タンザニア北部，メル山地域の農民は，斜面に点在するさまざまな場所を結んでヒトとモノを行き来させてきた。本書は，詳細な臨地調査に基づくボトムアップの地域システム論によって，そうした場所のネットワークが人々の生活を支え，彼らの活動によって変化し，またそれぞれの場所で経済自由化への多様な対処戦略を生み出してきたことを明らかにする。そして，地域システムの実態を踏まえ，灌漑水・家畜・森林をめぐる世帯間の共同性にも留意することによって，個別の世帯や村に焦点を絞って貧困削減策を考えがちな農村開発論に対して新たな視点を提供する。