普遍史の変貌 ペルシア語文化圏における形成と展開
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
奥付の初版発行年月:2017年12月 / 発売日:2017年12月中旬
歴史叙述の根底を問い直す――。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く 「普遍史」 という歴史類型が存在した。著名な 『王書』 や 『集史』 から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
大塚 修(オオツカ オサム)
1980年、東京に生まれる。2003年、東京大学文学部卒業。2012年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。現在、同研究科助教。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
凡 例
地 図
序 章 普遍史研究の展望と意義
はじめに 問題の所在
1 問題設定
2 先行研究
3 時代設定
4 普遍史の定義
5 用語の定義
6 本書の構成
第Ⅰ部 『王書』 以前の古代ペルシア史叙述
—— 『王の書』 から 『王書』 へ
第1章 旧約的普遍史と古代ペルシア史の相克
はじめに
1 アラブの系譜学者と古代ペルシア史
(1) イブン・ハビーブ 『美文の書』
2 イブン・ムカッファアと古代ペルシア史
(2) イブン・クタイバ 『知識』
(3) ディーナワリー 『長史』
(4) 『ペルシア・アラブの諸王の歴史に関する究極の目的』
3 古代ペルシア四王朝叙述法の萌芽
(5) ヤアクービー 『歴史』
(6) タバリー 『預言者と王の歴史』
(7) マスウーディー 『黄金の牧場』 / 『助言と再考の書』
(8) クダーマ・ブン・ジャアファル 『租税の書』
章 結
第2章 『王の書』 の 「復活」 と流行
—— ペルシア系地方王朝における普遍史
はじめに
1 ハムザ・イスファハーニーによる古代ペルシア史の再編
(1) ハムザ・イスファハーニー 『王と預言者の年代記』
2 ペルシア語歴史叙述の萌芽と 『王の書』 の流行
(2) アブー・マンスール 『王書』
(3) バルアミー 『歴史書』
3 ハムザ・イスファハーニー後のアラビア語古代ペルシア史叙述
(4) マクディスィー 『創始と歴史』
(5) フワーリズミー 『学問の鍵』
(6) ミスカワイフ 『諸民族の経験』
(7) ビールーニー 『過去の痕跡』
章 結
第3章 フィルダウスィーの 『王書』 と古代ペルシア史
—— ガズナ朝における普遍史
はじめに
1 フィルダウスィーの古代ペルシア史叙述
(1) フィルダウスィー 『王書』
2 フィルダウスィーと同時代の古代ペルシア史叙述
(2) サアーリビー 『列王伝精髄』
(3) ガルディーズィー 『歴史の装飾』
章 結
第Ⅰ部結論
第Ⅱ部 ペルシア語普遍史書の成立
—— 『王書』 から 『選史』 へ
第4章 『王書』 の流行とペルシア語普遍史
はじめに
1 セルジューク朝時代の 『王書』 の評価
2 セルジューク朝時代の古代ペルシア史叙述
(1) ガザーリー 『諸王への忠告』
(2) イブン・バルヒー 『ファールスの書』
(3) 『史話要説』
(4) ファフル・ラーズィー 『光の真実』 / 『知識の集成』
(5) イブン・イスファンディヤール 『タバリスターン史』
3 アラビア語普遍史書における古代ペルシア史叙述
(6) 『天文学者教程』
(7) イブン・ジャウズィー 『整然たる歴史』
(8) イブン・アスィール 『完史』
4 奴隷王朝における古代ペルシア史叙述
(9) ファフル・ムダッビル 『系譜書』
(10) ジューズジャーニー 『ナースィル史話』
章 結
第5章 ペルシア語普遍史とオグズ伝承
—— アブー・サイードの即位まで
はじめに
1 ガザン以前のペルシア語普遍史書
(1) バイダーウィー 『歴史の秩序』
(2) ザッジャージー 『吉兆の書』
2 ガザン以降のペルシア語普遍史書
(3) カーシャーニー 『歴史精髄』
(4) ラシード・アッディーン 『集史』
(5) バナーカティー 『バナーカティー史』
章 結
第6章 旧約的普遍史、古代ペルシア史、オグズ伝承の接合
—— アブー・サイードとギヤース・ラシーディーの時代
はじめに
1 三つの人類史の接合
(1) ハムド・アッラー・ムスタウフィー 『選史』
2 アブー・サイード期のペルシア語普遍史書
(2) アフマド 『心優しい子ども』
(3) シャバーンカーライー 『系譜集成』
(4) アクサラーイー 『月夜史話』
章 結
第Ⅱ部結論
第Ⅲ部 ペルシア語普遍史書の再編
—— 『ペルシア列王伝』 から 『歴史集成』 へ
第7章 古代ペルシア史の再編
—— ハザーラスプ朝におけるペルシア語文芸活動と 『ペルシア列王伝』
はじめに
1 ハザーラスプ朝史研究の意義
2 ヌスラト・アッディーンによる文芸活動の庇護・奨励
(1) シャラフ・カズウィーニー 『ペルシア列王伝』 / 『ヌスラト書簡集』
(2) 著者不明 『贈物』
(3) シャムス・ファフリー 『ヌスラトの尺度』
(4) ヒンドゥーシャー 『先祖の経験』
(5) 著者不明 『諸民族の経験』
3 献呈作品におけるヌスラト・アッディーンの表象
4 『ペルシア列王伝』 に対する需要
(6) ニークパイ・ブン・マスウード 『ニークパイの歴史』
章 結
第8章 イランの地の地方政権とイラン概念
はじめに
1 ヤズド・ニザーム家の名士シャムス・フサイニー
(1) アリー・トゥスタリー 『諸王への贈物』
2 インジュー朝
(2) アームリー 『高貴なる諸学問』
3 ジャラーイル朝
(3) アハリー 『シャイフ・ウワイス史』
4 ムザッファル朝
(4) アラー・カズウィーニー 『探求者の道』
(5) アバルクーヒー 『歴史の天国』
章 結
第9章 イランの地の歴史からイランとトゥランの歴史へ
—— ティムール朝時代
はじめに
1 ティムール朝史と普遍史の接合
(1) 『イスカンダル無名氏の史書』
(2) 『ムイーンの歴史精髄』
(3) イブン・イナバ 『スルターンの諸章』
2 オグズ伝承と古代ペルシア史の融合
(4) ヤズディー 『勝利の書』
3 ハーフィズ・アブルーによるペルシア語普遍史の再編
(5) ハーフィズ・アブルー 『歴史集成』
4 ティムール朝におけるペルシア語普遍史書の手稿本作成
章 結
終 章
付表 普遍史書における古代ペルシア史叙述の変遷
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引