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ユーラシア帝国の海運と世界経済海のロシア史

海のロシア史 ユーラシア帝国の海運と世界経済

A5判 354ページ 上製
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
奥付の初版発行年月:2020年12月 / 発売日:2020年12月上旬

内容紹介

第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づける。

前書きなど

本書が描く歴史像は、ある観点からは斬新に見えるだろう。本書の挑戦は、世界的に見てもまれなものである。しかし問題意識や研究手法の点から見ると、本書のような研究はありふれている。日本国内に限っても、類書はあまたある。本書が斬新に見えるとすれば、それは、ロシアの海運の歴史に着目しているからである。逆に、ありふれているように見えるとすれば、本書がいわゆるグローバルヒストリーや帝国論の一環をなしているからである。

グローバルヒストリーとして想定されている研究の中身は論者によって異なり、その定義は必ずしも明確ではない。だが、T・ロイとG・リエロの編集により二〇一九年に刊行された『グローバル経済史』は、グローバルヒストリーと呼ばれている研究が主にどのような問題に取り組んでいるのか、理解する手がかりになる。同書は、三つのパートに分けられており、第一部が「グローバルヒストリーにおける分岐」、第二部が「世界経済の出現」、第三部が「グローバルな経済的変化への地域的視点」となっている。本書の問題意識は、主に第三部のテーマに属する……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

左近 幸村(サコン ユキムラ)

1979年生。2009年、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。2013年、新潟大学研究推進機構超域学術院准教授。現在、新潟大学経済科学部准教授。著書、『近代東北アジアの誕生――跨境史への試み』(編著、北海道大学出版会、2008年)、『歴史学の縁取り方――フレームワークの史学史』(共編著、東京大学出版会、2020年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例
参考地図

序 章 ロシア帝国と近代世界
一 本書の背景
二 ロシアとアジア
三 海運を通して見るロシア帝国
四 義勇艦隊に関する先行研究と史料、本書の構成

第I部――ロシア極東の近代

はじめに

第1章 帝政期ロシア極東の農業と移民
一 一九世紀のロシア極東統治の概要
二 一八九五年の調査に見る、沿海州とアムール州の比較
三 日露戦争後の方針転換
四 日露戦争後のロシア極東の農村
小括

第2章 無関税港制に見るロシア極東の変容
一 無関税港制と自由港制
二 一九世紀後半のウラジオストク
三 一九〇一年の無関税港廃止
四 日露戦争後のウラジオストク港
小括

第3章 茶が結んだロシアとアジア
一 一九世紀後半の中国茶の種類
二 義勇艦隊就航までのロシアと茶
三 イギリスの中国茶市場からの撤退と義勇艦隊の就航
四 ロシア国内における需要の喚起
小括

補論1 アムール川とスンガリ川をめぐる露中関係
一 ロシア帝国のスンガリ川への進出――日露戦争前の状況
二 中国のアムール川への進出――日露戦争後の状況
小括

第II部 国家――ロシア義勇艦隊史

はじめに

第4章 一九世紀のロシア義勇艦隊
――就航とその後の模索
一 義勇艦隊の設立
二 義勇艦隊の始動
三 新たな規程制定をめぐる論争の始まり
四 一八八六年時限規程の制定
五 ブラジル航路の計画
六 ミハイル・カジのロシア商船批判
七 一八九〇年代の発展
小括

第5章 セルゲイ・ヴィッテの海運政策
一 若きセルゲイ・ヴィッテの道のり
二 ヴィッテの経済思想
三 ヴィッテによる海運の改革
四 一九〇二年の義勇艦隊時限規程
五 海運の国産化と外国資本の排除
小括

第6章 商船化への道
――日露戦争後の義勇艦隊
一 義勇艦隊の組織の見直し――海軍省から商工省へ
二 義勇艦隊と各地の取引所委員会
三 第一次世界大戦直前の義勇艦隊
四 バルト海-ウラジオストク航路の創設計画
小括

第III部 世界経済――ロシア海運の発展

はじめに

第7章 ロシア東亜汽船と義勇艦隊の競争
――帝国の西と東
一 ロシア東亜汽船の設立
二 ユダヤ人移民とパスポート問題
三 大西洋航路の設立
四 大西洋航路の見直し
五 日露戦争後の極東近海航路の再編
六 決算報告の分析――義勇艦隊への補助金
七 警戒しつつ手を結ぶ――日露戦争後の日露関係
小括

第8章 北方汽船の模索
一 北方汽船の船出
二 黒海・バルト海への進出
三 東方への回帰
四 インド、セイロンからの茶の輸入
五 茶の輸送競争――義勇艦隊と北方汽船
六 ロシアによる茶の輸送網の把握
小括

第9章 ロシア商船とオデッサ
一 十九世紀前半のオデッサ
二 ロシア商船の設立
三 東地中海とロシア
四 オデッサの自由港制案
五 ペルシア湾航路の設立
六 ペルシア湾航路の結果
小括

補論2 スエズ運河の通航料問題
一 スエズ運河とのかかわりの始まり
二 補助金の条件の改定
小括

終 章 海から見たロシア帝国
一 第一次グローバリゼーションとロシア帝国
二 ソ連時代への遺産

巻末付表
あとがき

参考文献
図表一覧
索引


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