自由の余地 Elbow Room: The Varieties of Free Will Worth Wanting
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-8158-0996-6 C3010
奥付の初版発行年月:2020年08月 / 発売日:2020年08月中旬
われわれは完全に自由なのか? それとも自由とは幻想にすぎないのか? 進化論から認知科学、ギリシア哲学から実存主義まで縦横無尽に取り込み、コントロール、自己、責任などの概念を再吟味。望むに値する自由意志を、明晰な論理で描き出す、デネット哲学の原点にしてエッセンス。
1 いつまでたっても面白い問題
運命という考えは哲学そのものよりも古くからある。だから、哲学が始まって以来、哲学者は、われわれの運命は生まれる前から決まってしまっているという考え方のどこが間違っているかを示そうとしてきた。われわれはただ自分の運命をなぞっているのではなく、どういう仕方でかは知らないが、自分の進む道を選んでいる、言い換えれば決定を作り出している。つまり、たんに「決定」が自分の中で起こるがままにさせているのではない。こういったことを立証するのは、すごく重要なことだと思われてきたようだ。
ギリシア哲学の初期には、因果についての考え方が関心の的だった。そして、すべての物理的出来事はそれに先……
[「第1章」冒頭より/注、傍点は省略]
ダニエル・C・デネット(ダニエル シー デネット)
Daniel C. Dennett
1942年生まれ。1965年、オックスフォード大学より哲学博士号取得。現在、タフツ大学名誉特任教授・同大学認知科学研究センター所長。現代英語圏を代表する哲学者の一人。著書も多く、近著としてIntuition Pumps and Other Tools for Thinking, 2013(『思考の技法――直観ポンプと77の思考術』)、From Bacteria to Bach and Back: The Evolution of Minds, 2017(『心の進化を解明する――バクテリアからバッハへ』)などがある。
戸田山 和久(トダヤマ カズヒサ)
1958年生まれ
1989年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学
現 在 名古屋大学大学院情報学研究科教授
著 書 『論理学をつくる』(名古屋大学出版会、2000年)
『誇り高い技術者になろう』(共編、名古屋大学出版会、2004、第2版2012)
『科学哲学の冒険』(日本放送出版協会、2005)
『「科学的思考」のレッスン』(NHK出版、2011)
『科学技術をよく考える』(共編、名古屋大学出版会、2013)
『哲学入門』(筑摩書房、2014)
『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015)
『〈概念工学〉宣言!』(共編、名古屋大学出版会、2019)
『教養の書』(筑摩書房、2020)他
目次
序
第1章 化け物に餌をあげないで
1 いつまでたっても面白い問題
2 ブギーマン
3 アナバチ性とその他の悩みの種
4 本書の概要
第2章 理性を実践的なものにする
1 理性(理由)はどこから来るのか
2 意味論的エンジン、永久運動機関、そして欠陥品の直観ポンプ
3 反省、言語、そして意識
4 コミュニティ、コミュニケーション、そして超越
第3章 コントロールと自己コントロール
1 「コントロールを超えた事情のせいで」
2 単純なコントロールと自己コントロール
3 エージェントのいないコントロール、そしてわれわれの因果の捉え方
4 競合するエージェントたち
5 無秩序の使い道
6 「ハメ外そうぜ」
第4章 自家製の自己
1 消えゆく自己の問題
2 自己を定義するという芸術
3 われわれの運をためす
4 まとめ
第5章 自由という観念のもとで行為する
1 この期におよんでいかにして熟慮しつづけることなどできようか
2 完璧な熟慮者を設計する
3 ほんものの選択のチャンス
4 「避ける」「避けられる」「不可避の」
第6章 「ほかのようにもできたのに」
1 ほかのようにもできたのかどうかをわれわれは気にかけているのか
2 われわれが気にかけていること
3 ごちゃごちゃした問題
第7章 われわれはなぜ自由意志を望むのか
1 ニヒリズムを無視する
2 縮減された責任と忍び寄る免責の亡霊
3 おぞましい秘密を否定する
訳者解説
注
参考文献
索引