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理念と歴史グローバル・ヘルス法

グローバル・ヘルス法 理念と歴史

A5判 350ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1056-6 C3032
奥付の初版発行年月:2022年02月 / 発売日:2022年02月上旬

内容紹介

国際的な保健協力が目指す「健康」とは何か。その実現のために、どのような法や制度が創出されてきたのか。従来の国際法学を超えて、「社会医学」と「生物医学」の対抗関係を軸に、現在の世界保健機関(WHO)にいたるグローバルな「健康」体制のあり方を問い直す。パンデミックの時代に必読の書。

前書きなど

グローバル・ヘルスとは、インターナショナル・ヘルスに対抗して用いられる言葉であって、国境を越えて実施される保健協力事業が、もはや国家間的な(inter-national)枠組みにおいては十全に把握できないことを示唆している。国際的な保健協力において、国家間の協力や、国家間組織と国家の協力が絶対的な主役とはいいがたいことは、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する世界の対応をみても明らかであろう。COVID-19に対する効果的な措置として最も期待されるのはワクチンであり、それを中・低所得国を含む世界中の人々に供給することが、この感染症に対する国際協力の中心を占めている。そして、その実現を担うのは、COVAXファシリティという仕組みである。これにより、製薬企業に対して、失敗のリスクを伴うワクチン開発を促進するとともに、各国が共同でワクチンを購入することでそのコストを引き下げ、さらに、資金を十分に持たない諸国に対しては財政的な支援によりワクチンを供給することができる。この仕組みは、感染症流行対策イノベーション連合(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations : CEPI)、GAVIワクチン・アライアンス、世界保健機関(WHO)、国際連合児童基金(UNICEF)という四つの国際的な団体によって主導されている。後二者がよく知られた国際……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

西 平等(ニシ タイラ)

1972年 兵庫県に生まれる
1995年 東京大学法学部卒業
2000年 東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程単位取得退学
東京大学社会科学研究所助手などを経て
現 在 関西大学法学部教授、博士(法学)[東京大学]
著 書 『法と力』(名古屋大学出版会、2018年)
 『ウェストファリア史観を脱構築する』(共著、ナカニシヤ出版、2016年)
 『国際政治哲学』(共著、ナカニシヤ出版、2011年)
 『国際立法の最前線』(共著、有信堂、2009年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章
1 グローバル・ヘルス法という概念
2 従来の研究
3 本書の構成

第1章 国際防疫協調体制
──19世紀後半から第一次世界大戦まで
はじめに
1 国際衛生会議
2 検疫隔離措置をめぐる論争
3 国際組織の設立
 1)コンスタンティノープル・アレクサンドリア衛生委員会
 2)国際公衆衛生事務所(OIHP)
 3)汎米衛生局(PASB)
おわりに

第2章 国際保健協力の登場
──戦間期
はじめに
1 国際連盟体制下の国際的な保健組織
 1)連盟保健機関
 2)ロックフェラー財団・国際保健部門
2 技術的手段による感染症の克服(生物医学的保健理念)
 1)ゴーガスによる黄熱病の根絶
 2)ロックフェラー財団・国際保健部門による感染症根絶事業
3 社会的要因への着目(社会医学的保健理念)
 1)農村衛生
 2)大恐慌の下での栄養研究
 3)中国における保健協力
おわりに

第3章 世界保健機関の理念と構造
はじめに
1 世界保健機関(WHO)の創設
 1)第二次世界大戦後に向けた国際保健協力の始動
 2)世界保健機関の設立準備
2 世界保健機関憲章
 1)前文──健康(health)の理念
 2)構成国・領域
 3)組織
 4)地域機関
 5)他の国際組織との関係
おわりに

第4章 世界保健機関の下での国際保健協力
はじめに
1 国際防疫協調
 1)国際衛生(保健)規則の採択
 2)国際衛生(保健)規則の特徴
 3)(旧)国際保健規則の概要
 4)実効性の欠如とその対策
2 国際標準の設定
 1)拘束的な規則採択による国際標準設定
 2)勧告的な総会決議による国際標準設定
 3)その他の国際標準設定
3 感染症の根絶
 1)背景
 2)マラリア根絶事業
 3)天然痘根絶事業
4 プライマリ・ヘルス・ケア
 1)包括的保健政策の復権
 2)アルマ・アタ宣言
 3)選択的プライマリ・ヘルス・ケア
5 「家族計画」から「リプロダクティヴ・ライツ」へ
 1)「人口問題」の登場
 2)「家族計画」
 3)政治争点化
 4)リプロダクティヴ・ライツ
6 HIV/エイズと人権アプローチ
 1)対策の遅れ
 2)差別に対する取り組み
 3)人権アプローチの発展
 4)WHOの後退
おわりに

第5章 グローバル・ヘルスの模索
はじめに
1 1990年代危機
 1)新自由主義の時代
 2)保健政策をめぐる対立
 3)三つの危機
2 公私パートナーシップ(PPP)の発展
 1)改革の始動
 2)治療薬へのアクセスと知的所有権
 3)公私パートナーシップ
3 新興・再興感染症と新国際保健規則
 1)国際保健規則改正の背景
 2)新国際保健規則(2005年)
4 タバコ規制枠組条約
 1)タバコ規制枠組条約の成立
 2)タバコ規制枠組条約の概要
 3)タバコ規制と国際経済法
おわりに

終 章 パンデミックの時代に

参考文献
あとがき
索引


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