北海道大学大学院文学研究科研究叢書23
名付けえぬ風景をめざして
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-8329-6779-3 C3039
奥付の初版発行年月:2013年03月 / 発売日:2013年04月上旬
著者自身のデザイナーとしての経験に基づき、説明しにくい風景の魅力を文化人類学の観点から解明。建築学・造園学、科学技術の文化人類学の先行研究を整理し、デザインの実践課程に着目し分析する、画期的な研究である。
片桐 保昭(カタギリ ヤスアキ)
北海道小樽市に生まれる。北海道大学水産学部、同大学院環境科学研究科修士課程修了後、建設コンサルタントに勤務、のちフリーの立場で造園土木計画設計に従事しつつ大学等で造園学、まちづくり、CGデザインを教える。その後北海道大学文学研究科博士課程修了。北海道大学専門研究員を経て現在(有)片桐仏壇店 アトリエピアノ代表として宗教工芸、寺院ランドスケープの計画設計、グラフィックデザイン業務を行う。研究分野は造園学、科学技術の人類学。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
一 あいまいさ故に魅力的な風景
二 あいまいさの特定に向かって
三 風景と空間
四 風景をいかに対象化するか
五 問題の所在
六 実践としてのランドスケープデザイン
七 手法について――科学技術の人類学の有効性
八 本書の構成
第一章 風景の魅力と文化人類学
一 オープンスペースと文化
二 科学技術への懐疑
三 風景における科学技術と文化
四 空間への抵抗
五 構築される風景
六 秩序を超える配置
七 ま と め
第二章 作られゆく魅力をどう捉えるか
一 空間をめざして
二 自覚されない文化をどう捉えるか
三 技術者の器用仕事
四 独創か抵抗か
五 風景構築の紆余曲折
六 魅力とエージェンシー
七 まとめ――風景の中で揺れ動くイメージ
第三章 ランドスケープデザインにおける実践
一 デザイナーによる科学技術の再考
(一) 住民に向き合う専門家たち
(二) ネットワークの中のデザイナー
二 ランドスケープデザイナーたちの試行錯誤
(一) 日本における専門家システムの成立
(二) ランドスケープデザイン業務の流れ
(三) デザイナーたちの試行錯誤
1 公園の必要性と系統的配置の破綻
2 公園を使うことよりも、実利重視の住民
3 形態のわかりやすさが肥大化するデザイン
三 風景にまぎれ込む魅力
(一) 奉仕者としての専門家
(二) ディズニーランド化と住民にとって正しいデザイン
(三) 科学からはみ出すデザイン実践
四 ま と め
(一) オブジェクトとしての文化
(二) 非オブジェクトとしてのハイスタイル性
(三) 目立たぬものは結果として作られるのか
第四章 サウンドスケープデザインにおける実践
一 音による風景デザインの成り立ち
(一) 音による風景のデザインについて
(二) サウンドスケープデザインの魅力をどう捉えるか
二 サウンドスケープデザイナーによる試行錯誤
(一) 日本のサウンドスケープデザインがめざしたもの
(二) サウンドスケープデザイン業務の流れ
(三) 音のデザイン過程における試行錯誤
1 オトの必要性の破綻
2 利用として対象化できぬオト
3 わかりやすさの拒否
三 風景における非オブジェクトの表現
(一) オトを含めた全体の表現
(二) 住民にとっての正しさの動員
(三) オトへの実践がめざすもの
四 ま と め
(一) 後づけの機能
(二) 配置による魅力の表現
(三) 還元されぬ形態
第五章 全体のまとめ
一 名付けえぬ魅力とデザイン
(一) 文化によらない風景の魅力
(二) 名付けえぬ魅力への行為と過程
(三) 名付けえぬ魅力のとらえ方
二 過程から見る風景
三 名付けえぬ風景をめざして
あとがき
参照文献
関連書
『風土』(和辻哲郎)