道教経典の形成と仏教
価格:10,780円 (消費税:980円)
ISBN978-4-8158-0885-3 C3014
奥付の初版発行年月:2017年10月 / 発売日:2017年10月上旬
大宗教への飛躍と確立――。仏教伝来のインパクトを受け体系化する道教。中国固有の思想との相克のなか、融合はいかになされたのか。霊宝経から坐忘論まで、生み出された経典・儀礼・聖像等を通して、六朝隋唐時代におけるダイナミックな展開を描き出す労作。
神塚 淑子(カミツカ ヨシコ)
1953年、兵庫県に生まれる。現在、名古屋大学大学院人文学研究科教授。専門は中国思想。著書に『六朝道教思想の研究』(創文社,1999年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章
1 問題の所在
2 先行研究
3 本書の構成
第一篇 霊宝経の形成とその思想
第1章 霊宝経と初期江南仏教
—— 因果応報思想を中心に
はじめに
1 霊宝経の因果応報・輪廻転生の思想
2 霊宝経と支謙・康僧会の訳経
3 霊宝経と六朝小説
第2章 霊宝経における経典神聖化の論理
—— 元始旧経の 「開劫度人」 説をめぐって
はじめに
1 「元始旧経」 の構想と 「開劫度人」 説
2 上清経から霊宝経へ —— 『元始五老赤書玉篇真文天書経』
3 「出法度人」 と阿丘曽の物語 —— 『太上洞玄霊宝赤書玉訣妙経』
4 「開劫度人」 説と死者救済 —— 『太上霊宝諸天内音自然玉字』
5 天尊の 「過去」 と斎戒 —— 『太上洞玄霊宝智慧罪根上品大戒経』 と 『太上諸天霊書
度命妙経』
おわりに
第3章 霊宝経に見える葛仙公
—— 新経の成立をめぐって
はじめに
1 霊宝経の伝授の系譜
2 太極真人から葛仙公への伝授
3 葛仙公の 「本行因縁」
4 仙公と天師張道陵と青童君
5 葛仙公から鄭思遠への言葉
おわりに
第4章 六朝道教と 『荘子』
—— 『真誥』・霊宝経・陸修静
はじめに
1 上清派道教の形成と 『荘子』
2 霊宝経と 『荘子』
3 陸修静と 『荘子』
おわりに
第二篇 天尊像考
第1章 隋代の道教造像
はじめに
1 隋代の道教像とその特徴
2 男官李洪欽等造老君像碑
3 道観と道教像
おわりに
第2章 天尊像・元始天尊像の成立と霊宝経
はじめに
1 天尊像・元始天尊像の成立
2 霊宝経 「元始旧経」 と元始天尊
3 『定志通微経』 に見える元始天尊の前世物語
おわりに
第3章 元始天尊をめぐる三教交渉
はじめに
1 『笑道論』 における元始天尊批判
2 元始天尊の 「因縁」 をめぐって —— スダーナ太子本生譚の儒教的変容
3 元始天尊の身相と自然・因縁一体説
おわりに
第三篇 道教経典と漢訳仏典
第1章 『海空智蔵経』 と 『涅槃経』
—— 唐初道教経典の仏教受容
はじめに
1 作者・成立年代・テキスト
2 各巻の梗概
3 『海空智蔵経』 と 『涅槃経』
4 離苦安楽の思想
5 海 空
おわりに
第2章 『海空智蔵経』 巻十 「普記品」 小考
—— 道教経典と中国撰述仏典
はじめに
1 『海空智蔵経』 巻十と 『像法決疑経』
2 「衆生の相」
3 「神を返して海空蔵に入る」
おわりに
第3章 仏典 『温室経』 と道典 『洗浴経』
はじめに
1 『温室経』 の流布と仏道論争 —— 『洗浴経』 成立の背景
2 『洗浴経』 (敦煌写本 『太上霊宝洗浴身心経』)
3 洗浴の儀規
4 『沐浴身心経』 と 『太上玄都妙本清静身心経』
おわりに
第四篇 日本国内所蔵の道教関係敦煌写本
第1章 国立国会図書館所蔵の敦煌道経
はじめに
1 金録晨夜十方懺残巻 WB32-1 (3)
2 道教叢書残巻 WB32-1 (30)
第2章 杏雨書屋所蔵の敦煌道経
はじめに
1 道教願文 杏雨書屋六七三R
2 道経残簡 杏雨書屋六六六
3 太玄真一本際経巻第七譬喩品 杏雨書屋六一六
第3章 京都国立博物館所蔵の敦煌道経
—— 「太上洞玄霊宝妙経衆篇序章」 を中心に
はじめに
1 京都二五二 「太上業報因縁経巻第八」
2 京都二五三 「太上洞玄霊宝妙経衆篇序章」
3 道教史から見た 「太上洞玄霊宝妙経衆篇序章」
第五篇 唐代道教と上清派
第1章 則天武后期の道教
はじめに
1 嵩山出土の金簡
2 投龍と封禅
3 「坐忘行心」 —— 王玄覧 『玄珠録』 の 「心」 の概念
おわりに
第2章 司馬承禎 『坐忘論』 について
—— 唐代道教における修養論
はじめに
1 司馬承禎の生涯
2 司馬承禎の著作
3 『坐忘論』 の内容とその特徴
おわりに
補 論 石刻坐忘論をめぐって
はじめに
1 石刻坐忘論の内容
2 七篇坐忘論を司馬承禎の作とすることについて
3 先行諸研究の見解
おわりに
第3章 司馬承禎と天台山
はじめに
1 天台山の霊墟
2 桐 柏 観
3 『上清侍帝晨桐柏真人真図讃』
4 五岳真君祠
おわりに
終 章
1 『甄正論』 の道教批判
2 霊宝経の仏教受容
3 上清派の伝統へ
注
あとがき
図表一覧
索 引