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文学・思想・人生水上勉

水上勉 文学・思想・人生

四六判 296ページ 上製
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8158-1047-4 C3095
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月下旬

内容紹介

事実と虚構のあわいに求められた道とは――。文明を問う「社会派推理小説」によって出発した水上勉。だが、自らの生と重ねて「寺を焼き」「竹を削り」一休・良寛の境涯を跡づけつつ、遂には芸術と救済の向こうへと歩み出す。晩年の日々まで、その文業を初めて本格的に捉えた畢生の力作。

前書きなど

貶められた『五番町夕霧楼』
『五番町夕霧楼』(『別冊文藝春秋』一九六二年九月、六三年二月刊)については、すでに作者自身による自注ともいうべき一連の文章がある。しかし、それら一連の文章にはある種の傾向、あえて言えば一種の偏向とさえ呼んでもよいような特徴が見られることには注意する必要がある。『五番町夕霧楼』という作品を正当に理解・評価するうえで、この、ある種の傾向を持った一連の文章が貢献しているとは必ずしもいいがたいことが、この作品の辿った運命を複雑なものにしているといっていいだろう。

『五番町夕霧楼』についてのみ述べられたものではないが、自注の一つである「金閣と水俣」(『世界』七四年四月)では、「兵卒の美学」とはほど遠い三島由紀夫の『金閣寺』(五六年一〇月刊)への不満を述べ、それに付け加えて次のような一文を括弧でくくっている。……

[「第1章」冒頭より]

著者プロフィール

藤井 淑禎(フジイ ヒデタダ)

1950年愛知県生まれ。慶應義塾大学卒業、立教大学大学院博士課程満期退学。東海学園女子短期大学助教授、立教大学教授などを経て、現在、立教大学名誉教授。著書に『不如歸の時代』(名古屋大学出版会、1990年)、『純愛の精神誌』(新潮選書、1994年)、『望郷歌謡曲考』(NTT出版、1997年)、『小説の考古学へ』(名古屋大学出版会、2001年)、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房、2007年)、『名作がくれた勇気』(平凡社、2012年)、『乱歩とモダン東京』(筑摩選書、2021年)ほか

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

I

第一章 『五番町夕霧楼』の復権

第二章 『雁の寺』から『雁の寺 全』へ

第三章 『越前竹人形』のその後

第四章 『金閣炎上』と〈熊野〉

第五章 『金閣炎上』の構成意識

第六章 『一休』における水上勉の〈わたくし〉

II

第七章 公害問題と水上勉
――文明vs.反文明の構図

第八章 『飢餓海峡』の達成

第九章 社会派ミステリーから日本型私小説へ、そして

III
第十章 『蓑笠の人』と『良寛』とのあいだ
――さまざまな帰郷

第十一章 『才市』へと至る道

第十二章 電脳暮しの日々
――言葉を超えた世界へ

あとがき
索引


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