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量子力学10講

量子力学10講

A5判 200ページ 並製
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-8158-1049-8 C3042
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月上旬

内容紹介

肝心な筋道だけをコンパクトにまとめた、待望の教科書。古典力学との対応にこだわることなく、量子力学をそれ自身で完結したものとして捉え、確率振幅からエンタングルメントや調和振動子まで、明快に記述。線形代数がわかれば、量子力学もわかる!

前書きなど

本書は量子力学の教科書として書かれたものである。私は学部で1クォーター、8週の量子力学を教えている。この授業のために私は講義ノートを書き貯めていたが、それを小分けして学生諸君に配布しても量子力学の内容が体系的に伝わらないことを私はもどかしく思っていた。そこで、講義ノートをまとめて、最初から最後まで読めば量子力学の一番肝心の道筋はきっとわかるだろうと言える一冊の本にしたいと思った。懇意にさせていただいている名古屋大学出版会の神舘健司さんに、こういう本を出したいのですがと話を持ち掛けて、出版の道筋をつけていただいた。

内容を量子力学の根幹部分に絞っても、さすがに8回の講義で終わらせることは難しく、10回の講義のつもりで本書を書いた。内容は、有限次元のヒルベルト空間上の演算子を物理量とする量子力学をメインにした。無限次元ヒルベルト空間こそ量子力学の本格的な舞台であり、それに比べると、有限次元の量子力学というのはだいぶスケールの小さい話になるのだが、量子力学の骨組みを理解したい初学者には、無限次元空間の手ごわいところ(非有界演算子の出現や、自己共役演算子とエルミート演算子の相違など)を見せつけるよりは、手を動かして計算できる有限次元の例を見せた方がよいと考えた。それでも無限次元空間上の正準交換関係は扱った。また、古典力学(解析力学)のシステムを量子化したり、古典力学の欠陥が見つかって量子力学が作られていった歴史をたどったりするアプローチはとらず、ストレートに量子力学の話をすることにした。なお、補足的な細かい話は小さいフォントで記すことにした。

竹内外史氏(1926-2017)は有名な数学者であるが、物理学も好きだったそうで、しかも余技的に物理学を勉強しただけでなく、物理学色の濃い数学書を何冊か書いている。そんな竹内氏は著書『線形代数と量子力学』のまえがきにこ……

[「まえがき」冒頭より]

著者プロフィール

谷村 省吾(タニムラ ショウゴ)

1967年、名古屋市に生まれる。1990年、名古屋大学工学部卒業。1995年、名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了、博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(東京大学)、京都大学助手・講師、大阪市立大学助教授、京都大学准教授を経て、現在、名古屋大学大学院情報学研究科教授。専門、理論物理、主に量子論、力学系理論、応用微分幾何。著書『幾何学から物理学へ――物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう』(サイエンス社、2019年)、『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何――双対性の視点から』(サイエンス社、2006年)、『ゼロから学ぶ数学・物理の方程式』(講談社、2005年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき

第1講 量子力学の考え方
1-1 ミクロの世界の構成要素
1-2 ボールと水面波と電子
1-3 確率振幅
1-4 複素数の絶対値2乗

第2講 状態を表すベクトル
2-1 古典力学と量子力学の共通点
2-2 古典力学と量子力学の相違点
2-3 ヒルベルト空間
2-4 コーシー・シュワルツの不等式
2-5 確率
2-6 量子力学における確率解釈
2-7 ヒルベルト空間の例
2-8 基底
2-9 展開公式の幾何学的意味

第3講 物理量を表す演算子
3-1 演算子
3-2 エルミート共役
3-3 自己共役演算子
3-4 演算子の固有値
3-5 自己共役演算子の固有値・固有ベクトル
3-6 固有値が縮退している場合
3-7 固有値と測定値の関係
3-8 射影演算子とスペクトル分解

第4講 行列表示とユニタリ変換と対角化
4-1 抽象ベクトルの数ベクトル表示
4-2 抽象演算子の行列表示
4-3 ユニタリ変換
4-4 対角化
4-5 トレース

第5講 位置と運動量
5-1 無限次元ヒルベルト空間の必要性
5-2 円周上の粒子
5-3 直線上の粒子

第6講 可換物理量と結合確率
6-1 結合確率
6-2 可換な物理量の結合確率
6-3 縮退がある場合

第7講 非可換物理量の量子効果
7-1 同時確定状態の非存在
7-2 波束の収縮
7-3 干渉効果
7-4 干渉項としての非対角項
7-5 物理量の和と値の和の不一致
7-6 ロバートソンの不確定性関係
7-7 ケナードの不確定性関係

第8講 複合系とエンタングルメント
8-1 複合系
8-2 ヒルベルト空間のテンソル積
8-3 テンソル積空間における内積と確率解釈
8-4 演算子のテンソル積
8-5 テンソル積の成分表示
8-6 エンタングル状態

第9講 運動方程式
9-1 時間変化を扱う必要性
9-2 シュレーディンガー方程式
9-3 エネルギー固有状態は定常状態
9-4 2状態系の時間発展
9-5 ハイゼンベルク方程式

第10講 調和振動子
10-1 バネとおもり
10-2 古典力学の調和振動子の解
10-3 量子力学の調和振動子
10-4 調和振動子のエネルギー固有値
10-5 調和振動子の波動関数
10-6 インピーダンス

付録A 数学記号の書き方
付録B 複素数の性質

参考文献
演習問題の略解
索引


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