スラブ・ユーラシア叢書10
日露戦争とサハリン島
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8329-6750-2 C3021
奥付の初版発行年月:2011年10月 / 発売日:2011年10月下旬
サハリン島における「戦場の諸相」の解明と
, 日露の領有関係の変動のなかで翻弄される住民の運命を軸に,新たな事実を掘り起こし広域的・多角的な視点から,従来の研究の欠落部分を埋め全体史の再構築を目指す国際共同研究最新の成果! 本シリーズ4『近代東北アジアの成立』に続き,跨境史に基づいた新しい歴史研究への挑戦。
原 暉之(ハラ テルユキ)
〈編者紹介〉
原 暉 之(はら てるゆき)
1942年生まれ
1966年東京大学文学部西洋史学科卒業,愛知県立大学(1971~87年)・北海道大学スラブ研究センター(1987~2006年)・北海道情報大学(2006~11年)勤務を経て,現在北海道大学名誉教授。ロシア極東近現代史
天野 尚樹(アマノ ナオキ)
所 属―北海道情報大学非常勤講師
専門分野―ロシア極東近現代史・北東アジア国際関係史
神長 英輔(カミナガ エイスケ)
所 属―新潟国際情報大学情報文化学部
専門分野―日露関係史・ロシア極東史
田村 将人(タムラ マサト)
所 属―北海道開拓記念館
専門分野―アイヌ史
越野 剛(コシノ ゴウ)
所 属―北海道大学スラブ研究センター
専門分野―ロシア文学
板橋 政樹(イタハシ マサキ)
所 属―日本ユーラシア協会北海道連合会
専門分野―サハリン近現代史
ヤロスラブ・シュラトフ(Yaroslav Shulatov)(ヤロスラブ シュラトフ)
所 属―日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)
専門分野―ロシア外交史・日露関係史
塩出 浩之(シオデ ヒロユキ)
所 属―琉球大学法文学部
専門分野―日本政治史
沢田 和彦(サワダ カズヒコ)
所 属―埼玉大学教養学部
専門分野―日露関係史
倉田 有佳(クラタ ユカ)
所 属―ロシア極東連邦総合大学非常勤講師
専門分野―ロシア極東史・来日亡命ロシア人問題
三木 理史(ミキ マサフミ)
所 属―奈良大学文学部
専門分野―歴史地理学
白木沢 旭児(シラキサワ アサヒコ)
所 属―北海道大学大学院文学研究科
専門分野―日本近現代経済史
デイヴィッド・ウルフ(Daivd Wolff)(デイヴィッド ウルフ)
所 属―北海道大学スラブ研究センター
専門分野―ロシア近現代史
鶴見 太郎(ツルミ タロウ)
所 属―日本学術振興会特別研究員PD(立教大学)
専門分野―ロシア・ユダヤ史、シオニズム史
目次
目 次
序 章 日露戦争期サハリン島史研究の概観と課題…原 暉 之
一 本書の目的と扱う範囲
二 歴史そのままと歴史離れ ― 研究史の第一期
三 樺太は入っているか ― 研究史の第二期
四 戦場から眺める-研究史の第三期
五 本書の構成
第一部 境界としてのサハリン島
第一章 見捨てられた島での戦争…天野尚樹
― 境界の人間/人間の境界
はじめに
一 流刑地としてのサハリン島
二 見捨てられた島
三 戦場の「政治」
おわりに
第二章 開かれた海の富と流刑植民地…神長英輔
― 日露戦争直前のサハリン島漁業
はじめに
海の富/政治空間と経済空間
一 漁業の概要
ニシン、サケ・マス漁業/タラ・ナマコ・フカヒレ漁業と捕鯨業
二 漁業の規模
日本人漁業の規模/ロシア人漁業の規模/日本の輸入額
三 流刑植民地と漁業
刑務所の食料確保/官設漁場タムラオ/一般の住民と漁業/漁場経営の実態
四 規制の強化
一八九〇年代半ばまで/一八九〇年代後半から/開戦と戦後
おわりに
第三章 先住民の島・サハリン…田村将人
― 樺太アイヌの日露戦争への対処
はじめに
一 北海道から戻った樺太アイヌ
北海道への移住を経験して /ロシア人と樺太アイヌの関係 /和人と樺太アイヌの関係 /『あいぬ物語』と山邊安之助
二 漁場をもった首長たち
五人の漁場主 /成功した首長たち
三 戦場になった居住地
親日的なロシア帝国臣民とみられて /〈棄民〉とされた日本帝国臣民 /サハリン戦への関わり /戦後をにらんだ動き /樺太アイヌ以外の先住民の動き
四 何も決めなかったポーツマス条約
おわりに
第四章 二〇世紀ロシア文学におけるサハリン島…越 野 剛
― チェーホフと流刑制度の記憶
はじめに
一 監獄からユートピアへ ― 一九三〇年代
二 旅から定住へ││戦後
三 チェーホフのサハリン ― 一九六〇年代から現代まで
おわりに
第二部 戦争の帰結と新たな国境の創出
第五章 退去か、それとも残留か…板橋政樹
― 一九〇五年夏、サハリン島民の「選択」
はじめに
一 限定的「送還」方針と大量「送還」論 ― 占領方針と住民の処遇
二 迫りくる飢餓-最初期の軍政の課題
三 「送還」方針の急転 ― 南サハリンの場合
四 詐術としての「課税」― 北サハリンにおける住民の処分
五 「棄民」の地デカストリ ― 「送還」の実施と新たなる苦難の始まり
おわりに
第六章 ポーツマスにおけるサハリン…ヤロスラブ・シュラトフ
― 副次的戦場から講和の中心問題へ
はじめに
一 双方の立場と方針の不一致
二 交渉の開始と展開
三 ルーズベルトの関与とニコライの決断
四 交渉の妥結と残された問題
おわりに 1
第七章 日本領樺太の形成…塩出浩之
― 属領統治と移民社会
はじめに
一 樺太における属領統治制度 ― 帝国日本の移住植民地
樺太の統治方針をめぐる対立 /法制度 /統治機構 /警察と行政
二 日本領樺太の政治・社会状況 ― 漁業制度問題と警察権力
日本領樺太の形成と漁制改革問題 /「樺太長官の横暴及警察力の暴用」 /大泊騒擾事件 /警察とニシン漁取締
おわりに
第八章 日露戦争後ロシア領サハリンの再定義…原 暉 之
― 一九〇五~一九〇九年
はじめに
一 ロシア領に残された北サハリン
現地行政府の機能回復 /日本軍政の遺産 /国境画定と資源調査
二 戦後処理の一環としてのサハリン問題
国内政治化するサハリン問題 /離散島民の居住地選択 /離散島民の損害補償
三 行政再編の一環としてのサハリン問題
財政難のもとでの産業振興 /流刑植民地の遺産 /中央政府と総督と武官知事の三すくみ /サハリン州の成立
おわりに
第三部 地域を越える人物と経済交流
第九章 民族学者ブロニスワフ・ピウスツキとサハリン島…沢田和彦
はじめに
一 サハリン島流刑
二 先住民との出会い
ギリヤーク調査 /南サハリン、そしてウラジオストクへ
三 アイヌ調査
再度サハリンへ /「サハリン島アイヌ統治規定草案」
四 アイヌの支援とアイヌ家族
識字学校 /アイヌ家族
五 日露戦争
戦争の勃発 /サハリン島脱出
おわりに ― サハリンとのつながり
第一〇章 ビリチとサハリン島…倉田有佳
― 元流刑囚漁業家にとっての日露戦争
はじめに
一 流刑地サハリンにて
流刑囚ビリチ /結婚と私生活 /サハリンの金持漁業家
二 サハリン島で迎えた日露戦争
日本の密漁船拿捕 /戦場となったサハリン島 /弘前ロシア人捕虜収容所
三 ビリチの戦後
戦時中の補償請求 /南樺太旧露国漁業者救恤金
おわりに
第一一章 日露戦後の環日本海地域における樺太…三木理史
― 新潟県実業視察団を通じた考察
はじめに││環日本海地域研究と樺太
一 『浦港樺太視察報告』にみる樺太
新潟県と樺太 /新潟と樺太産業
二 「裏日本」化と新潟
「裏日本」論と新潟経済 /派遣の思惑
三 実業視察団にとっての樺太
おわりに ― 環日本海経済圏における樺太
第一二章 北海道・樺太地域経済の展開…白木沢旭児
― 外地性の経済的意義
はじめに
一 一九一〇・二〇年代における北海道・樺太の移出入構造
移出入の推移 /出入金の推移 /樺太の対道府県収支 /小樽・樺太間の移出入商品構成
二 一九三〇年代における樺太の移出入構造
小樽・樺太間の移出入商品構成 /樺太の対道府県収支
おわりに
終 章 サハリン/樺太の一九〇五年、夏…デイヴィッド・ウルフ(鶴見太郎訳)
― ローカルとグローバルの狭間で
あとがき
事項索引
人名索引
付表Ⅰ サハリン島の人口構成と人口動態
付表Ⅱ 南サハリン地名対照表12