子育て支援の理念と方法 ドイツ法からの視点
価格:6,270円 (消費税:570円)
ISBN978-4-8329-6694-9 C3032
奥付の初版発行年月:2008年04月 / 発売日:2008年04月下旬
わが国で緊急かつ重要な政策課題である,子育て支援政策に焦点をあて,子育て世帯に対する経済的支援策について,拡充していくための方策とそれを支える法理を,先駆的取り組みを行っているドイツ法との比較研究から解説する。
倉田 賀世(クラタ カヨ)
1970年 長野県松本市に生まれる
2003年 北海道大学大学院法学研究科博士課程修了 法学博士
2003〜2006年 日本学術振興会特別研究員(この間2004年から2005年までドイツ・・マックスプランク国際社会法研究所客員研究員)
2006〜
2008年 北海道大学大学院法学研究科助教
現 在 関西外国語大学外国語学部講師
目次
はしがき
凡例
略語一覧
はじめに
第1章 規範的保護の根拠
第1節 規範的保護の形成史
1 ワイマール憲法における家族の保護
(1)憲法委員会 / (2)国民議会 / (3)ワイマール憲法119条の法的意義
2 ボン基本法における婚姻および家族の保護
(1)基本法形成までの経緯 / (2)基本法6条1項をめぐる議論
第2節 家族「機能」
1 家族の「責務」「作用」「機能」
2 家族「機能」理解
(1)社会学における理解 / (2)家族「機能」の経済的な価値 / (3)法学ならびに連邦憲法裁判所における家族「機能」理解
3 家族機能論に基づく帰結
第2章 規範理念の具体化
第1節 「家族」概念の明確化
第2節 基本法6条1項の多元性
1 古典的基本権としての自由権
2 制度保障
3 拘束的価値決定を伴う原則規範(Wertentscheidende Grundsatznorm)
(1)形成過程 / (2)基本法3条1項との関連性 / (3)客観法的次元に基づく3つの作用
第3節 拘束的価値決定規範の具体的内容
1 不利益取り扱いの禁止(Benachteiligungsverbot)
(1)類型 / (2)範囲
2 促進の命令(Forderungsgebot)
(1)不利益取り扱いの禁止との関連性 / (2)範囲
第3章 年金保険制度における子育ての考慮
第1節 社会保険制度での子育ての考慮の位置づけ
第2節 ドイツ公的年金保険制度の概要
第3節 年金保険における子育て支援措置の類型
1 被保険者に保険事故が発生した際の子育ての付加的な考慮
(1)児童加算(Kinderzuschuβe)
2 女性自身の年金権を確立するための子育ての考慮
(1)寡婦(夫)年金(Witwen oder Witwerrente) / (2)養育年金(Erziehungsrente) / (3)育児給付(Kindererziehungsleistung) / (4)考慮期間(Berucksichtigungszeiten)
3 子育ての意義を積極的に評価することを目的としたもの
(1)児童養育期間(Kindererziehungszeiten)
第4節 規範理念に基づく具体的手法の評価・検討
1 被保険者に保険事故が発生した際の子育ての付加的な考慮
(1)児童加算
2 女性自身の年金権を充実させるための子育ての考慮
3 女性の年金受給権確保から子育ての積極的評価への展開
(1)経緯 / (2)1992年連邦憲法裁判所第一法廷判決に基づく規範的評価 / (3)1996年連邦憲法裁判所第一法廷決定に基づく規範的評価
第5節 具体的手法をめぐる問題
1 2001年4月3日介護保険判決の概要
2 介護保険判決の公的年金保険制度への影響
第6節 年金保険制度での公正な子育て支援のあり方
第4章 所得税法上での子育ての考慮
第1節 応能負担原則
第2節 家族課税の歴史的概略
(1)プロイセン / (2)ワイマール共和国 / (3)ナチス期 / (4)第二次世界大戦以降
第3節 応能負担原則に基づく子育ての考慮
第4節 連邦憲法裁判所判決に基づく応能負担原則の実質化
(1)租税法上での最低生活費額の考慮と公的扶助水準との連動 / (2)連邦憲法裁判所判決に基づく最低生活費額のさらなる拡充
第5節 現行法システムへの評価
第5章 わが国への示唆
第1節 本書の概要
第2節 所得税法における「子育て」の考慮
第3節 年金保険法における「子育て」の考慮
第4節 不利益の是正から「子育て」の社会的評価の肯定へ
判例索引
事項索引