業改良と情報収集
2 農業改良調査会の設立
3 農業改良調査会と王立研究所
4 おわりに —— 調査・実験主体の課題
第2章 スコットランドの農業研究 —— 諸科学との関係
1 農業化学の萌芽
2 化学の進展と農業改良
3 高等農業教育の萌芽
4 農業講座の創設
5 おわりに —— 独立科学の端緒
第Ⅱ部 土地管理人と農業試験の時代 —— 19世紀前中期
第3章 農業知識と土地管理人の役割
1 土地差配人の役割
2 土地管理人と農業知識
3 土地管理人と科学的な農業
4 おわりに —— 所領知の担い手
第4章 所領経営と農業
1 所領経営と投資行動
2 所領経営と借地契約
3 おわりに —— 所領経済学の萌芽
第5章 農業試験と諸制度の形成
1 農業試験と実験の展開
2 化学と圃場試験
3 科学的な農業と農業協会
4 おわりに —— 農業技術と諸制度
第6章 農業化学と試験研究の展開
1 農業協会と実験
2 実験概念の変化とリービヒの影響
3 農業研究と担い手の変容
4 おわりに —— 農業研究の方向性
第Ⅲ部 法則化と制度化の模索時代 —— 19世紀後期
第7章 農業の展開と技術研究
1 農業技術の変化
2 技術教育の対応
3 おわりに —— 技術と科学
第8章 農業研究の進展
1 研究の展開と目的
2 研究に対する評価
3 研究をめぐる政府と農民の動向
4 研究体制の拡大
5 おわりに —— 農業研究の連続性
第9章 王立農業カレッジの模索
1 カレッジの設立
2 学内運営と問題点
3 教育と研究体制の問題
4 研究・教育体制の維持と政府助成
5 組織再編と新体制
6 おわりに —— 高等農業教育の模索
第Ⅳ部 農業科学政策による制度化の時代 —— 20世紀初頭
第10章 農業研究・教育体制とカレッジ・大学
1 サウスイースタン農業カレッジの設立
2 ケンブリッジ大学の理論研究
3 レディングのユニヴァーシティカレッジと品種改良
4 おわりに —— 大学における農学
第11章 農業科学政策と研究・教育体制
1 科学研究の政治的背景
2 ロイド・ジョージと開発法の成立
3 開発委員会の設置
4 おわりに —— 農業研究と国家助成
第12章 農学と研究機関
1 開発委員会と農務省の論争
2 ロザムステッドとレディング
3 研究目的と研究機関
4 おわりに —— 農学と研究体制の関連性
第Ⅴ部 プロフェッションと国際化の時代 —— 20世紀前期
第13章 農業経済学とプロフェッションの誕生
1 農業経済への関心
2 農業経済プロフェッションの誕生
3 農業経済アドバイザーの役割
4 農業経済学としての展開
5 農業経済学会の設立
6 おわりに —— 農業経済学の課題
第14章 農業経済プロフェッションと国際化
1 国際化への端緒
2 国際農業経済学会の研究動向
3 農業行政とプロフェッション
4 プロフェッションの変容
5 おわりに —— プロフェッションの課題
終 章