植物地理の自然史 進化のダイナミクスにアプローチする
価格:2,860円 (消費税:260円)
ISBN978-4-8329-8205-5 C3045
奥付の初版発行年月:2012年09月 / 発売日:2012年09月下旬
本書は、研究の最前線を5人の著者がわかりやすく徹底的に語っている。いまもっともホットな話題である植物地理の進化のダイナミクスは、特に若い研究者の卵たちには大きな関心を呼ぶものと期待できる。また、多くの野生植物の愛好家の方々にとっても、今見ている花々のルーツを知るための待望の本である。
植物地理学は、地理上の植物の分布様式からその分布拡大の歴史を考察するものであり、植物学のなかでも分類学とともに最も古典的な学問分野である。
昨今、DNA情報による分子系統学が導入されるとともに、花粉や花化石などによる種分化や集団分化の成立過程が解明されるようになったことで、大きな注目が集まっている。
本書では、これまでの植物地理学に関する研究手法を概観するとともに、DNA情報を駆使した分子系統地理学的アプローチをもとに、日本列島と地球規模の植物地理についての最新の知見を提供する。北海道大学出版会における「生物地理」シリーズ第3弾として、新しい研究法による成書が誕生した。
本書では、少数の著者が各章を構築する重要な理論とそれにもとづく自説について、具体例をあげわかりやすく解説している。
『動物地理の自然史』(2005)、『淡水魚類地理の自然史』(2010)に続く、北海道大学出版会における「生物地理」シリーズ第3弾として、新しい研究法による成書が誕生した。
植田 邦彦(ウエダ クニヒコ)
1952生まれ。
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
現在、金沢大学大学院自然科学研究科教授。
編著書に『植物の自然史』(北海道大学出版会,1994)のほか、『里山の自然を守る』(築地書館,1993)がある。
瀬戸口 浩彰(セトグチ ヒロアキ)
1962年生まれ
1993年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了
現 在 京都大学大学院人間・環境科学研究科教授 博士(理学)
第1章執筆
朝川 毅守(アサカワ タケシ)
1965年生まれ
1988年 千葉大学理学部卒業
現 在 千葉大学大学院理学研究科助教 博士(理学)
第2章執筆
長谷部 光泰(ハセベ ミツヤス)
1963年生まれ
1991年 東京大学大学院理学系研究科博士課程中退
現 在 基礎生物学研究所教授・総合研究大学院大学教授 博士(理学)
第3章執筆
いがり まさし(イガリ マサシ)
1960年生まれ
1983年 関西学院大学文学部美学科中退
現 在 植物写真家・シンガーソングライター
第4章執筆
目次
序章 植物地理学の誕生と現状(植田 邦彦)
1. ウォレスとダーウィン
2. 生物地理学の誕生
3. 植物地理学
4. 植物地理学の現状
第1章 琉球列島における植物の由来と多様性の形成(瀬戸口 浩彰)
1. 日本列島とユーラシア大陸を陸橋でつないだ琉球の島々
2. 琉球列島での種分化・種内分化の時期―陸橋が形成と分断を繰り返した時期と合っているのか?
クサアジサイ属の種分化 /アセビ属の種分化
3. 同一種内における遺伝構造―種内の遺伝構造は,かつての陸橋の形の影響をどのように受けているのか?
ソテツにおける葉緑体とミトコンドリアDNA多型の地理的構造 /スダジイにおける葉緑体とミトコンドリアDNA多型の地理的構造 /複数の植物系統地理から想定される琉球列島の陸橋の形態
4. 島嶼固有の特性―交雑と遺伝子浸透
5. 植物系統地理学の知見をどのように活かすか
第2章 南半球分布型植物の分子系統地理(朝川 毅守)
1. 南半球において隔離分布する植物
2. ゴンドワナ大陸の地史
3. 分子系統に基づく分子系統地理学の手法
4. ゴンドワナ植物の分子系統地理学的研究
ナンキョクブナ属 /シキミモドキ科 /アテロスペルマ科 /フトモモ科 /ヤマモガシ科 /グンネラ属 /バオバブ属 /ナンヨウスギ科
5. まとめと展望
第3章 被子植物の分布形成における拡散と分断(長谷部 光泰)
1. 生物地理学における生物区系
2. 系統樹に基づいた生物地理研究
3. より精確な系統樹を求めて
4. ドクウツギ
ドクウツギ属の分布 /ドクウツギ科の系統 /ドクウツギ属の種間系統
5. 食虫植物の系統
食虫性の進化 /モウセンゴケ属内種間の系統関係 /モウセンゴケ属の生物地理
6. カエデ属の生物地理
第4章 沿海州の気候と植生(いがり まさし)
1. 沿海州の位置と気候
2. 沿海州の植生
3. 目につく西日本との共通種
4. 沿海州に雨や雪が少ないわけ
5. 氷期の日本列島と沿海州
6. ふたつの火山と縄文人
7. 里山はタイムカプセル
8. 変幻自在のオキナグサ
9. カワラノギクの故郷
後書きにかえて(植田 邦彦)
3冊の本
分類地理学との出会い
系統地理学的研究
「日本海要素」の研究
植物地理学研究における標本の重要性
索 引
関連書
『動物地理の自然史』(北海道大学出版会、2005)
『淡水魚類地理の自然史』(北海道大学出版会、2010)
関連リンク
『植物の自然史』(北海道大学出版会、1994)
『雑草の自然史』(北海道大学出版会、1997)
『高山植物の自然史』(北海道大学出版会、2000)
『森の自然史』(北海道大学出版会、2000)
『栽培植物の自然史』(北海道大学出版会、2001)
『野生イネの自然史』(北海道大学出版会、2003)
『動物地理の自然史』(北海道大学出版会、2005)
『攪乱と遷移の自然史』(北海道大学出版会、2008)
『淡水魚類地理の自然史』(北海道大学出版会、2010)
『麦の自然史』(北海道大学出版会、2010)