公共政策学の将来 理論と実践の架橋をめざして
価格:5,720円 (消費税:520円)
ISBN978-4-8329-6825-7 C3031
奥付の初版発行年月:2016年04月 / 発売日:2016年04月中旬
主観的感覚としての政策議論から脱して政策を科学するため、多様な公共問題に対応するための公共政策を組織化・体系化することを目指すのが公共政策学である。
本書は、公共政策学と公共政策大学院が目指した「政策現場と学問拠点」「実現力と構想力」の融合を柱に、公共政策学と公共政策大学院の10年が何をなしてきたか、現在どんな状況にあるかを論じ、その将来を展望しようとするものである。
宮 脇 淳(ミヤワキ アツシ)
北海道大学法学研究科教授。1979年日本大学法学部卒業。専門は行政学・公共政策学・行財政論。参議院事務局,株式会社日本総合研究所を経て,1996年から現職。著書に『財政投融資の改革』(東洋経済新報社,1995年),『自治体戦略の思考と財政健全化』(編著,ぎょうせい,2009年),『創造的政策としての地方分権』(岩波書店,2010年),『政策思考基礎講座』(ぎょうせい,2011年),『図説財政のしくみVer.2』(東洋経済新報社,2012年)など。
佐々木隆生(ササキタカオ)
北星学園大学経済学部教授,北海道大学名誉教授。1975年東北大学大学院経済学研究科博士課程中退(博士(経済学))。専門は国際経済理論,国際政治経済学,教育制度など。東北大学経済学部助手,北海道大学経済学部講師,同助教授,同教授を経て,2011年から現職。著書に『国際資本移動の政治経済学』(藤原書店,1994年),『国際公共財の政治経済学』(岩波書店,2010年),『大学入試の終焉』(北海道大学出版会,2012年)など。
石 井 吉 春(イシイヨシハル)
北海道大学公共政策大学院教授・院長。1976年一橋大学商学部卒業。専門は地域経済・地域政策。日本政策投資銀行を経て,2005年から現職。著書に『港湾整備と地域経済の発展』(編著,北海道新聞社,2014年)など。
村 上 裕 一(ムラカミ ユウイチ)
北海道大学公共政策大学院・法学部准教授。2006年東京大学法学部卒業,2012年同大学院法学政治学研究科修了(博士(法学))。専門は行政学。独立行政法人日本学術振興会特別研究員(PD),東京大学特任講師等を経て,2014年から現職。主要業績として,「規制空間の構造変容と官僚制の裁量行使戦略(一~六・完)」(『国家学会雑誌』第126巻第1-2~11-12号,2013年)。
小 林 陽 介(コバヤシ ヨウスケ)
公益財団法人日本証券経済研究所研究員。2008年北海道大学経済学部卒業,2015年北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程修了(博士(経済学))。専門はアメリカ経済論。北海道大学大学院経済学研究科助教を経て,2015年から現職。論文に「アメリカ経済の金融化と企業金融―企業と金融機関との関係に注目して」(経済理論学会編『季刊経済理論』第50巻第4号,2014年)など。
高 野 伸 栄(タカノ シンエイ)
北海道大学大学院公共政策学連携研究部教授・博士(工学)。1983年北海道大学工学部土木工学科卒業。専門は都市地域交通計画,建設マネジメント学。建設省,北海道大学工学部助手,同大学工学研究科助教授を経て,2015年から現職。著書に,『参加型社会の決め方――公共事業における集団意思決定』(編著,近代科学社,2004年),『企業行政のためのAHP事例集』(分担執筆,日科技連出版社,2007年),『未来は土木が作る――これが僕らの土木スタイル』(編著,丸善出版,2015年),『社会基盤マネジメント』(分担執筆,技報堂出版,2015年)など。
武 藤 俊 雄(ムトウトシオ)
北海道大学公共政策大学院専任講師。1993年北海道大学教育学部卒業。専門は高等教育政策,政策評価。北海道大学キャリアセンターを経て,2012年から現職。論文に「大学生の就職支援の展開と課題」(『年報 公共政策学』第8号,北海道大学公共政策大学院,2014年)。
小 磯 修 二(コイソ シュウジ)
北海道大学公共政策大学院特任教授。1972年京都大学法学部卒業。専門は地域開発政策。北海道開発庁(現国土交通省)等勤務ののち,釧路公立大学教授,同地域経済研究センター長,同学長を経て,2012年から現職。著書に,『地域自立の産業政策』(イマジン出版,2007年),『地方が輝くために』(柏艪舎,2013年),『コモンズ 地域の再生と創造』(共著,北海道大学出版会,2014年),『地域とともに生きる建設業』(中西出版,2014年)など。
西 村 淳(ニシムラ ジュン)
北海道大学公共政策大学院教授・公共政策学研究センター長。1986年東京大学法学部卒業,2013年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了(博士(法学))。専門は社会保障法・社会保障論。厚生労働省勤務を経て,2014年から現職。著書に『社会保障の明日』(ぎょうせい,2010年),『所得保障の法的構造』(信山社,2013年),『雇用の変容と公的年金』(編著,東洋経済新報社,2015年)など。
吉 田 文 和(ヨシダ フミカズ)
愛知学院大学経済学部教授,北海道大学名誉教授。1978年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。専門は,環境経済学,産業技術論。北海道大学経済学部講師,同助教授,同教授を経て,2015年より現職。著書に,『ハイテク汚染』(岩波新書,1989年),『環境経済学講義』(岩波書店,2010年),『グリーン・エコノミー――脱原発と温暖化対策の経済学』(中公新書,2011年),『脱原発と再生可能エネルギー――同時代への提言』(北海道大学出版会,2015年)など
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
第1部 総 論
第1章 公共政策の現状と課題 宮 脇 淳
――多面的主観化の克服
1.1 はじめに
1.2 活力構造の変化と政策内容
1.3 政策形成過程の変化
1.4 公共政策の進化
1.5 公共政策の進化と公共政策学
1.6 公共政策の進化と公共政策大学院
――客観的合理性と公共哲学・倫理
1.7 まとめ
第2章 グローバル社会と公共政策 佐々木隆生
――国境の意味と限界を見据えて
2.1 はじめに――課題の開示
2.2 グローバリゼーションをもたらしたもの
2.3 グローバル社会と国際公共財
2.4 グローバル社会と公共政策
2.5 最後に
第2部 政策現場と学問拠点の融合
第3章 地域と公共政策 石井吉春
――人口移動と地域政策
3.1 はじめに
3.2 我が国の地域政策の流れ
3.3 地域政策に対する評価と課題
3.4 近年の人口移動の変化と課題
3.5 今後の地域政策の方向
第4章 政治と公共政策 村上裕一
――科学技術の省庁再編をめぐって
4.1 はじめに
4.2 中央省庁等改革について
4.3 行革会議――特に科技政策に注目して
4.4 科技政策推進体制の変容
4.5 おわりに
第5章 経済と公共政策 小林陽介
――経済・経済学・経済政策の関係から
5.1 はじめに
5.2 経済・経済学・経済政策の関係に関する主流的見方
5.3 主流的見方への挑戦
5.4 おわりに
第6章 工学と公共政策 高野伸栄…
――公共政策分析の工学的アプローチ
6.1 公共政策における工学的アプローチ
6.2 公共施設の使用中止被害と市民の維持管理に関する
意識について
6.3 公共事業における住民参加型入札制度の導入可能性の
実証的分析
6.4 本章のまとめ
第7章 キャリア形成と公共政策 武藤俊雄
――職業キャリア形成の変容と政策
7.1 公共政策学とキャリア形成
7.2 キャリア形成の変化
7.3 職業キャリアの形成にかかる政策
7.4 新規学卒者労働市場の変化
7.5 結 論
第3部 実現力と構想力
第8章 観光と公共政策 小磯修二
――地方における政策研究の現場から
8.1 公共政策研究と地域課題の解決
8.2 観光産業の分析
8.3 地域経済の成長,発展と観光政策
8.4 最後に――大学の役割と公共政策研究
第9章 社会保障と公共政策 西 村 淳
――多元化する地域ケアにおける公的責任
9.1 はじめに
9.2 我が国の地域ケアにおける多元化
9.3 イギリスの地域ケアの歴史と理念
9.4 イギリスの地域ケアの仕組み
9.5 イギリスの地域ケアにおける公的責任
9.6 地域ケアにおける公的責任
第10章 環境と公共政策 吉田文和
――「エネルギーミックス」の決め方の問題
10.1 はじめに
10.2 パリ協定への道:2030年までに40%削減,EUの新目標
――ブリュッセルで開かれたEEB会議の報告
10.3 グローバルな「エネルギー大転換」
10.4 日本の再生可能エネルギーの「受け入れ凍結」「出力抑制」と
原発再稼働を考える
10.5 原発最大復帰を前提とした再生可能エネルギー制度の見直し
10.6 まず原発事故の検証を
10.7 それでも原子力の評価は避けて通れない
――「ベストミックス論」から「ベースロード論」への問題点
10.8 結 論――「エネルギーミックス」:決め方が問題だ
座談会 公共政策大学院の現状と未来
――北海道大学公共政策大学院10周年記念 歴代院長座談会
1 創設までを振り返って
2 「文理融合」をめぐって
3 「理論と実践の架橋」をめぐって
4 「グローカル」をめぐって
5 教育の場としての公共政策大学院
6 研究の場としての公共政策大学院
7 公共政策大学院の未来に向けて
執筆者紹介