近代北海道とアイヌ民族 狩猟規制と土地問題
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-8329-6744-1 C3021
奥付の初版発行年月:2011年05月 / 発売日:2011年05月中旬
開拓使以降19 30年代に至る諸政策におけるアイヌ民族の位置づけとアイヌ民族への影響・彼らによる対応を,新たな発掘を含む詳細な資料に基づき〈制度と実態〉の視点から精緻に分析。個別的な課題を設定し基礎的事実の確定に力を注ぐことにより,従来のアイヌ史研究の見直しを目指す。
山田 伸一(ヤマダ シンイチ)
<著者紹介>
1968年 秋田市生まれ
1992年 京都大学文学部卒業
1995年 北海道大学大学院文学研究科修士課程(日本史)修了
1996年 北海道開拓記念館に学芸員として勤務し,現在に至る
共編書 『アイヌ民族 近代の記録』草風館,1998年
目次
<目 次>
序 章
第一節 主題と構成
一 主題と先行研究との関係
二 構 成
第二節 史料について
一 公 文 書
二 新聞・雑誌・その他
第一部 明治期の狩猟・漁業規制とアイヌ民族の生業
第一章 「北海道鹿猟規則」の制定過程──毒矢猟の禁止を中心に
はじめに
第一節 狩猟規制法規の制定過程
一 「鳥獣猟規則」施行問題
二 毒矢猟禁止の問題化
三 「胆振日高両州方面鹿猟仮規則」
四 毒矢猟禁止の本庁布達と「北海道鹿猟規則」
第二節 毒矢猟禁止に対するアイヌ民族の対応
一 沙流郡ほか
二 千歳郡・勇払郡
三 三石郡・浦河郡・様似郡
四 十 勝
第三節 毒矢猟の一部容認と全道的な禁止へ
おわりに
第二章 「北海道鹿猟規則」施行後のシカ猟
はじめに
第一節 自律的な狩猟秩序の破壊
第二節 その後の「北海道シカ猟規則」の改正
一 一八七八年の改正
二 規制の強化
第三節 「北海道鹿猟規則」の運用状況
一 アイヌ民族への銃の貸与・払下げ
二 免許鑑札取得者の内訳
第四節 シカの急激な減少
一 雪害の影響をめぐって
二 「密猟」の問題
おわりに
第三章 オオカミ・ヒグマ・カラスに関する「有害鳥獣獲殺手当」
はじめに
第一節 「獲殺手当」の導入
第二節 手当制度の変遷
一 狩猟制度全体のなかの位置
二 ヒグマとオオカミ
三 カ ラ ス
四 イ ヌ
第三節 狩猟数統計の分析
一 全体的な傾向
二 アイヌ民族の狩猟活動との関わり
三 狩猟の季節性と狩猟方法
おわりに──博物学的関心のあり方
第四章 千歳川のサケ漁規制とアイヌ民族
はじめに
第一節 開拓使によるサケ漁規制
一 「テス網」・夜漁の禁止
二 支川でのサケ漁全面禁止
三 勇払・千歳両郡での勧農策の具体化へ
第二節 札幌県の対応
一 札幌県勧業課御用係内村鑑三の復命書
二 内村案具体化の挫折と監守人の設置
第三節 天然孵化から人工孵化へ
一 種川法の導入
二 人工孵化場の設置
おわりに
第二部 「北海道旧土人保護法」による土地下付と共有財産管理
第五章 十勝における土地下付
はじめに
第一節 「旧土人保護法」以前のアイヌ民族の農耕地
一 札幌県の農業教授 =「十勝国五郡旧土人授産方法」
二 「保護地」=「旧土人開墾予定地」の設定
(1)官有地第三種としてのアイヌ民族の農耕地
(2)中川郡における「保護地」=「旧土人開墾予定地」の設定
三 十勝全域の「予定地」設定状況
第二節 「旧土人保護法」による下付の過程
一 中川郡の場合
二 十勝全域の下付状況
第三節 モンベツ新「給与予定地」設定計画
おわりに
第六章 下付地没収規定の適用実態
はじめに
第一節 検査の方法と史料の限界
一 検査の方法と手続き
二 史料の限界
第二節 没収処分の分布状況
一 社会事業行政の反映
二 没収処分の地域分布
(1)概 観
(2)日 高
(3)石 狩
第三節 農耕不能地下付の問題
一 問題の性質
二 水害による流失の場合
三 その後の経過
おわりに
第七章 「旧土人保護法」以前からの所有地に対する所有権制限
はじめに
第一節 条項の背景
第二節 第二条第三項の適用事例
第三節 「保護民」意識の醸成
おわりに
第八章 十勝アイヌの共有財産管理
はじめに
第一節 共有財産管理に関する規定と指定
一 「北海道旧土人保護法」の制定
二 管理に関する法令
三 北海道庁長官管理の共有財産指定
第二節 一九二〇年代のアイヌ「保護」事業との関わり
一 使用目的の変更
二 「土人病院」の計画と頓挫
三 各互助組合への配当
四 他地域への貸与
第三節 一九三〇年代の共有財産管理
一 アイヌ民族のなかから
二 一九三一年の再指定と分割
三 食糧給与資金としての期待
四 そ の 他
おわりに
付 論
Ⅰ アイヌ語地名はどう書き換えられたか
はじめに
第一節 近世の経過と開拓使による郡名の命名
第二節 開拓使による村名の幹事化
第三節 一八九〇年の北海道庁長官内訓
第四節 一九一〇年の北海道庁札幌支庁通牒
第五節 字界地番整理事業
一 背景と概要
二 実 態
おわりに
Ⅱ 「北海道アイヌ協会」と「全道アイヌ青年大会」
はじめに
第一節 一九二〇年代の模索
一 向井山雄の構想(一九二五年)
二 十勝アイヌ旭明社
(1)創立と組織の性格
(2)初期の活動
第二節 「北海道アイヌ協会」の「創立」
一 一九三〇年夏の動き
二 「北海アイヌ協会」への改称問題
三 『蝦夷の光』創刊
第三節 「全道アイヌ青年大会」
一 概 要
(1)開催までの経緯と主催者
(2)名 称
(3)参 加 者
二 日程と議論の内容
(1)日 程
(2)意見発表
(3)協 議
三 陳情書の提出
第四節 そ の 後
一 『蝦夷の光』の中断
二 歴史的な意味
おわりに
結びにかえて
あとがき
索 引
関連書
『近代アイヌ研究の現在と未来』(北海道大学出版会),『近代アイヌ教育制度史研究』(北海道大学図書刊行会),『蝦夷地の征服1590-1890』(北海道大学出版会),『絶滅した日本のオオカミ』(北海道大学出版会。