分断された世界をつなぐ思想 より善き公正な共生社会のために
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-8329-3419-1 C1010
奥付の初版発行年月:2024年04月 / 発売日:2024年05月上旬
人類の共滅と国内の分断加速が懸念される今、どこに未来への希望を見出せるか。公共哲学と共生思想を基に、教育、福祉、環境、国際、経済、宗教などでの共生への道を探り、教養教育と哲学の意義を復権して、現代の喫緊の課題に応える。
山脇 直司(ヤマワキ ナオシ)
東京大学名誉教授
1949年青森県生まれ.
一橋大学経済学部卒業、上智大学大学院哲学研究科を経て、1982年ミュンヘン大学にて哲学博士号を取得。1988年4月から1993年3月まで東京大学教養学部助教授、1993年4月から2013年3月まで同教授および1996年4月以降東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授。2013年退官。2013年星槎大学教授、2019-2023年まで同学長。
現在は、東日本国際大学客員教授、星槎大学特任教授、朝日カルチャーセンター講師。
目次
はじめに
〔第一部 公共哲学の現代的展開〕
第1章 20世紀以降の公共哲学の発展と社会構想
1 アメリカ発の公共哲学
2 ドイツ語圏の公共哲学
3 日本発の新たな学としての公共哲学
4 著者独自の公共哲学の方法論(アプローチ)と「人間─社会」論
5 グローカル公共哲学の意図と構想
第2章 公共的価値としての「正義・人権・平和・福祉」論再考:その思想史的考察とアクチュアリティ
1 正義論の歴史と現代
2 人権論の歴史と現代的展開
3 平和論の歴史と現代
4 福祉論の思想史的考察と現代的展開
結語
第3章 今世紀上四半期の諸問題と公共哲学
1 今世紀の大きな国際的出来事に関する公共哲学的考察
2 SDGsに関する公共哲学的考察
3 原発問題の公共哲学的考察
4 コロナ禍と公共哲学
5 高校新科目「公共」「情報」「歴史総合」と公共哲学の連関
〔第二部 共生社会論のリニューアル〕
第4章 共生思想の諸潮流と革新
1 日本における共生思想の展開と花崎皋平の先駆性
2 イヴァン・イリイチとコンヴィヴィアリズム運動
3 優生思想vs共生思想
4 共生科学の必要性と方法:分断された世界を見つめ、それに抗しつつ、より善き公正な共生社会の実現をめざす学問
第5章 共生科学の射程、展開、可能性
1 「教育」の共生科学のために
2 「福祉社会」の共生科学のために
3 「自然環境と科学・技術」の共生科学のために
4 「国際社会」の共生科学のために
5 「スポーツ」の共生科学のために
第6章 共生社会のための「福祉と経済の統合」への道
1 福田徳三の知的遺産:生存権に基づく厚生経済学と社会政策
2 アマルティア・センの知的遺産:ケイパビリティ、正義、公共的理性
3 塩野谷祐一の知的遺産:福祉、正義、卓越、総合社会科学
4 宇沢弘文の知的遺産:社会的共通資本
第7章 宗教的共生を考えるために
1 近代ヨーロッパの宗教的共生思想:その再構成と現代的意義
2 20世紀の宗教的共生思想の展開
3 共生社会への宗教の寄与可能性
〔第三部 教養教育と哲学の再定位〕
第8章 教養教育の歴史・没落と21世紀的刷新
1 18世紀末から19世紀半ばまでの教養教育論
2 19世紀後半から20世紀までの専門知の進展と教養教育の衰退
3 南原繁の教養教育論と吉見俊哉の所論
4 ポスト専門化時代としての21世紀教養教育のヴィジョンと実践
第9章 「より善き公正な共生社会」と人間の実存
1 「より善き公正な共生社会」をめぐる二つの潮流の再考
2 多次元的・生成的「自己─他者─公共世界」理解と共生社会
3 共生社会と「自然的・文化的・歴史的」な実存者としての人間論
補論 「より善き公正な社会」をめざす哲学、公共哲学、共生科学の連動と棲み分け
おわりに:本書を貫くキーコンセプト
注
人名索引