現代宗教文化研究叢書4
東チベットの宗教空間 中国共産党の宗教政策と社会変容
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-8329-6810-3 C3014
奥付の初版発行年月:2015年02月 / 発売日:2015年03月中旬
1930年代から現在にいたるまでの東チベット(チベット自治区の隣接地域)の宗教状況を中国共産党の宗教政策から明らかにし,チベット問題解決の糸口を探る。20年以上にわたる現地調査と文献調査に基づいた,他に類を見ない実証研究の成果。
川田 進(カワタ ススム)
1962年 岡山県生まれ
1988年 大阪外国語大学外国語学研究科修士課程修了
現 在 大阪工業大学工学部准教授
研究領域 中国地域研究,表象文化論
著書に『中国のプロパガンダ芸術─毛沢東様式に見る革命の記憶』(共著,岩波書店,2000年),『アジア国際関係論』(現代中国論研究会,2013年),『グローバル化と国際協力』(現代中国論研究会,2014年)など
目次
序 章 問題の所在と研究の視座
一 「チベット問題」と中国地域研究
二 東チベットへの関心
三 ラルン五明仏学院を目指す漢人信徒
四 チベット仏教概説
五 「チベット」「チベット人」「漢人」「華人」
六 政府系文献資料の特徴と限界
七 「テンジン・デレク事件」と漢語資料
八 現地調査の障害と調査拠点の設定
九 調 査 方 法
一〇 本書の構成
一一 本研究の意義
第一章 中国共産党の宗教政策
─毛沢東から胡錦濤まで
一 は じ め に
二 違法宗教と邪教
三 マルクス主義宗教観と党員の宗教信仰問題
四 中国共産党の宗教政策と二つの「中共中央文件」
五 中国政府の宗教管理と公民の信教の自由
六 毛沢東時期の宗教政策とチベット政策
七 鄧小平時期の宗教政策とチベット政策
八 江沢民時期の宗教政策とチベット政策
九 胡錦濤時期の宗教政策とチベット政策
一〇 胡錦濤から習近平へ
第二章 「愛国活仏」ゲダ五世の虚実と軍の宗教政策
一 は じ め に
二 ゲダ五世四十七年の生涯
三 朱徳と紅軍への支援
四 チベット解放政策時期のゲダ五世
五 「勧和団」の挫折と「チベット解放」の概念
六 フォードの回顧録
七 封印された塑像
八 ゲダ六世と統一戦線活動
九 ゲダ五世と統一戦線活動
一〇 結 論
第三章 民主改革・文化大革命時期のデルゲ印経院
一 は じ め に
二 デルゲ土司が開設した印経院
三 甘孜州の民主改革と印経院の閉鎖
四 文化大革命と印経院
五 現 地 調 査(二〇〇三年八月)
六 ヤンリン・ドジェ書記と周恩来総理
七 程徳美「進蔵長征隊」の証言
八 結 論
第四章 文化大革命後のデルゲ印経院と統一戦線活動
一 は じ め に
二 一九八〇年・一九八一年甘孜州の宗教状況
三 宗教復興政策と条例による管理
四 文化大革命後のデルゲ印経院復興政策
五 印経院の管理運営と世界文化遺産
六 ツェワン・ジメ院長訪問(二〇一〇年八月一日)
七 結 論
第五章 ラルン五明仏学院粛正事件
一 は じ め に
二 甘孜州内の仏学院とラルン五明仏学院の名称
三 ラルン五明仏学院の組織・学制・構成
四 ジグメ・プンツォ評伝
五 仏学院事件(二〇〇〇年、二〇〇一年)
六 県政府・公安局の通達
七 ダライ・ラマ十四世との交流
八 事件の真相
九 ジグメ・プンツォの圓寂と遺言
一〇 副学院長テンジン・ジャンツォの苦悩
一一 結 論
第六章 ヤチェン修行地の支配構造と宗教NGO
一 は じ め に
二 ヤチェン修行地の構成とインフラ整備
三 楊洪と慈輝仏教基金会
四 アチュウ・ラマへの謁見と早朝講義
五 アチュウ・ラマのカリスマ的支配
六 師資相承と化身ラマによる相続
七 アチュウ・ラマ圓寂後の支配構造
八 二〇〇一年ヤチェン修行地事件
九 党の宗教政策とヤチェン修行地の役割
一〇 結 論
第七章 漢人・華人信徒の信仰とスピリチュアリティ
一 は じ め に
二 ルポルタージュ『寧瑪的紅輝』
三 ラルン五明仏学院で出会った漢人信徒
四 ケンポ・ソダジを支えた呉玉天
五 ヤチェン修行地の漢人出家者と信徒
六 漢人指導の高僧プーバ・タシ
七 イェシェ・ジャンツォ瞑想道場に集った漢人たち
八 電脳空間の聖地と金銭トラブル
九 華人信徒の霊性探究
一〇 漢人・華人信徒の宗教活動と中国共産党の宗教政策
一一 北京漢人信徒の活動拠点とケンポ・ソダジ
一二 結 論
第八章 ラルン五明仏学院の震災救援と宗教の公益活動
一 は じ め に
二 玉樹の民族と宗教事情
三 青海地震と仏学院の救援活動
四 ソーシャル・キャピタルとしての仏学院
五 胡主席・温総理の玉樹慰問と民族・宗教対策
六 民衆の願いと招かれざる「愛国活仏」
七 国家宗教事務局が主導した震災犠牲者追悼法要
八 宗教の「社会貢献」と「宗教と和諧」政策
九 結 論
第九章 「二〇〇八年チベット騒乱」の構造と東チベットの動向
一 は じ め に
二 「二〇〇八年ラサ騒乱」
三 「ロンギュ・アダック事件」(二〇〇七年)と東チベット
四 「二・二一同仁事件」
五 「同仁事件」から「二〇〇八年東チベット騒乱」へ
六 甘孜州における抗議行動と宗教政策
七 宗教政策を支える公安・部隊・武警
八 二〇〇九年以降の抗議活動
九 結 論
「二〇〇八年チベット騒乱」資料
終 章 宗教政策、宗教ネットワーク、チベット問題
一 東チベットに刺さったトゲ
二 東チベットの宗教空間と宗教政策
三 漢人・華人信徒の新潮流
四 東チベットにおける宗教政策「四原則」
五 東チベットと「チベット問題」
参 考 文 献
あ と が き
図版引用一覧
索 引
関連書
【現代宗教文化研究叢書】
『宗教文化論の地平』(2013、北海道大学出版会)
『宗教集団の社会学』(2014、北海道大学出版会)
『カルト問題と公共性』(2014、北海道大学出版会)