内容紹介
「空間」は生活空間や都市空間、演劇空間や言説空間など多様であり、外部空間だけでなく、内部空間もある。二次元の絵画にさえ空間が想定され、空間認知は、知の成り立ちの根源でもある。「形」も、見えるものにはすべて形があり、言葉で表現できるとは限らないだけでなく、「形」の把握には、視覚はもとより触覚の働きも必要である。「空間」や「形」は、現象と理念とを繋いでもいる。本書は、空間認知や形の把握を通して、「私」の成り立ちを解明し、さらには従来の主知主義的な人間像の枠を超えようとする、意欲的かつ斬新な試みである。
目次
序に代えて 無限の空間
第1部 認知を介した空間と私
一、視覚芸術と視覚障害
二、形と空間の知覚ーモリヌー問題と倒立網膜像問題
三、カントの空間論・序説ー身体・開闢・感情
四、「無限」の形象化と心の襞ー構想力の可能性について
第2部 空間を介して生きる私
五、生きられる空間、もしくは世間という体
六、「暮らし」の社会空間
七、ムラ境の空間と民俗
八、メディア空間と地域イメージの表象
九、時空間と笑いについての断章
十、透けていく空間の重層性と〈仮想境界面〉の「張力」
第3部 芸術を介して内面化される空間
十一、十七世紀オランダ風俗画にみる「妻の鑑」
十二、宗教建築の空間ースクロヴェーニ礼拝堂を例として
十三、文学的空間と巡礼の旅-宮沢賢治「雁の童子」と和辻哲郎『古寺巡礼』を中心にー
十四、浮世絵に形象化された江戸という空間の魅力
十五、物語映画における「私」の位置
十六、絵画の始まりと終わり、そして顔の出現と消滅
についてーイコンからマレーヴィチへー