台湾女性文学の黎明 描かれる対象から語る主体へ 1945-1949
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-86283-325-9 C3098
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月中旬
日本統治期に萌芽した台湾新文学において、専ら描かれる対象であった台湾の女性たちは、戦前戦後にかけ台湾の体制が大きく転換するなかで、いかに自らを自覚的に語るようになっていったのか。
豊田 周子(トヨダ ノリコ)
1978年生まれ。名城大学外国語学部准教授。大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。専門は台湾文学・中国語圏の近現代文学。主な論文に、「光復後初期台湾女性文芸の発見─『台湾新生報』「台湾婦女週刊」欄掲載詩の意味」『野草』100号記念号、2018)、「日本的馬華文学研究─以日本現代中国文学研究為視角」『台大東亜文化研究』第3期、2016)、「『台湾民間文学集』故事篇にみる1930年代台湾新知識人の文化創造」『日本台湾学会報』第13号、2011)など。翻訳に『白蟻の夢魔』(共訳、人文書院、2011)、葉石濤著「赤い靴」(『植民地文化研究』第8号、2009)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はしがき
凡例
第Ⅰ部 描かれる「台湾女性」──日本統治期台湾新文学のテーマとして
第一章 張我軍の新詩「乱都之恋」から中国語白話小説「白太太的哀史」まで
──台湾新文学と婦女問題
一 台湾新文学と婦女問題
二 張我軍略歴──一九二〇年代までの足跡
三 二〇年代の「恋愛」「結婚」「婦人問題」をめぐる議論
四 新詩「乱都之恋」について
五 中国語白話小説「白太太的哀史」について
六 漢民族に普遍的なテーマを扱った作品として
第二章 王昶雄「鏡」試論
──決戦時期台湾における自己探求の物語
一 小説「鏡」発見の経緯
二 王昶雄略歴
三 小説「鏡」について
四 問題の所在
五 主人公たちの心理変遷
六 王作品に通底するアイデンティティ
七 小説タイトルが意味するもの
第Ⅱ部 失われた「台湾女性」──戦後初期の文化再建のなかで
第三章 『胡志明』から『アジヤの孤児』へ
──改編の意味を戦後の文脈から考える
一 『胡志明』の文学史的位置
二 呉濁流略歴
三 小説『胡志明』とその版本について
四 先行研究
五 改編の意味──戦後日台双方の文脈から考える
六 二つのテクストの異同
七 日本人読者の反応
八 改編の意義と失われたもの
第四章 楊逵の作品改訂にみる戦後初期台湾の文化再建
一 日本時代の作品改訂と楊逵の方法
二 楊逵略歴
三 先行研究
四 テクスト改訂について
五 大陸との文化的連帯を目指して
第五章 呉濁流「ポツダム科長」にみえる創られた台湾人「新女性」
一 戦後初期の台湾文学と「台湾新女性」の虚像
二 小説「ポツダム科長」について
三 先行研究
四 戦後初期の文学作品に描かれた台湾女性
五 「ポツダム科長」に描かれた「台湾新女性」
六 外省人男性がみた台湾人女性
七 「ポツダム科長」の女性形象とその限界
第Ⅲ部 あらわれた「台湾女性」──戦後島外からおし寄せた力のもとに
第六章 『台湾新生報』「台湾婦女週刊」に掲載された新詩の意味
一 文学史における女性作家の不在(一九四五─四九)
二 先行研究
三 『新生報』「婦女」について
四 「婦女」に掲載された新詩
五 他紙掲載の新詩にみる台湾女性
六 女性形象の比較検討
七 戦後台湾女性文学の習作として
第七章 陳蕙貞『漂浪の小羊』に描かれた女性たち
一 「内地」生まれの台湾少女による台湾文学
二 陳蕙貞略歴
三 『漂浪の小羊』について
四 先行研究
五 『漂浪の小羊』の女性像──母娘の形象と主体性の描かれ方
六 作品が内包する可能性
初出一覧
参考文献
あとがき