絶滅した日本のオオカミ その歴史と生態学
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-8329-6718-2 C3021
奥付の初版発行年月:2009年12月 / 発売日:2009年12月下旬
絶滅に至る過程を,民俗学・生態学や進化論に基づく新たな枠組みと北米との比較を通じて再構成。特に北海道におけるエゾオオカミ絶滅政策とイエローストーンでの絶滅と再導入の歴史的背景を詳細に検討する。
「狼の視点」からという斬新な軸に拠り,野生生物の「歴史」研究に一石を投じた,気鋭の著者による日本環境史研究の力作。
ブレット・ウォーカー(ブレット・ウォーカー)
1967年米国モンタナ州ボーズマン市生まれ。1997年オレゴン大学大学院で博士号(歴史学)を取得。イェール大学歴史学科助教授を経て現在はモンタナ州立大学歴史・哲学科教授。1995〜96年と2000年の2度にわたり北海道大学に留学。専攻分野は近世日本史で,主として近世アイヌ民族史や日本環境史などを研究している。著書には本書のほか,The Conquest of Ainu Lands: Ecology and Culture in Japanese Expansion, 1590-1800, University of California Press, 2001(秋月俊幸訳『蝦夷地の征服——日本の領土拡張にみる生態学と文化』北海道大学出版会,2007 年),Gregory M. Pflugfelder
浜 健二(ハマ ケンジ)
1937年和歌山県生まれ。京都大学農学部卒業。旭化成工業を定年退職後,Conservation International,Wolf Network Japanに所属し各地を旅行するかたわら,自然保護関係の運動に関わる。論文として,「巴日図周辺のオオカミ」『フォレストコール』No.8, Ap‐ril 2001,「氷河期末のできごと——イヌの起源」「柴犬」No.98-100,2008年など。また季刊雑誌International Wolfを2006年より各号翻訳し,抄訳をインターネットで配信。栃木県那須町在住。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
まえがき
序 章
動物の感情世界
歴史における自己・主体・主観性
自然の時間の一瞬の光芒
第一章 科学と日本オオカミ像の形成
日本におけるリンネ以前のオオカミ分類
一九世紀の分類学──日本のリンネ学時代
帝国時代のリンネ分類学
戦後の論争──ヤマイヌの帰還
オオカミと日本犬
む す び
第二章 文化と日本の貴いオオカミ像の形成
日本における自然と動物崇拝の伝統
日本の支配者とオオカミ
オオカミ信仰の聖地
送りオオカミ
綱吉──オオカミ将軍
オオカミ崇拝とアイヌ
北海道犬とオオカミ
アイヌの叙事詩と民話に登場するエゾオオカミ
オオカミ神を送る
む す び
第三章 近世日本における、人と狂犬病に罹った人殺しオオカミとの闘い
古代のオオカミとの遭遇
オオカミを殺す技
近世の賞金制度
狂ったオオカミの報告
一八世紀日本における狂犬病
狂犬病と北海道のイヌ科動物
オオカミ殺しのリズム
む す び
第四章 明治の近代化、科学的農業とエゾオオカミの撲滅
今日のオオカミ
エドウィン・ダンの時代のオオカミ殺し
エドウィン・ダン
新冠牧場
オオカミによる被害
エゾオオカミを滅ぼす
む す び
第五章 オオカミに対する賞金と進歩の生態
進歩の生態
明治時代のアメリカモデルとオオカミ殺し
カラス殺し
日本のオオカミ猟師
日本の進み行く文明
オオカミの自然経済
む す び
第六章 オオカミ絶滅理論と日本の生態学分野の誕生
一 有機体論的伝統と日本の生態学
動物生態学と有機体論的伝統
信仰の山と日本の理想郷
柳田國男(1875〜〜1962年)と日本の生態学
今西錦司(1902〜92年)と動物社会学
生態学と有機的な繋がり
二 日本の生態学の歴史と民族誌学
犬飼哲夫(1897〜1989年)と絶滅の歴史生態学
千葉徳爾(1916〜2001年)とオオカミ絶滅の地理学
む す び
エピローグ
オオカミ絶滅の結果
付表 各支庁におけるオオカミ・クマの捕獲数と賞金支払額
注
訳者あとがき
人名索引
事項索引