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真理は天から降ってくる毛沢東論

毛沢東論 真理は天から降ってくる

四六判 438ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
奥付の初版発行年月:2021年04月 / 発売日:2021年05月上旬

内容紹介

その男は中国に何をもたらしたのか――。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫る。

前書きなど

毛沢東、と聞くと何を思い浮かべるだろうか? 中国を旅行したことのある人なら、全ての紙幣に印刷されている彼の顔、天安門広場に掲げられている彼の肖像、あるいは世界史の教科書によく載っている彼の写真を思い出すかもしれない。彼が中華人民共和国の建国の英雄であることはよく知られているし、世界を動かしてきた政治的大人物であることも知られている。

これまでエドガー・スノーの『中国の赤い星』をはじめとして、毛沢東にかんする著作(伝記、評論、研究書、等々)が世界で数多く出版されてきた。毛沢東時代の中国、とくに政治にかんする研究といえば、大部分が実質的に毛沢東研究だったといっても過言ではない。なぜなら、極端にいえば中国政治=毛沢東だったからである。毛が新中国を作り、毛が中国を動かしてきた。毛は一九七六年九月にこの世を去り、一九七八年から始まる鄧小平の改革開放政策によってすっかり影が薄くなってしまったような印象があるが、いまでも彼は中国政治や社会に大きな影響を及ぼしている。

毛沢東に対する評価は人によって大きく分かれる。ユン・チアン(張戎)から見れば、彼は昔から陰険な人物だったということになるし、彼が歩んだ解放闘争の歴史は実は嘘と誇張で脚色されたものだった。大躍進や文化大革命(文革)などの悲劇を追いかけると、あまりにも犠牲者が多く、主導した彼はまさに悪魔でしかない。彼をヒトラー、スターリンと並ぶ二〇世紀における三大悪人の一人に……

[「はじめに」冒頭より]

著者プロフィール

中兼 和津次(ナカガネ カツジ)

1942年、北海道に生まれる。1964年、東京大学教養学部卒業。アジア経済研究所調査研究部研究員、一橋大学経済学部教授、東京大学大学院経済学研究科教授、青山学院大学国際政治経済学部教授等を経て、現在、東京大学名誉教授(経済学博士)。主著、『開発経済学と現代中国』(名古屋大学出版会、2012年)、『体制移行の政治経済学』(名古屋大学出版会、2010年)、『シリーズ現代中国経済1 経済発展と体制移行』(名古屋大学出版会、2002年)、『中国経済発展論』(有斐閣、1999年、アジア太平洋賞大賞・国際開発研究大来賞)、『中国経済論』(東京大学出版会、1992年、大平正芳記念賞)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第1章 毛沢東の哲学と思想
――「矛盾論」と「実践論」の落とし穴
1 「矛盾論」と「実践論」の構造
2 毛沢東哲学の実用性
3 毛沢東の哲学と思想に対する評価
4 毛沢東哲学の落とし穴――私の解釈

第2章 毛沢東と魯迅
――もし魯迅が革命後も中国にいたら?
1 梁漱溟に激怒する毛沢東
2 胡風事件
3 魯迅と毛沢東

第3章 階級闘争論と大衆路線
――毛沢東の「マルクス主義」
1 革命闘争と階級――毛沢東初期階級概念の特色
2 革命後の階級概念の変化
3 土地改革と階級区分
4 大衆、人民、大衆路線
5 階級闘争と暴力

第4章 反右派闘争の展開と結末
1 反右派闘争前史――百花斉放・百家争鳴
2 闘争の開始
3 闘争の結末
4 反右派闘争をどう見るか

第5章 大躍進と大飢餓
1 大躍進政策の誕生
2 人民公社政策の展開
3 大飢饉・飢餓――犠牲者の数
4 大飢饉・飢餓――そのメカニズム
5 大躍進とは何だったのか

第6章 彭徳懐の悲劇
――廬山会議とその結末
1 大躍進政策の転換
2 廬山会議――彭徳懐の意見書
3 毛沢東の彭徳懐批判
4 彭徳懐の末路
5 彭徳懐の悲劇をどう見るか

第7章 毛沢東の政治経済学
――「矛盾の経済学」を解剖する
1 毛沢東の政治経済学の特徴
2 毛沢東の経済目標
3 鄧小平の経済学
4 毛沢東の政治経済学をどう評価するか

第8章 文化大革命と毛沢東
1 七千人大会
2 社会主義教育運動
3 文革の発動と拡大――そのメカニズム
4 文革の悲劇――その規模と残虐さ
5 文革の評価――文革とは何だったのか

第9章 毛沢東と周恩来
1 建国前の毛・周関係
2 建国後の毛・周関係
3 周恩来をどう評価するか

第10章 毛沢東をめぐる女性たち
1 楊開慧と賀子珍
2 江青
3 張玉鳳
4 毛沢東の情事
5 毛沢東の女性観

終 章 毛沢東をどう評価すべきか
1 宗教としてのマルクス主義、教祖としての毛沢東
2 毛沢東が現代中国に遺したもの
3 毛沢東の性格について
結びに代えて――毛沢東をどう評価するか


あとがき
参考文献
図表一覧
事項索引
人名索引


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