イスラームのロシア 帝国・宗教・公共圏 1905–1917
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-8158-0888-4 C3022
奥付の初版発行年月:2017年11月 / 発売日:2017年11月上旬
もう一つの市民社会――。多数のイスラーム教徒が存在したロシア帝国。彼らはいかに生きたのか。日露戦争から第一次世界大戦・革命へと至る時代に、政治・行政・教育・出版・戦争・慈善等に積極的に関与し、言論と行動によって自らの「公共圏」を生み出したムスリム社会の苦闘を、かつてない深度で描き出す。
長縄 宣博(ナガナワ ノリヒロ)
1977年 徳島県阿南市に生まれる
1999年 東京大学文学部卒業
2006年 東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学
現 在 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター准教授,博士(学術)
『スラヴ研究』編集長(2010年~)
著 書 Volgo-Ural'skii region v imperskom prostranstve : XVIII-XX vv.(共編,Vostochnaia Literatura,2011年)
『越境者たちのユーラシア』(共編,ミネルヴァ書房,2015年)
『北西ユーラシア歴史空間の再構築』(共編,北海道大学出版会,2016年)他
目次
凡 例
地 図
序 章 帝政ロシアのイスラームと公共圏
1 問題の所在
2 宗派国家と公共圏
3 本書の構成
4 史料と方法
第1章 帝政末期ヴォルガ・ウラル地域のムスリム社会
1 ロシア帝国最後の十年
2 イスラームのロシア
3 ムスリム公共圏の構造
第Ⅰ部 宗派国家とムスリム社会
第2章 イスラームの家の設計図
—— 「良心の自由」 と宗務協議会の改革論
良心の自由と宗教の自由
1 誰が宗務協議会を率いるべきか
2 どのように宗教を統制するか
3 誰が宗務協議会の管轄に入れるのか
宗教の自由が開く公共圏
第3章 マハッラの生活
—— 統治制度から社会をつくる
国家権力の介入と自治的な営みの間
1 マハッラと帝国の法律
2 マハッラの財政
マハッラの変容と公共圏
第4章 政治的信頼度
—— カザン県におけるムスリム聖職者管理の実態
汎イスラーム主義の脅威とマハッラの政治
1 政治的信頼度の制度 —— 県庁と警察機構
2 政治的信頼度の定式化 —— カザンの正教会宣教師と特別審議会
3 ムスリム社会に取り込まれる政治的信頼度
タタール知識人の応答
第Ⅱ部 地方自治とムスリム社会
第5章 カザンの休日
—— 都市空間の民族関係と宗教的権威
ロシアでイスラームの祭日はどのように可能か
1 市会と商人
2 決裂する公共圏 —— 信仰の寛容と都市の自治
3 宗教的権威をめぐる政治 —— 宗務協議会と公共圏
市民社会は少数派の声を拾えるのか
第6章 マクタブか、公立学校か
—— 義務教育に直面するムスリム社会
ムスリム社会とゼムストヴォ
1 教育事業を取り巻く環境 —— ウファ県とカザン県の比較から
2 ゼムストヴォと教育省の競合 —— ウファ県の場合
3 「マクタブか、公立学校か」 論争
ムスリムはロシア市民になれるのか
第Ⅲ部 戦争とムスリム社会
第7章 国民軍の中の宗派国家
—— 従軍ムッラーの任命とムスリム聖職者の徴兵免除
帝国の縮図としての軍隊
1 ロシア軍の中のムスリム
2 問題の発見 —— 日露戦争
3 制度化 —— 1905年革命後
4 試される制度 —— 第一次世界大戦
信仰の特殊性を介した統合
第8章 総力戦の中の公共圏
—— 慈善活動と女性の進出
宗派国家と市民社会
1 宗務協議会と慈善協会
2 拡大する公共圏
3 公共圏への女性の参入
民主主義の旗手か
終 章 帝国の遺産とムスリム公共圏の変容
1 帝国秩序とムスリム公共圏
2 ムスリム公共圏のゆくえ —— ソ連時代から現代ロシアへ
あとがき
用語・主要人物解説
注
参考文献
図表一覧
索 引