ファシズムと聖なるもの/古代的なるもの
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8329-6846-2 C3014
奥付の初版発行年月:2020年04月 / 発売日:2020年04月下旬
ファシズム運動の時代、「聖/古代」が人々を魅了し、人々によって称揚された。それは何故なのか。実態はどうだったのか。――日本と独伊仏ルーマニアを取り上げ、ファシズムを準備した文化・学問・芸術・建築、また戦後に受け継がれたものを視野に入れ、現代に埋め込まれた「ファシズム」を透視する。
平藤 喜久子(ヒラフジ キクコ)
1972年、山形県生れ
國學院大学教授学習院大学大学院人文科学研究科博士課程修了 博士(日本語日本文学)
神話学、宗教学専攻
『神話学と日本の神々』(弘文堂、2004)
『神の文化史事典』(共編著、白水社、2013)
『いきもので読む、日本の神話』(東洋館出版、2019)
『幸せ運ぶ!ニッポン神社めぐり』(NHK出版、2019)
目次
はじめに………平藤喜久子
第1部 日本の自己像・世界像
第1章 ファシズム期の神話学と“青年結社”………平藤喜久子
一 はじめに─ファシズム期における青年という表象
二 ファシズム期神話学と男性結社
三 三品彰英の神話学と男性結社論
四 おわりに
第2章 日本型ファシズムと学問の系譜──宇野圓空とその時代………鈴木正崇
一 前提としてのファシズム
二 宇野圓空の評価と位置づけ
三 宇野圓空と同時代の学者たち
四 「民族的宗教」としての修験道──宇野圓空をめぐって
五 「民族」概念の生成と展開
六 日本型ファシズムと修験道研究──和歌森太郎をめぐって
七 日本精神主義と国民精神文化研究所
八 修験道研究の確立とナショナリズム──堀一郎・五来重・宮家準
第3章 大川周明のスーフィズムへの傾倒………臼杵 陽
一 大川周明の転換点としての「一九一三年夏」
二 大川周明のキリスト教への関心
三 論考「神秘的マホメット教」とマックス・ミュラーの講演録
四 マックス・ミュラーのスーフィズム講義
五 預言者ムハンマドとの「会見」と「始祖中心の宗教」
六 大川周明に見る「神人合一」と「アジアの一如」
七 おわりに──大川周明と井筒俊彦の接点とパレスチナの指導者
第2部 他者による日本像
第4章 ナチス時代の日本学における「神道」と「禅」
──W・グンデルトとその周辺………………ベルンハルト・シャイト
一 はじめに
二 日本学者グンデルトの経歴
三 国家社会主義者としてのグンデルト
四 神道、禅、民族遺産についてのグンデルトの見解
五 おわりに
第5章 日本ファシズムの起源の固有性について
──からごころ………………クラウス・アントーニ(齋藤公太訳)
一 はじめに
二 日本の中国観
三 日本儒教とナショナリズム的思想の展開
四 漢 意(からごころ)──「邪悪な中国的精神」と日本の固有主義
五 国 体──近代日本のユートピア
六 ドイツによる国体イデオロギーへの賞賛と日独のイデオロギー的方法の類似性
七 結 論──アジアへの復帰という日本の困難な道
第6章 ファシズム時代のイタリア語訳『古事記』とその背景
──「日本の聖書」について………シルヴィオ・ヴィータ
一 はじめに
二 訳者マリオ・マレガと『古事記』との出会い
三 マレガ版の『古事記』
四 今後の課題
第3部 ヨーロッパの表象
第7章 ナチス時代の「アッシリア神話」………月本昭男
一 フォン・ゾーデン父子
二 セム語学者フォン・ゾーデン
三 『アッシリア帝国の勃興』(一九三七年)
四 アッシリア帝国の勃興とアーリア民族
五 アッシリア帝国の崩壊の理由
六 イデオロギーとしての文化史
第8章 戦間期ルーマニアの知識人と歴史表象………新免光比呂
一 はじめに
二 ルーマニアの歴史と西欧
三 宗教、民族、ファシズム
四 ルーマニア知識人の歴史的課題と超克への試み
五 むすび
第9章 表象しえぬ「古代」の表象
──ドイツ・プレファシズムおける視覚文化………深澤英隆
一 はじめに
二 視覚文化と宗教
三 ドイツ国民主義と視覚文化
四 ドイツ・プレファシズムと視覚文化
五 ヘルマン・ヘンドリッヒとその作品
六 視覚的敬虔とフェルキッシュ美学
第10章 ナチズム期の〈古代〉表象の形成
──H・ヴィルトの〈アトランティス母権制〉論をめぐって………………久保田 浩
一 問題の所在─ブレーメンのベトヒャー通りから出発して
二 ベトヒャー通りの『アトランティス・ハウス』
三 親衛隊研究協会「祖先の遺産」とヘルマン・ヴィルト
四 〈古代〉表象の想像力
五 〈古代〉表象と近代批判─ナチズム期の「学問」理解との関連で
第11章 ファシズム期の比較神話学………松村一男
一 はじめに
二 ファシスト・イタリア
三 ナチス・ドイツ
四 ドイツ圏の研究
五 フランスでの研究
六 おわりに
おわりに………平藤喜久子
執筆者・訳者紹介