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メカニズムから診療まで交通外傷

交通外傷 メカニズムから診療まで

B5判 268ページ 並製
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-8158-0992-8 C3047
奥付の初版発行年月:2020年06月 / 発売日:2020年06月下旬

内容紹介

わが国の交通事故での死者数は過去最低を更新しているが、負傷者数は年間五十万人前後と、相当数にのぼる。本書は、受傷のメカニズムと医学、事故の統計や法規、安全対策などを系統的に解説。医師・看護師、保険調査員、法曹や警察官、自動車技術者など、交通事故に関わる全ての人に。

前書きなど

世界では年間約135万人が交通事故で死亡しており、死因の第8位をしめる。特に5~29歳の若年者の死因の1位となっていることから、予防対策の推進が世界的に叫ばれている。わが国では2019年における交通事故死者数(事故後24時間以内)が3,215人と戦後最少であった。しかし、いまだ46万人以上が交通事故で負傷しており、中には重篤な後遺障害を残す人もいる。したがって、政府が掲げる、「交通事故死者をゼロにして世界一安全な道路交通社会を目指す」ための一層の努力が求められている。

さて、前述のように交通事故死者数が減少した背景には、さまざまな要因がある。まずは、病院前救護体制の充実を含めた医療の進歩である。負傷者の搬送、エビデンスに基づく診断および治療法の進歩は疑う余地がない。次に、車両の安全性能の向上、事故回避システム等の進歩である。乗員や歩行者に対する被害軽減ボディーや安全システムの進歩などは、自動車工学技術の目覚ましい発展によるものである。その他、道路環境の整備、道路交通に関する法律の改正、道路交通参加者に対する教育の充実など、多方面での取り組みの成果と考えられる。これらを推進する上で重要なことは、実事故を詳細に分析し、事故による死傷者に何が起こったかを具体的に明らかにすること、そして、被害軽減のために有用な対策を検討することである。さらに、さまざまな分析によって得られた貴重な情報を、多くの関係者で共有することが重要である。

本書はこれらのことを踏まえ、交通外傷の特徴について、とくにそのメカニズムを明らかにするという視点でまとめた。実際の交通事故死傷者にかかわっている医療従事者、交通事故予防に尽力している工学研究者などが、貴重な経験や分析結果をもとにまとめあげたものである。全体は総論と各論の2部からなる。総論では交通事故に関する統計・法規・安全対策、そして交通事故時の挙動と受傷メカニズムについて解説する。各論では主な交通外傷について、その受傷メカニズムを含め部位別に記述する。

先進諸国では……

[「はじめに」冒頭より]

著者プロフィール

一杉 正仁(ヒトスギ マサヒト)

1994年東京慈恵会医科大学卒業。川崎市立川崎病院、東京慈恵会医科大学大学院、獨協医科大学准教授を経て2014年より滋賀医科大学社会医学講座教授。京都府立医科大学客員教授、東京都市大学総合理工学研究科客員教授、名古屋大学大学院工学研究科非常勤講師。
主著書『臨床医のための疾病と自動車運転』(共編著、三輪書店、2018年)、『脳卒中後の自動車運転再開の手引き』(共編著、医歯薬出版、2017年)、『臨床事例で学ぶ 医療倫理・法医学』(編著、テコム、2017年)。

西山 慶(ニシヤマ ケイ)

1995年京都大学医学部卒業。小倉記念病院、京都大学講師を経て2015年より国立病院機構京都医療センター救命救急センター長。京都大学医学部臨床教授、京都府立医科大学臨床教授、福井大学医学部客員准教授。
主著書『AMLS 日本語版』(共訳、へるす出版、2016年)、『健康長寿学大事典』(共著、西村書店、2012年)、『今日の治療指針 2012年度版』(共著、医学書院、2012年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

I 総論――交通事故の背景とメカニズム

第1章 交通事故の疫学
1 背景
2 交通事故件数と死者数・負傷者数
3 状態別事故の背景
4 臨床現場への応用

第2章 交通安全に関わる法律
1 背景
2 自動車運転免許制度に関する法律
3 運転者の責任に関する法律
4 患者の自動車運転と医師の責任に関する法律
5 臨床現場への応用

第3章 交通事故の原因
1 背景
2 ヒューマンエラーによる事故
3 飲酒運転による事故
4 体調起因性の事故
5 臨床現場への応用

第4章 交通事故時の挙動と受傷メカニズム(1)
――歩行者
1 背景
2 歩行者事故での加害部位と被害部位
3 歩行者事故での衝突挙動解析
4 臨床現場への応用

第5章 交通事故時の挙動と受傷メカニズム(2)
――二輪車・自転車乗員
1 背景
2 二輪車事故
3 自転車事故
4 臨床現場への応用

第6章 交通事故時の挙動と受傷メカニズム(3)
――自動車乗員
1 背景
2 前面衝突
3 側面衝突
4 後面衝突
5 臨床現場への応用

第7章 自動車の安全対策
1 背景
2 衝突安全分野における歩行者頭部保護への取り組み
3 予防安全分野における交通弱者保護への取り組み
4 衝突発生後の交通弱者保護への取り組み
5 その他の先進安全技術
6 臨床現場への応用

II 各論――交通外傷の診療

第1章 交通外傷の初期診療
1 外傷初期診療の標準化
2 外傷初期診療の手順
3 外傷における緊急度・重症度
4 病院前救護活動
5 患者受け入れ
6 初療室における対応

第2章 交通外傷の患者評価(重症度評価法)
1 重症度評価の意義
2 交通外傷患者の重症度評価の実際

第3章 頭部外傷
1 解剖・生理
2 主要損傷
3 交通外傷に特有の事項

第4章 顎顔面外傷
1 解剖・生理
2 主要損傷

第5章 頸部・脊椎外傷
1 解剖・生理
2 主要損傷

第6章 胸部外傷
1 解剖・生理
2 主要損傷

第7章 腹部外傷
1 解剖・生理
2 腹部臓器の受傷機転
3 腹部外傷の疫学
4 主要損傷

第8章 四肢・骨盤外傷
1 解剖・生理
2 脱臼・脱臼骨折
3 軟部組織損傷
4 その他の主要損傷

第9章 小児の交通外傷
1 小児の解剖・生理
2 主要損傷
3 交通外傷に特有の事項

第10章 女性の交通外傷
1 女性の解剖・生理
2 外陰部打撲
3 骨盤の外傷

第11章 妊婦の交通外傷
1 妊婦の解剖・生理
2 主要損傷

第12章 高齢者の交通外傷
1 高齢者の解剖・生理
2 高齢者の基礎疾患
3 高齢者の内服薬
4 高齢者の交通外傷の概要
5 高齢者の交通外傷の解剖学的特徴
6 高齢者の交通外傷のトリアージ
7 高齢者の交通外傷のリスク因子
8 高齢者の交通外傷の治療

第13章 交通外傷の合併症
1 合併症総論
2 合併症各論

第14章 交通外傷の診療における法的問題点
1 診療録・各種診断書記載の注意事項
2 交通事故における死亡診断
3 交通事故診療と個人情報保護法、守秘義務
4 疾患と交通事故

索 引


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