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イギリス帝国・開発・環境エコロジーの世紀と植民地科学者

エコロジーの世紀と植民地科学者 イギリス帝国・開発・環境

A5判 264ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
奥付の初版発行年月:2019年12月 / 発売日:2020年01月上旬

内容紹介

新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。――20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

前書きなど

一八世紀は啓蒙の世紀、一九世紀は工業の世紀とされている。二〇世紀はおそらくエコロジーの世紀として歴史に残るであろう。……二一世紀がどう呼ばれるのか――進歩か混沌か――は、人間が自らと環境との適切な均衡をうまく保てるようになるか否かにかかっているだろう。


これは、イギリスの生物学者エドガー・B・ワージントンの言葉である。彼は、国際自然保護連合(International Union for the Conservation of Natural Resources: IUCN)の副会長や、国際生物学事業計画(International Biological Program: IBP)の科学理事などを務めた人物として知られる。

そもそも「エコロジー(oecology)」とは一八六六年にドイツ人生物学者エルンスト・ヘッケルがつくりだした用語だが、生態学が新たな学問分野として確立していくのは二〇世紀に入ってからのことである。アーサー・タンズリーによってイギリス生態学会(British Ecological Society)が一九一三年に設立され、『生態学会誌(Journal of Ecology)』……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

水野 祥子(ミズノ ショウコ)

愛知県生まれ
2001年 大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学
現 在 駒澤大学経済学部教授、博士(文学)
著訳書 『イギリス帝国からみる環境史――インド支配と森林保護』
    (岩波書店、2006年)
    K・ポメランツ『大分岐――中国、ヨーロッパ、そして近
    代世界経済の形成』(共訳、名古屋大学出版会、2015年)
    Cristina Joanaz de Melo et al. (eds.), Environmental History in
    the Making
, vol. 2, (共著、Springer、2016年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

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関連年表

序 章 「エコロジーの世紀」への視角
1 「エコロジーの世紀」
2 科学知の生産と帝国の科学者ネットワーク
3 イギリス帝国植民地の開発と環境
4 国際開発援助と植民地開発
5 本書の構成

 第I部 大戦間期のイギリス帝国――科学・開発・環境

第1章 第一次世界大戦後のイギリス帝国と「開発のための科学」
1 大戦間期の植民地開発と科学の役割
2 イギリス本国――植民地省と研究教育機関
3 植民地開発と科学の制度化
4 世界恐慌と「開発のための科学」
5 植民地開発と科学者ネットワークの拡大

第2章 帝国林学ネットワークと在来知
1 森林・開発・保全
2 帝国林学の形成
3 森林管理制度と現地住民の慣習
4 森林をめぐる知の生産と循環

第3章 アフリカ開発と生態学的パラダイム
1 生態学と植民地開発
2 一九二〇年代までのアフリカ開発
3 フィールドワークと在来知
4 生態調査のインパクト
5 ワージントンと『アフリカの科学』
6 「エコロジカルな開発」

第4章 土壌侵食とグローバルな危機論
1 土壌侵食とイギリス帝国の科学者ネットワーク
2 「人間がつくった砂漠」
3 グローバルな環境危機論
4 科学者ネットワークとグローバルな環境危機論
5 土壌保全と植民地開発
6 土壌危機論がもたらしたもの

 第II部 第二次世界大戦後の植民地開発と国際開発援助
第5章 国際開発援助のはじまりと植民地科学
 ――グローバルな資源管理をめぐって
1 第二次世界大戦後の国際開発と技術援助
2 資源の保全と利用に関する国連科学会議
3 植民地科学者の開発アプローチ
4 技術援助と植民地科学者の経験

第6章 一九五〇年代英領東アフリカの農業開発とエコロジー
1 第二次世界大戦後の植民地政策と科学
2 東アフリカ農業林業研究機関にみる開発アプローチ
3 「エコロジカルな開発」のゆくえ
4 植民地における開発主体の重層性
5 大戦後の土壌保全政策と住民の反応
6 植民地末期の「開発」

第7章 アフリカ開発と国際技術援助
1 ヨーロッパ諸帝国と技術援助
2 領土横断的な技術協力ネットワークの成立
3 植民地科学者の農業開発に対する見方とアプローチ
4 技術援助をめぐる国際機関との関係
5 CSA・CCTAと脱植民地化
6 科学者ネットワークとアフリカ開発

終 章 植民地科学者・開発・環境
1 植民地科学者と生態学的パラダイム
2 「エコロジカルな開発」とその射程
3 国際開発援助とエコロジー
4 いかにして二〇世紀は「エコロジーの世紀」となったのか

あとがき

文献目録
図表一覧
索 引


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