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北海道開拓者精神とキリスト教

北海道開拓者精神とキリスト教

A5判 354ページ 上製
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-8329-6733-5 C3016
奥付の初版発行年月:2010年03月 / 発売日:2010年04月中旬
発行:北海道大学出版会  
発売:北海道大学出版会
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内容紹介

明治維新以降,国策により北海道に多数の開拓移住者が入殖した。その際,住み慣れた郷里を離れて全く未知の世界,しかも厳しい気候を持つ北辺の地に身を委ねる決意をすることには大きな精神的なエネルギー,即ち,ある種の「開拓者精神」が必要であったと考えられる。
本書成立の基本的動機は,団体移住者たちの北海道移住の動機や目的,そして苦難を耐え忍び,克服して開拓の実を挙げた人々を支えた精神的基盤がなんであったのか,また,このような精神と実際の開拓実績,コミュニティ形成の成果との関係がどのようなものであったのかという歴史的な関心である。
本書が考察の対象としたのは,なんらかのキリスト教的な意図や動機を持って明治期に北海道に集団移住して未開地の開拓に従事し,現在の自治体の基礎を築いた全ての団体,「赤心社」(明治13年,神戸から現浦河町),「インマヌエル団体」(明治25年,京都,埼玉から現今金町),「聖園農場」(明治25年,高知から現浦臼町),「北光社」(明治31年,高知から現北見市),「北海道同志教育会」(明治31年),新潟,山形から現遠軽町)である。
 本書の主題は,これらの団体の移住動機や移住の経緯,そして移住後のコミュニティ形成のありようを,研究過程で新たに発見,解読した古文書を含めた一次史料の精査と,より正確な史実の再構成に基いて精神史的,宗教社会学的観点から考察,解明することである。

出版部から一言



著者プロフィール

白井 暢明(シライ ノブアキ)

1943年6月19日,室蘭市生まれ
北海道大学大学院文学研究科博士課程中途退学
北海道大学文学部助手,旭川工業高等専門学校教授などを歴任し,名寄市立大学教授,旭川工業高等専門学校名誉教授

著書
『未来を拓く北海道論』(ぎょうせい 1996)など

主論文
「天沼家所蔵文書と今金・インマヌエル団体北海道移住の経緯」『旭川工業高等専門学校研究報文』第43号, 2006.
「今金・インマヌエル移住団体におけるキリスト教的開拓者精神」. 『基督教學(北海道基督学会)』第39号, 2004.
「「北光社」農場・坂本直寛のキリスト教的開拓者精神史におけるその特色と限界」.『旭川工業高等専門学校研究報文』第37号, 2000.
「マックス・ウェーバー「宗教社会学」における“カリスマ”と“非合理性”」『宗教研究』No.212, 1972.など

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 主題設定と方法
 第一節 対象と方法
 第二節 北海道開拓者精神と宗教との一般的関係
 第三節 「開拓者精神」の意味
  一 北海道「開拓」の意味
  二 「開拓者精神」とはなにか
  三 動機としての「開拓者精神」
  四 苦難に耐える精神力としての「開拓者精神」
  五 榎本守恵氏の「開拓精神」との関連と相違点
 第四節 クラーク精神および札幌独立教会(札幌バンド)との関連
 第五節 教派性および上部組織(親教会、ミッション)との関係
 第六節 明治期の政府の北海道開拓・殖民政策との関連
 第七節 史料について――自治体地方史との関連
 
第一章 浦河・赤心社――その成果とピューリタニズム
 はじめに
 第一節 赤心社設立の経緯
  一 設立の経緯,趣旨
   (一) 発端、津田仙『開拓雑誌』 /(二) 創立者 /(三) 「趣意書」、「同盟規則」 
   (四) 会社組織、移住 
  二 赤心社設立の動機と目的
   (一) 政治的動機(愛国主義) /(二) 経済的動機(貧窮士族授産、資本主義的経営への志向) 
   (三) 宗教的動機(キリスト教信仰、理想郷建設) /(四) 宗教の自由 
 第二節 赤心社事業の概要と特色
   一 事業の概要
   二 事業の特色
 第三節 赤心社の成功・存続の要因とキリスト教
   一 政治的・経済的要因
   二 宗教的要因
 第四節 赤心社におけるピューリタン的エートスと資本主義の精神
   一 鈴木清・沢茂吉のピューリタン的エートス
   (一) 「ピューリタン」の定義 /(二) 教派性――プレスビテリアニズムとコングリゲーショナリズム 
   (三) ピューリタン的人物像 /(四) 契約的人間関係 
   二 赤心社内部の対立――心情主義と合理主義
   三 赤心社の合理主義的経営――資本主義の精神
 結  び
 
第二章 今金・インマヌエル移住団体――異教派間の連帯と確執
 はじめに
 第一節 移住開拓の経緯
  一 移住の経緯と集落形成
  二 キリスト教信仰と教会の状況
 第二節 移住の動機
 第三節 信仰上の葛藤と教会分裂
  一 初期の教会分裂
  二 昭和の教会分裂
  三 両派の反発力(対立性)と求心力(親和性)
 第四節 コミュニティ形成と地域発展への貢献
  一 開墾・開拓の実績
  二 コミュニティ形成、地域アイデンティティおよびモラルの醸成
  三 青年会活動
  四 教  育
 結  び
 
第三章 天沼家文書と今金・インマヌエル団体北海道移住の経緯――一次史料の解読による通説の修正・補完の試み
 第一節 問題提起
  一 「通説」の形成
  二 天沼家所蔵の一次史料
 第二節 移住動機
 第三節 移住団体組織の立ち上げ時期とその実態
 第四節 第一回北海道探検・調査旅行
 第五節 第二回北海道探検・調査旅行
  一 利別原野での適地発見と挫折
  二 太櫓の適地発見と貸下げ申請
  三 「檜山外五郡役所大場第一課長より太櫓郡太櫓村外三ケ村戸長中村榮八宛文書」
 第六節 八月帰省の理由、志方之善との出会い、「手続書」、「懇願書」の提出
  一 帰省の理由
  二 志方之善宅訪問
  三 山崎六郎右衛門宅訪問
  四 太櫓適地申請の挫折と「北海道団体移住開懇志願ニ付其準備手続書」
  五 「北海道移住開墾事業企望ニ付懇願書」および「團体成業規約書」の提出と家族移住
 第七節 志方之善宅訪問と犬養毅との開墾契約
 第八節 山崎家移住と集落の形成
 第九節 聖公会グループの団体的特性
 結  び
 補  遺
 解読文一 天沼恒三郎「吾か生立ちの記憶」
 解読文二 檜山外五郡役所大場第一課長より太櫓郡太櫓村外三ケ村戸長
        中島榮八宛文書
 解読文三 北海道團結移住開懇志願ニ付其準備手続書
 解読文四 北海道移住開墾事業企望ニ付懇願書
 解読文五 團体成業規約書
 
第四章 浦臼・聖園農場(高知殖民会)――武市安哉のカリスマ性
 はじめに
 第一節 聖園農場創立の経緯
 第二節 聖園農場創立の動機
  一 土地の狭さに拠る生活困窮からの高知農民の救済
  二 武市安哉の政治への失望と挫折――北光社・坂本直寛との相違
  (一) 武市安哉の政治活動の本質 /(二) 政治的世界との決別   
  三 キリスト教的教育による人間改革の理想
  (一) 武市安哉とキリスト教信仰 / (二) 政治から宗教へ――「自己限定」(献身)としての民衆の救済
 第三節 聖園農場の特色と開拓者精神史的意義
  一 ピューリタン的倫理の浸透と武市安哉の宗教的感化力=カリスマ性
  二 武市安哉の教育への情熱││未完の「開拓労働学校」構想
  三 新天地への展開││真のフロンティア・スピリット
  (一) 聖園からさらなる新天地への飛躍 /(二) 「脱出」のエートス=地縁的共同体原理からの離脱
  四 聖園農場と遠軽・学田農場および北見・北光社との関連
  (一) 遠軽・学田農場創立の経緯 /
  (二) 武市の「開拓労働学校」構想と北海道同志教育会(学田農場)構想および北光社構想との関係
結  び
 
第五章 北見・北光社――坂本直寛の開拓思想との関連を中心に
 はじめに
 第一節 「北光社」設立と北海道移住の経緯
  一 「北光社」設立計画と坂本直寛
  二 「北光社」設立の目的と目標
  三 移住地選定と規約制定
  四 移住とその後の経緯
  五 「北光社」とキリスト教活動
 第二節 坂本直寛の拓殖思想
  一 自由民権運動とキリスト教信仰
  二 坂本直寛の開拓殖民思想(一) 殖民論――「海外移民論」
  三 坂本直寛の開拓殖民思想(二) 自治的コミュニティ論――「北海道の発達」
  四 坂本直寛の開拓殖民思想(三) 北海道文化論――「北海道の農業に就いて」
 第三節 キリスト教的理想郷建設の挫折とその原因
  一 「北光社」の構造的限界――小作主義と身分的二重構造
  二 宗教教育の欠如
  三 坂本直寛の「聖園農場」への移住(戦線離脱)と「北光社」における彼の地位
  四 坂本直寛におけるキリスト教とナショナリズム
  五 坂本直寛における政治と宗教
 
第六章 遠軽・北海道同志教育会(学田農場)――遠軽教会との関係とその特質
 はじめに
 第一節 北海道同志教育会設立の経緯
  一 北海道同志教育会事業の概要
  二 発案者とその時期
  三 動  機
  四 武市安哉の「開拓労働学校」構想の継承としての同志教育会
  五 事業の挫折とその原因
 第二節 遠軽教会設立の経緯と学田事業との関係
  一 学田農場における信仰生活
  二 信太と野口の確執
  三 札幌日本基督教会(北一条教会)における信太寿之告訴問題
  四 北見青年会
  五 遠軽教会設立

結  び

略 年 表   
あとがき   
人名索引  


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